現代語私訳『福翁百話』
現代語私訳『福翁百話』 第三十九章 「人生における遺伝の影響を観察すべきです」 子どもに対して教育をするには、まず第一に、子どもの体質や健康状態を観察して、はたして学業を十分に行うことができるか見定めた後に、はじめて学問を始めさせるべきです。…
現代語私訳『福翁百話』 第三十八章 「子どもの教育費にけちであること」 人間の社会の習慣というものは簡単には消滅しないものです。 昔、日本がまだ封建社会だった時代には、教育といえばただ武士階級の人々だけに一般的には限られていました。 また、武士…
現代語私訳『福翁百話』 第三十七章 「やむをえない場合は子どもを人に託す」 子どもに対する教育は、父親と母親の両親の責任であり、その責任を逃れるべきではありません。 責任を全うするための方法としては、まずは家の雰囲気を良くすることが根本で、智…
現代語私訳『福翁百話』 第三十六章 「日本の男尊女卑の弊害は主に外面的なものです」 日本の女性には権利や権力がないと言われます。 この言葉はたしかにそのとおりです。 男性と女性が家に一緒にいる場合、女性は、ある部分においては、本当に卑屈な態度を…
現代語私訳『福翁百話』 第三十五章 「女性の教育と権利について」 女性の教育は言うまでもなくおろそかにしてはなりません。 学問の理解がなれば、ご飯を炊くこともできないはずです。 ましてや、それ以上に難しい、裁縫や料理、病気の人の看護介護、子ども…
現代語私訳『福翁百話』 第三十四章 「中途半端な半信半疑のままでいてはいけません」 同じ医学という名称なので、中国伝来の東洋医学の医者も、西洋医学の医者も、同じく医者であるように一見見えますが、実際の治療に関しては、古来の東洋医学の医者に対し…
現代語私訳『福翁百話』 第三十三章 「実学の必要」 勢いよく変化していくこの社会の現実を観察すると、学者・知識人の生活は必ずしも安楽なものではなく、そんなに学問などしていない人の中に、かえって大いに財産をつくり成功する人がいるだけでなく、学問…
現代語私訳『福翁百話』 第三十二章 「人間には学問・科学への理解や考えが必要です」 文明は学問や科学の発達と歩みを共にしています。 学問によって発見された真理や原則を、人間の社会において応用することが、ますます広い領域となり、ますます緻密にな…
現代語私訳『福翁百話』 第三十一章 「身体の健康な発育こそが大切です」 父親や母親が子どもを養い育てることは、そもそも自然に備わっている親の真心であり、また親の義務です。 では、養育に際しての心がけはどうすべきでしょうか。 まず第一に、子どもが…
現代語私訳『福翁百話』 第三十章 「世話という言葉の意味を間違ってはいけません」 自分の人生において、すでに独立して自分の力で生活するようになった場合は、たとえ親子の間であってもむやみやたらとお互いに干渉すべきではありません。 ましてや、他人…
現代語私訳『福翁百話』 第二十九章 「成人になったならば独立すべきです」 「父母の恩は山よりも高く海よりも深し」「死ぬまで親の恩は忘れてはいけません」ということはもちろんのことではありますが、もうすでに適切な教育を受けて成人の年齢に達したなら…
現代語私訳『福翁百話』 第二十八章 「必要な分の衣食住が満たされても、人間の欲求はもっと大きくなるものです」 もし、人生の目的は働いて衣食住の生活をきちんと満たしていくことだと言うならば、必要な分の衣食住が満たされれば人生の目的は達成されるよ…
現代語私訳『福翁百話』 第二十七章 「子どもは家の財産に依存してはいけません」 「額に汗を流して働き稼いで、自分で生活する」ということは、私たちがどんな時も瞬時も忘れずにいるべきモットーであり、たとえどのような身分の人であっても、仮にこの世界…
現代語私訳『福翁百話』 第二十六章 「子どもに対して多くを求めてはいけません」 子どもとして、親孝行すべきことのはもちろん言うまでもないことです。 母親の胎内から生れ出たその時から、父親と母親は心身を尽くして養育に努力してくれ、あらゆる子ども…
現代語私訳『福翁百話』 第二十五章 「日本の輝きを妨げる一点の曇り」 明治維新で新しくなった日本は文明国として、あらゆることを西洋から学んでいます。 政治・法律・文学・軍事はもちろん、経済や工業の分野から社会のありかたや人間のコミュニケーショ…
現代語私訳『福翁百話』 第二十四章 「夫婦はお互いに敬意を」 夫婦が一緒の家で暮していて、お互いに親しみや愛情を持つことは当然のことです。 さらにもうひとつ、なかなか他人がアドヴァイスしても届かないことではあるのですが、親しみや愛情だけでなく…
現代語私訳『福翁百話』 第二十三章 「苦しいことも楽しいことも」 家族だんらんはこの上なく楽しい幸せです。 しかし、そもそもこの人間の世界の物事はすべて、交換の法則によってつくられており、どんなにささいな物事であっても、与えることなくして受け…
現代語私訳『福翁百話』 第二十二章 「家族仲良く」 夫婦が仲良く一心同体で、思うことは率直に話し合い、お互いに相手のことばにはきちんと耳を傾ける。 ただお互いに話して耳を傾けるだけでなく、きちんとお互いの目を見つめ合って、目をみればすぐにお互…
福翁百話の二十一章を訳してみた。 この箇所は、今日では抵抗感を持つ人もいるかもしれない。 しかし、福沢の主眼は、優生思想というよりは、明治の頃まだ根強かった、家柄による差別を科学的な観点から払拭することにあったように思われる。 現代語私訳『福…
『福翁百話』の第二十章を訳してみた。 要するに、ここの章は自由恋愛を批判しているわけで、離婚を否定することに主眼があるわけではないことは注意して読むべきと思う。 他の著作で、福沢は主に男性の不品行について随分厳しく批判している。 自由恋愛の名…
現代語私訳『福翁百話』 第十九章 「たった一つの言葉、たった一つの行為も、おろそかにすべきではありません」 「大海の一滴」「九牛の一毛」という言葉があります。 世間の人が一般的に使う場合は、一滴の水は大きな海を増やしも減らしもしない、九頭の牛…
現代語私訳『福翁百話』 第十八章 「人間は社会において義務があります」 人里離れた山奥に逃れて一人だけで生活する仙人にでもなれば別ですが、仮にも人間として同じ人間の中に混じって生活して社会の中で衣食住を他の人間と一緒にしていく以上は、自分ひと…
現代語私訳『福翁百話』 第十七章 「天地万物と格闘する」 人間の人生などはちっぽけなもので、広大な宇宙から見ればウジムシと似たようなものだという話を先に述べました。 このことは、他人のことではなくて、自分自身がウジムシのようなもので、他のウジ…
現代語私訳『福翁百話』 第十六章 「無宗教に見える日本の上流階級や知識人も宗教に惑わされることは避けられません」 ある人は、このように評論しています。 日本の上流社会は士族階級出身か、そうでなければ他の階級が士族化した者であり、その精神が宗教…
現代語私訳『福翁百話』 第十五章 「不思議な話や怪談は必ずしもとがめる必要はありません」 びくびくした心には幽霊が見えると言います。 少年少女が遊び半分で順番に怪談を語りあえば、その場にあるものが皆妖怪のように見えてきて、窓に当る風の音も幽霊…
現代語私訳『福翁百話』 第十四章 「最高の道徳的理想を想像して、そこに到達しようと努力すること」 人間の想像力は限りないものであり、それに対して実際に人間が実行できる範囲はとても小さなものです。 駕籠に乗って山道を行くのは大変な忍耐が必要なの…
現代語私訳『福翁百話』 第十三章 「何事も軽く見てこそ活発に生きれる」 人間がこの世を生きていく上で心がけるべきことは、何はさておき、この世を軽く見てあんまり熱心過ぎないようにするということにあります。 このように言いますと、この世界の人間の…
現代語私訳『福翁百話』 第十二章 「人助けは相手のためではありません」 街中で困っている人を見て、その人を助けたり、その人にお金を恵んであげたりすることは、自分の一時的に起こった情けやあわれみの心を静めるための手段です。 さらに一歩進んでその…
現代語私訳『福翁百話』 第十一章 「善い心は美しいものを愛する感情から始まる」 人間の心は、醜いことを嫌だと思い、美しいものを愛するものです。 冬の枯れた野原は何となくさびしいもので、春の桜が満開の頃は心も浮き立つものです。 秋の夕暮れに雁が飛…
現代語私訳『福翁百話』 第十章 「人間の心ははてしなく広く大きい」 人間の人生は、まことにみすぼらしくみじめなことはウジムシと同じようなもので、宇宙からすれば、朝の露が蒸発するほどの短い間の五十年か七十年ぐらいの間を、遊戯や冗談のように過ごし…