現代語私訳『福翁百話』
福翁百話 現代語訳 目次 http://d.hatena.ne.jp/elkoravolo/20110918/1316313208
福沢諭吉の『福翁百話』を一日一話ずつブログにアップするようにして、ついに百日間一日も欠かさず、今日完成させることができた。 多くの方が読んでくださり、コメントをくださったおかげだと思う。 あらためて感謝。 この百日の間は、忙しい日もあれば、個…
現代語私訳『福翁百話』 第百章 「人間の物事に絶対的に素晴らしいということはありません」 今のこの世界の人類は、世界の歴史が始まってからまだ年齢が若いようなものです。 文明という道のりの初歩であり、だんだんと前進している最中の存在ですので、そ…
現代語私訳『福翁百話』 第九十九章 「人間における名誉の権利」 自由は不自由の中にあると言います。 一般的に、人間には自らの主人となり自由に生きる権利があります。 王や貴族、大金持ちや名家から、そんなに裕福でもなく地位も高くない庶民の男性や女性…
現代語私訳『福翁百話』 第九十八章 「大人の人見知りについて」 滔々と流れていくこの世の中では、人の心が人によって異なることは顔がそれぞれ異なっているのと同じようなものです。 善悪などという簡単な区別だけでなく、優雅さと卑俗さ、清らかさと濁り…
現代語私訳『福翁百話』 第九十七章 「しゃちほこ立ちは芸ではありません」 若者たちが集まって酒を飲み、酔っぱらって遠慮する相手もいなくなると、それぞれに得意の芸を披露し、その座の余興として楽しむ時に、お互いに自分の芸を誇らしげに披露して、義太…
現代語私訳『福翁百話』 第九十六章 「歴史についての議論」 世の中では何が正しいか間違っているかという議論がやかましいものですが、そもそも何を目的として正しく、何を目的として間違っているか、その目的とするところを根本的に明らかにしないと、何千…
現代語私訳『福翁百話』 第九十五章 「自分で理解し自分で省みるべきこと」 文明の完全な姿は何百年何千年何万の後に期待すべきことで今現在は見ることができないものです。 今現在の人間の出来事はただ文明の進歩の中の一節であり、そもそも絶対的な良いも…
現代語私訳『福翁百話』 第九十四章 「政体についての議論」 一国の政府は、国民の公心を代表するものです。 国民の公心を代表させるのに、君主一人による場合もあります。 野蛮や半開の段階の独裁国家がそれです。 あるいは、君主制をとりながら憲法を定め…
現代語私訳『福翁百話』 第九十三章 「政府は国民の公心を代表するものです」 人間の中には「公心」(公平な心)と「私心」(私的な利害による心)があります。 たとえば、昔の人の言葉に「自分がして欲しくないことを人にしてはいけません。」(「己の欲せ…
現代語私訳『福翁百話』 第九十二章 「お金以外に名誉ということがあります」 人間が欲しいと思うものが、この世においては宝とされます。 病気がなく健康であることや長生きすることはもちろん宝であり、経済的に豊かであることや高い地位であることや安ら…
現代語私訳『福翁百話』 第九十一章 「人間における出来事は難しいものだと覚悟すべきです」 人間の社会における物事は、すべて交互に交換するという原則に基づいており、苦痛や快楽や労働や安逸は相互に関係しあっていることが決まっています。 毎朝早く起…
現代語私訳『福翁百話』 第九十章 「偏執狂ということについて」 ひとつのことに異常に執着すること、つまり偏執狂のことを、英語ではモノマニア(monomania)と言います。 マノマニアの人は、普通の人と精神は全く異なったところはなく、物事の大小や軽重を…
現代語私訳『福翁百話』 第八十九章 「古いものの実際の姿」 古い物や古い陶磁器、古い書や古い絵画、骨董品などなど、これらを宝として大事にするのはとても良いことです。 歳月が経つのとともに、だんだんとそうした品々は消滅し散逸して減っていってしま…
現代語私訳『福翁百話』 第八十八章 「昔の人が必ずしも卓越しているわけではありません」 六十、七十歳以上のお年寄りは身体が丈夫で、起きるのも生活するのも何の不自由もない人が多いので、世の中の人は、昔の人は特別なもので、とても今の人は及ばないな…
現代語私訳『福翁百話』 第八十七章 「田舎の人が必ずしも正直な特徴を持つというわけではありません」 田舎の人は実直で正直で子どものように純真で愛すべき存在であるとは、世の中の人が常に言うことです。 実際にも、そのような様子を見ることができます。…
現代語私訳『福翁百話』 第八十六章 「今の時代は世紀末や終末の時代ではありません」 終末の時代の世界だと今を言い、世も末だなどと言うのは、数千年も昔から今に至るまで、世の中の人がいつも口にすることです。 今も昔もその口調は同じであり、毎年毎年…
現代語私訳『福翁百話』 第八十五章 「種族としての人類の改良」 人間の世界の道理でしょうか、感情でしょうか、何千年何万年の間、先祖代々の遺伝の中に存在し、それぞれの人の骨身に徹している習慣は、その利害がどうであるかにかかわらず、簡単には変える…
現代語私訳『福翁百話』 第八十四章 「改革すべきものはたくさんあります」 物質的な事柄に関する改革について、ある学者はこんな説を説いています。 「今までの世界中の家屋を観察すると、二階や三階の家においては、台所は必ず一番下の階に設けてあります…
現代語私訳『福翁百話』 第八十三章 「物質的世界の進歩や改善について」 進歩や改良は人生の目的です。 人生は、ただ前に進むのみです。 しかし、実際には、精神的な事柄は変えることが難しいものです。 一方、物質的な事柄は、改革しやすいものです。 知識…
現代語私訳『福翁百話』 第八十二章 「身体と精神の関係」 人の寿命には限りがあります。 その寿命を全うさせるものは、ただ摂生という一つの方法があるだけです。 医学は確かなことを教えてくれますが、現代の医学というものは専ら物質的なことにおける科学…
現代語私訳『福翁百話』 第八十章 「医者の言うことにはきちんと従うべきです」 家庭生活や自分の身を守るために最も大事なことは、人間の身体についてのきちんとした学問的な理解と考えを持つことです。 病気にかかっても治療の一通りの筋道は理解しておい…
現代語私訳『福翁百話』 第七十九章 「学問の知識がないことの不幸について」 最近、ある友人の話にこんなものがありました。 ある大金持ちの夫人で、年齢もまださほど年でもない女性が、ある病気にかかって亡くなったそうです。 その病気の様子を聞くと、急…
現代語私訳『福翁百話』 第七十八章 「健康に関する科学の大切さ」 「自分を省みて自分自身を知りなさい」ということは、人間の身体に対する健康科学・生理学の第一のモットーです。 さまざまな学問分野は、その範囲や効用は異なっておりますが、人として自…
現代語私訳『福翁百話』 第七十六章 「国民の資産は国家の財産です」 世の中の投資家や実業家は、財産を蓄えることに熱心で止まることを知らずにいます。 では、何のためにそれほどお金を集めるのかと尋ねるならば、答えに窮するようなありさまです。 冷淡に…
現代語私訳『福翁百話』 第七十二章 「教育の善い影響や利益は子孫にまで及びます」 穀物の農業を良くしていくために最も重要なことは、種を選んで養い増やすことに努力することです。 まず良い種を蒔いて丁寧に養い増やせば、前の年の種よりもさらに良い種…
現代語私訳『福翁百話』 第七十一章 「教育の力はただ人が持って生まれた素質を発達させるだけです」 人間の能力には、持って生まれた才能や遺伝による限界があって、決してその限界以上には出ることができません。 牛や馬の良し悪しは、二、三歳の時にすで…
現代語私訳『福翁百話』 第七十章 「高尚な道理は身近なところに存在しています」 人の心を高尚なところまで進歩させて、ともかく単なる肉体的な欲望以上のところに心が向かうようにすることは、文明社会のためにとても大切なことです。 若者に対する教育も…
現代語私訳『福翁百話』 第六十九章 「人の心が変わる機会について」 心機一転、突然悟るということは、仏教者などがいつも説いていることです。 極悪非道の大盗賊が、ある法話を床の下で漏れ聴いて、突然仏教を求める心を起こしたというようなことも、格別…