2021-01-01から1年間の記事一覧

色川大吉さんの訃報を聞いて

色川大吉さんの訃報を報道で知った。高校や大学の頃、色川さんの書いた歴史の本が好きでよく読んだ。民衆史、と言えばいいのだろうか、司馬遼太郎のような英雄の活躍ではなく、明治や昭和の時代の名もなき草莽の人々を描いた歴史は、とても胸を打たれ、多く…

終戦ドラマ『しかたなかったと言うてはいかんのです』を見て

終戦ドラマ『しかたなかったと言うてはいかんのです』を見た。五輪の関係か、民放では本当に戦争の歴史を語り継ぐ番組が今年は少なかったというか、ほとんど見かけなかったが気がするが、NHKはこうしたドラマや他にもいくつか特集をきちんとつくってくれてい…

戦没者の遺骨の追悼について

先日、録画していたTBSの「報道特集」を見た。戦没者の遺骨についての特集だった。 先の大戦で、海外で死亡した日本人は240万人だが、そのうち112人万人の遺骨は未だに収集されずそのままになっていること、そのうち30万人分が海中にそのままになっていると…

アヴェスタを読んでの感想

野田恵剛『アヴェスタ 原典完訳』(国書刊行会)を読み終わった。昨年刊行された日本初の原典からのアヴェスタの全訳で、なにせ640頁ぐらいあるので、なかなか読むのは大変だった。訳者はさぞかし大変だったと思う。アヴェスタは言うまでもなく、ゾロアスタ…

ETV「心の時代」今井紀明「怒りを超えて優しさを」を見て

ETV「心の時代」の、今井紀明さんという方の「怒りを超えて優しさを」の回を、この前録画していたので見た。 https://www.nhk.jp/p/ts/X83KJR6973/episode/te/119PN5Y1W8/ 今井さんは2004年にイラクで人質となった過去を持つ。 そういえば、当時高校生の人が…

東京五輪の音楽担当者の過去の言動についての雑感

東京五輪の開会式の音楽制作に小山田圭吾という人が参加していたそうだが、その人の過去のいじめについて、最近問題になっていた。 さほど関心がなかったし、その人についてよく知らなかったので、そこまでひどいものとは思っていたなかったら、ネット上にそ…

中村薫さんについて

真宗大谷派のお坊さんで、中村薫さんという方がいて、随分前に一度だけ御話を聞いたことがあった。たしか、鳥栖の九州龍谷短大で特別公開講演か何かがあって、そこで聞いたと思う。 だいぶ前に買っていたその方の『いのちの根源』(法蔵館)という本を、ふと…

前田利貴という人の遺書について

昨夜、『世紀の遺書』をひさしぶりに少し読んでいたら、前田利貴という方の遺書があった。 陸軍大尉で、31歳で戦犯として処刑されたそうである。名前から、ひょっとして前田家の係累だろうかと思い調べてみたらやはりそのようで、加賀前田家の分家の男爵家の…

ゼンダウエスタって誰?と思いきや

堀秀彦編『格言の花束』(現代教養文庫)という本があり、古今東西のさまざまな格言を集めてある。 その中に、「ゼンダウエスタ」という人の言葉として、 「神はよき思想のうちに、真実の言葉のうちに誠実なる行為のうちにあらわれる。そしてみずからの息吹…

どろさん「日蓮上人書『念仏無間地獄抄』を破釈する 」

どろさんが昔書いていた文章を転載する。たぶん、全集にも載っていないと思う。 【目次】1.はじめに2.【日蓮上人『念仏無間抄』のこと】3.【念仏は釈迦の正法である法華経を誹謗し、こわす教えですか】4.【念仏は釈迦を捨てて他人である阿弥陀仏にす…

千住真理子さんの演奏を聴いて

今日は、千住真理子さんのコンサートがアクロス福岡であったので聞きに行ってきた。 千住さんの演奏は、十二年前に聞いたことがあり、その時も感動したけれど、今日もとても素晴らしかった。 曲目は、 J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ …

てれふく「“生きる”ことを教わった〜ホームレス支援の若者たち〜」を見て

昨日、てれふくであっていた「“生きる”ことを教わった〜ホームレス支援の若者たち〜」を見た。 www.nhk.jp 北九州でホームレス支援を長年行っている奥田知志牧師の抱樸館と、その職員の若いスタッフの特集だった。 顔の見える関係や絆をつくることの大切さや…

こころの時代「水俣いのちの海のただなかで」を見て

録画していたETVのこころの時代「水俣いのちの海のただなかで」を見た。 緒方正人さんと緒方正実さんの御話で、家族の水俣病による苦しみや死や、御本人の苦悩や体験を通じた御話をされていた。 実は私は、2013年に緒方正人さんの、2017年に緒方正実さんの講…

BSドキュ「ゴルバチョフ 老政治家の“遺言”」を見て

録画していたBSドキュメンタリーの「ゴルバチョフ 老政治家の“遺言”」という番組を見た。去年の制作の番組で、90歳になるゴルバチョフのインタビュー番組だった。 「大切なのは命であり、命をどう扱い、扱われるかということだ。」 というメッセージには、感…

八幡愚童訓乙本 不浄事

不浄事。 右、御詫宣に、吾れ神道と現れて、深く不浄を差別するゆえは吾れ不浄の者と、旡道の者を見ば、吾心倦みて相をみざるなり。我人五辛肉食せず、女の汗穢各三日七日、死穢は三十三日、生穢は二七日なりとぞありし。香椎の宮には、聖母の月水の御時、い…

八幡愚童訓乙本 正直事

正直事。 右、大菩薩、已に八正道より権迹をたれたまえば、群類の謟曲を除かんと思しめすゆえに、御詫宣に、神吾れ正道を崇め行わんと思うは、国家安寧のゆえなりとある。誠にも非法を旨とし、正道を捨つる時は、その国必滅亡する事なれば、邪をすて正に帰よ…

八幡愚童訓乙本 受戒御事

受戒御事。 右滅罪生善のはかりごと、正法久住の徳、出家受戒による故、たとひ宝塔を起て、忉利天に至るも、また出家・受戒の功徳に劣り、戒はこれ旡上菩薩の本と。もし大利を求まば、まさに戒を堅持すべしといへり。このゆえに、大菩薩も御許山の石体の坤に…

「鉄丸を食すといへども、 心穢なき人の物を受けず。 銅焰に坐すといへども、 心濁りたる人のところに到らず。」  

「鉄丸を食すといへども、 心穢なき人の物を受けず。 銅焰に坐すといへども、 心濁りたる人のところに到らず。」 という言葉が、八幡大菩薩の託宣にあったとして、中世でよく軸などに書いて尊重されていたそうである。 なかなか潔くて良い言葉である。 「三…

八幡愚童訓 乙本

「八幡愚童訓乙本」 (原文カタカナをひらがなにしている。八幡大井と書いてあるのは、「八幡大菩薩」と読む。) 八幡愚童訓上並序 夫人界に来る事は。六趣の中勝れたり。神国に生るゝ事は。四州の間に越たり。天修鬼畜の苦楽を感じたらましかば。仏法値遇の…

「八幡愚童訓乙本 名号御事」

「南無八幡大菩薩」という名号は、中世には盛んに唱えられたものの、神仏分離以後はあまり言われなくなったようである。 『八幡愚童訓乙本』の中に、「名号御事」として「南無八幡大菩薩」と唱える功徳について説明した箇所があり、タイピングしてみた。 中…

枝野幸男氏『枝野ビジョン』を読んで

枝野幸男著『枝野ビジョン』を読んだ。 www.amazon.co.jp 自己責任を強調してきた新自由主義の流れを変えて、安心できる支え合いや助け合いの仕組みを政治や行政が率先して築いていくべきである、という主張自体は、私も基本的には賛成だし、異論はない。が…

「「本来の保守」という言葉遊びについて」

枝野幸男氏の『枝野ビジョン』を読んでいて、疑問に思われたことの一つは、保守とリベラルの言葉遊びに走っていることである。 おそらく、日本におけるマジョリティが保守を好むという想定のもと、自分こそ保守なのだというマッピングをして、彼らの支持をと…

「枝野幸男著『枝野ビジョン』1章への批判 歴史観と宗教の問題について」

枝野幸男氏が最近刊行した『枝野ビジョン』(文春新書、2021年)を読んで、政策には違和感がなく共感するところも多いものの、第一章の宗教と歴史についての箇所がなんとも疑問に思わざるを得なかった。 中には、一章は枝葉末節であり、しかも歴史学者が書く…

枝野幸男著『枝野ビジョン』の浅薄な宗教観に失望

今日、枝野幸男著『枝野ビジョン』を購入し、甚だ失望せざるを得なかった。 政策面ではさほど違和感はないのだけれど、「日本社会の本質は多神教」などと帯にも書き、多神教=寛容という浅薄な宗教観が披瀝されているのに驚き呆れ果てた。 宗教についてはむ…

八幡宇佐宮託宣集を読んでいてのメモ書き

八幡宇佐宮御託宣集を読んでいたら、八幡の三つの宮を法体・俗体・女体とし、それぞれ断悪修善・正直憲法・大慈大悲の徳を現すと記してあった。中世の神仏習合の頃の、仏教の影響が濃い解釈なんだろうけれど、中世の日本人はそんな風に考えて、そういう意味…

ETV 「エリザベス この世界に愛を」

今日(4月17日)の夜11時から、ETV「エリザベス この世界に愛を」の再放送があるそうである。 「エリザベス この世界に愛を」 - ETV特集 - NHK 以前の放送の時に見たが、とても考えさせられる番組だった。多くの人に見て欲しい。 在留資格がない外国人が帰国…

パトナーヤク『ラーマーヤナ』を読んで

パトナーヤク『インド神話物語 ラーマーヤナ』(原書房)を読み終わった。 とても面白かった。 ラーマーヤナはマハーバーラタと並び称されるインドの古典文学で、名前だけは知っていたけれど、本当に面白い物語だと今回読んでいて思った。 また、物語の合間…

パトナーヤク『マハーバーラタ』を読んで

パトナーヤク『インド神話物語 マハーバーラタ』を読み終わった。 膨大な叙事詩を簡潔に二巻本に再話したものであり、とても読みやすかった。 読んでいて感じたのは、おそらく古今東西の古典文学の中で、最も面白く深いということである。 話の筋は、パーダ…

ドラマ 「フォーガットン・アーミー」

ドラマ『フォーガットン・アーミー』を見終わった。インド国民軍を描いた作品で、シンガポール陥落あたりから話が始まる。イギリスと日本の間で、当時のインド人の一般兵士たちはさぞかし大変だったろうなぁと見ながら思われた。第二次大戦中、二百五十万人の…

フランスの小さな村についてのニュース

第二次世界大戦中に、ナチスの迫害からかくまってくれたフランスの小さな村に、そのおかげで生き残ったユダヤ人の男性が二億五千万円の遺産を贈ったという。 マイケル・モーパーゴの小説になりそうな、胸打たれる話である。 そのル・シャンボン・スル・リニ…