現代語私訳『福翁百話』

現代語私訳『福翁百話』 第六十八章 「経済的に豊かな人の心の置きどころについて」

現代語私訳『福翁百話』 第六十八章 「経済的に豊かな人の心の置きどころについて」 人生においてコツコツと努力して独立の生活を営むことは、とても素晴らしいことです。 すでに自分の身と家庭の独立を成し遂げ、さらにその上に努力して子孫のために財産を…

現代語私訳『福翁百話』 第六十七章 「人間には三つの種類・等級があります」

現代語私訳『福翁百話』 第六十七章 「人間には三つの種類・等級があります」 人間の賢さや愚かさ、強さや弱さは人によって様々であり、最も賢い人と最も愚かな人とを、また最も強い人と最も弱い人とを比較するならば、同じ人間とは思えないほど違いがありま…

現代語私訳『福翁百話』 第六十六章 「金持ちが長く続くことについて」

現代語私訳『福翁百話』 第六十六章 「金持ちが長く続くことについて」 世の中の大金持ちと呼ばれる人は、新たに会社や家を興した人、あるいは父母や先祖の遺したビジネスを受け継ぎ、さらに大きくして発展させた人です。 今、ひそかにこうした人々の心の中…

現代語私訳『福翁百話』 第六十五章 「金持ちがいてビジネスをすることは国にとって必要です」

現代語私訳『福翁百話』 第六十五章 「金持ちがいてビジネスをすることは国にとって必要です」 私有財産が何に役に立つのかと質問する人がいれば、衣食住の生活を安らかにして精神や身体の喜びを得させるためだと答えることでしょう。 はたしてそうであるな…

現代語私訳『福翁百話』 第六十四章 「言論はなお自由でないものもあります」

現代語私訳『福翁百話』 第六十四章 「言論はなお自由でないものもあります」 言論の自由と文明の進歩とが両方必ず伴うという事実は、今の時代の人も身近に経験していることです。 三、四十年前においては、知識人や論客がもし主張したら、すぐに世間を大変…

現代語私訳『福翁百話』 第六十三章 「空想は現実の行為のもとです」

現代語私訳『福翁百話』 第六十三章 「空想は現実の行為のもとです」 心の中で思うことは口に出して言うべきではありません。 口で言うことは、必ずしも実際に行うことができるわけではありません。 学者や知識人が深夜にひとりで寂しい灯りの下に座り、心を…

現代語私訳『福翁百話』 第六十二章 「国家はひたすら前進するべきです」

現代語私訳『福翁百話』 第六十二章 「国家はひたすら前進するべきです」 文明がどれだけ進歩しているかの程度を計ろうとする時、その基準とするべきものは多くありますが、その中でも言論の自由の程度は、ちょうど学問や文化の進歩あるいは退歩の度合いを表…

北尾吉孝 「何のために働くのか」 読了

何のために働くのか作者: 北尾吉孝出版社/メーカー: 致知出版社発売日: 2007/03/12メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 107回この商品を含むブログ (70件) を見る 良い本だった。 真っ向から、仕事に対して、天命ということについて、語られている。 アマゾ…

現代語私訳『福翁百話』 第六十章 「賢さや強さの程度の違いは愛情が起こるもとです」

現代語私訳『福翁百話』 第六十章 「賢さや強さの程度の違いは愛情が起こるもとです」 同じ極同士は反発し合い、違う極同士は引き合うというのは電気学の法則です。 プラス極とプラス極、あるいはマイナス極とマイナス極が近づけば反発し合います。 それと反…

現代語私訳『福翁百話』 第五十九章 「あんまり裏の裏まで観察することは人付き合いの仕方ではありません」

現代語私訳『福翁百話』 第五十九章 「あんまり裏の裏まで観察することは人付き合いの仕方ではありません」 「水が清すぎると魚は住むことができない」と言います。 魚のためには、あまりにも汚れた水は本来は全然良くないものですが、かといってあまりにも…

現代語私訳『福翁百話』 第五十八章 「人との付き合いもまたそのつど少しずつ行うべきです」

現代語私訳『福翁百話』 第五十八章 「人との付き合いもまたそのつど少しずつ行うべきです」 人とのコミュニケーションの仕方は本当にさまざまな方法がありますが、簡単に要約するならば、文章でやりとりすること、直接面会すること、かしこまらずにリラック…

現代語私訳『福翁百話』 第五十七章 「細心の注意を払って慎み深く生きるべきです」

現代語私訳『福翁百話』 第五十七章 「細心の注意を払って慎み深く生きるべきです」 「立派な徳のある大きな人物は、一見したところ愚かに見えるぐらい大らかなものだ」と東洋では昔から言われます。 そのように言えば、何だかもっともらしく聞こえて、英雄…

現代語私訳『福翁百話』 第五十六章 「智恵はそのつど少しずつ発揮すべきです」

現代語私訳『福翁百話』 第五十六章 「智恵はそのつど少しずつ発揮すべきです」 「智恵は小出しにすべし」(智恵はそのつど少しずつ発揮すべきである)とは、昔の時代の人の名言です。 大きく立派な智恵を一度に現して一度に世界を驚嘆させようとするよりも…

現代語私訳『福翁百話』 第五十五章 「人の善い面を見ることと悪い面を見ることについて」

現代語私訳『福翁百話』 第五十五章 「人の善い面を見ることと悪い面を見ることについて」 人間は人生において神々や幽霊ではないので、他人の心の中の微妙な動きを知る方法はありません。 そうであるにもかかわらず、社会には正しい人と不正な人とが混じっ…

現代語私訳『福翁百話』 第五十四章 「善いことばや善い行為の実践について」

現代語私訳『福翁百話』 第五十四章 「善いことばや善い行為の実践について」 世の中のいわゆる道徳家が「善いことばや善い行為」などと呼んで、昔の時代のことばや行為の事例を集めて、本に書いたり講演で説いたりして、そのことによって人々や子どもたちに…

現代語私訳『福翁百話』 第五十三章 「熱い心は胸の奥深くに秘めるべきです」

現代語私訳『福翁百話』 第五十三章 「熱い心は胸の奥深くに秘めるべきです」 最近、機械の力を利用する工夫が次々に進歩し、水力、風力、蒸気の力がようやく過ぎ去って、まさに電力の時代に移ろうとしているといったようなことは、本当にただ驚くほかないこ…

現代語私訳『福翁百話』 第五十二章 「独立は自分の心の中にあります」

現代語私訳『福翁百話』 第五十二章 「独立は自分の心の中にあります」 独立とは、まず他人の世話になることから離れ、すべてのあらゆることを自分自身で引き受けて自分の力で生活し、親子の関係であってもお互いの責任の境界線を明確にすることです。 そし…

【目次】 現代語私訳『福翁百話』 全百章

『福翁百話』 全百章 完訳 (なんとか出版できないかと思い、いくつかの出版社に相談してみましたが、難しいとの返事でした。 もしこのページを見た出版社の方、あるいは出版社に御知り合いの方がおられましたら、どうか出版を検討していただけないでしょう…

現代語私訳『福翁百話』 第五十一章 「生きていくうえでの勇気」

現代語私訳『福翁百話』 第五十一章 「生きていくうえでの勇気」 何も見えない人が千人万人、理性もなく感情ばかりで生きており、そうした人たちばかりのこの世の中にいて、自分自身の生き方を求め、さらに進んで社会全体の進歩を目指し工夫するためには、熱…

現代語私訳『福翁百話』 第五十章 「人間の運不運について」

現代語私訳『福翁百話』 第五十章 「人間の運不運について」 精神論を主張する人々の言葉を聞くと、人間の地位の高低や貧富の差は智恵や道徳の反射として決まるもので、もし智恵を磨き道徳を修めれば成功や出世は必ずできると言います。 また、そうした人々…

現代語私訳『福翁百話』 第四十九章 「ビジネスには信用が必要です」

現代語私訳『福翁百話』 第四十九章 「ビジネスには信用が必要です」 人間は何事もとかく間違うことの多いものです。 そのような人間のつくっている社会においては、過ち、もの忘れ、杜撰、横着などなどが、意識・無意識の両方において人と人との間をくい違…

現代語私訳『福翁百話』 第四十八章 「人間のものごとは裏側を忘れるべきではありません」

現代語私訳『福翁百話』 第四十八章 「人間のものごとは裏側を忘れるべきではありません」 「たとえ地の果て山の奥、どんな苦労も厭いません」とは、男女の恋で理性を失った様子を表現した民謡の歌詞であり、言葉はあんまり品があるものではありませんが、政…

現代語私訳『福翁百話』 第四十七章 「女性の愛情について」

現代語私訳『福翁百話』 第四十七章 「女性の愛情について」 西洋の学説の中に、女性の身体は生殖のための器官を中心にしており、他の心身の部分も生殖のためにあるというような説があります。 この説は、女性の心身は愛情という一点のみに集中するべきだと…

現代語私訳『福翁百話』 第四十六章 「早い結婚は必ずしも悪いわけではありません」

現代語私訳『福翁百話』 第四十六章 「早い結婚は必ずしも悪いわけではありません」 最近の西洋の流行の学説にかぶれて、男女が早く結婚するのは良くないと主張している人がいます。 その説によれば、年齢がまだ若いのに結婚すれば、早く子どもを産んで生計…

現代語私訳『福翁百話』 第四十五章 「人間の欲望は止めることができません」

現代語私訳『福翁百話』 第四十五章 「人間の欲望は止めることができません」 人間の心が不完全であることは、人間の身体が不完全であるのと同じことです。 本来であれば、人間の身体には病気はないはずです。 生れたら母親の母乳に養われて、成長してから食…

現代語私訳『福翁百話』 第四十四章 「女性の再婚について」

現代語私訳『福翁百話』 第四十四章 「女性の再婚について」 この世の中を軽く見て、人間のあらゆる出来事を一時の遊びやゲームのようなものとみなす。 しかも、その遊戯を本気で努力し、怠らず、ただ怠らないだけでなく本当に熱心に努力の極みにまで達す。 …

現代語私訳『福翁百話』 第四十三章 「慈善には二種類の区別があります」

現代語私訳『福翁百話』 第四十三章 「慈善には二種類の区別があります」 他の人の病気の苦しみや貧困の苦しみ、あるいは突然の災難を憐れんで、たとえば病気の人には薬を与えたり貧しい人には食べ物を与えたり、洪水や火事や飢饉などの被災者にはお金や物を…

現代語私訳『福翁百話』 第四十二章 「慈善は他の人の不幸を救うことだけが目標です」

現代語私訳『福翁百話』 第四十二章 「慈善は他の人の不幸を救うことだけが目標です」 天の定めることは人間にとって道理があるかないか、それは問題です。 人間の社会の不幸はその人の生き方の責任だけで決まるものではありません。 早く両親を亡くしたみな…

現代語私訳『福翁百話』 第四十一章 「独立する方法」

現代語私訳『福翁百話』 第四十一章 「独立する方法」 人には、自分を信じ自分を重んじる心(自信自重の心)がなくてはなりません。 自分にはこれぐらいの智恵や道徳が備わっており、世の中に恥じるような非は何もない、だから自分の身は尊いものである、と…

現代語私訳『福翁百話』 第四十章 「子どもの品格を高く育てるべきです」

現代語私訳『福翁百話』 第四十章 「子どもの品格を高く育てるべきです」 家の雰囲気を良くして、子どもの良い性質を育むことはもちろん大切です。 しかし、この社会の風習やありかたは一般的にあんまり良いものではないので、子どもを養育する時は交際する…