2010-11-11から1日間の記事一覧

大平数子 詩集 抜粋

大平数子 詩集 抜粋 (『少年のひろしま』より) 「あい」 逝ったひとはかえってこれないから 逝ったひとは叫ぶことが出来ないから 逝ったひとはなげくすべがないから 生きのこったひとはどうすればいい 生きのこったひとは何がわかればいい 生きのこったひ…

盤珪禅師 「うすひき歌」

盤珪禅師「うすひき歌」 不生不滅のこの心なれば 地水火風はかりの宿 生まれ来たりしいにしえ問えば 何も思わぬこの心 来たる如くに心を持てば じきにこの身が生如来(いきにょらい) よきもあしきも思いしことは おのがこの身のある故ぞ 冬の頃しも喜ぶたき…

横山安武 「時弊十条」

横山安武「時弊十条」 方今一新の期、四方著目のとき、府藩とも、朝廷の大綱に依遵し、各々新たに徳政を敷くべきに、あにはからんや旧幕の悪弊、暗に新政に遷り、昨日非としせしもの、今日却って是となるに至る。 細かにその目を挙げて言わんに、 第一、 輔…

大正天皇 御製

大正天皇 御製 「吹く風に あを葉の木陰 つゆちりて 夏山きよく 雨晴れにけり」 「月かげに さばしる鮎の かげ見えて 夏の夜川ぞ すずしかりける」 「秋風に 窓うつ雨の さびしさも わが身にしみて 冬近づきぬ」 「薄氷 むすびにけらし 池水に うかぶ木の葉…

孝明天皇 御製

孝明天皇 御製 「戈(ほこ)とりて 守れ宮人 九重の みはしの桜 風そよぐなり」 「国民の やすきをいのる 神垣に かけてぞなびく 雪のしらゆふ」 「うば玉の 夜すがら冬の さむきにも つれておもふは 国民のこと」 「異船(ことふね)の おさまることを さら…

山本五十六 「述志」

山本五十六 「述志」 二通 「一死君国に報ずるは素より武人の本懐のみ、 豈戦場と銃後とを問はんや。 勇戦奮闘戦場の華と散らんは易し、 誰か至誠一貫俗論を排し斃れて已むの難きを知らむ。 高遠なる哉君恩、悠久なるかな皇国。 思はざるべからず君国百年の…

槇村浩『間島パルチザンの歌』

槇村浩『間島パルチザンの歌』 思いではおれを故郷ヘ運ぶ 白頭の嶺を越え、落葉松(からまつ)の林を越え 蘆(あし)の根の黒く凍る沼のかなた 赫(あか)ちゃけた地肌に黝(くろ)ずんだ小屋の続くところ 高麗雉子(こうらいきじ)が谷に鳴く咸鏡(かんきょ…

平民社 「社会主義の歌」「社会主義の檄」

「社会主義の歌」 富の鎖を解き棄てて、自由の国に入るは今、 正しき、清き、美しき、友よ手を取り立つは今。 山をもい抜く大力に、天地もどよむ声あげて、 歌へや博き愛の歌、進めや直き人の道。 迷信深く地に入りて、拓くに難き茨道、 毒言辛く襲ふとも、…

秋山清 詩集 抜粋

秋山清 詩集 抜粋 「白い春」 アッツの酷寒は 私らの想像のむこうにある。 アッツの悪天候は 私らの想像のさらにむこうにある。 ツンドラに みじかい春がきて 草が萠え ヒメエゾコザクラの花がさき その五弁の白に見入って 妻と子や 故郷の思いを 君はひそめ…

今野大力 詩集 抜粋

今野大力 詩集 抜粋「私の母」 そこにこうかつな野郎がいる そこにあいつの縄工場がある 縄工場で私の母は働いていた 私の母はその工場で 十三年 漆黒(くろう)い髪を真白にし 真赤な血潮を枯らしちまった 私の母はそれでも子供を生んだ 私達の兄弟は肉付が…

今村恒夫 詩集 抜粋

今村恒夫 詩集 抜粋 「工場のあいつ」 あいつは民衆とともに行き あいつは民衆の中に戦っている 民衆とともに喜び 民衆とともに怒り 不満を並べ 反逆し 随所に 随時に あいつは民衆を離れていない あいつは民衆の杖であり 民衆の親である 満身に満ち溢れた情…

土屋竹雨 「原爆行」

土屋竹雨 「原爆行」 怪光一綫下蒼旻 怪光 一綫(いっせん) 蒼旻より下り、 忽然地震天日昏 忽然 地震ひ 天日昏(くら)し。 一刹那間陵谷變 一刹那の間 陵谷変じ、 城市臺榭歸灰燼 城市 臺榭(たいしゃ)灰燼(かいじん)に帰す。 此日死者三十萬 此の日 …

山崎弁栄 歌集 抜粋

山崎弁栄 歌集 抜粋 「断えなくば 海水(わだつみ)さえも くみつくす なにごとかそも ならざらめやは」(不断光) 「野にさける 花さへ弥陀(おや)の子を思ふ 心づくしの 色にやあらん」 「浪ごとに みな我顔に立ちほこる 一つの海の水と知らねば」 「はか…

石川三四郎 「大乗無政府観」

石川三四郎「大乗無政府観」 (昭和9年) ヒットラーが大統領に確認された。こしらえごとにもせよ、恐怖の結果にもせよ、とにかく、大多数の投票を獲得した。彼はいよいよ完全に独裁官になった。イタリアのムッソリーニと同様に。 だがしかし、ヒットラーも…

石川三四郎 「無政府主義宣言」

石川三四郎 「無政府主義宣言」 一、 我ら無政府主義者は今日の日本と日本民族とを救うべき道はただ無政府主義の原理を実行するにあることを宣言する。 そもそも無政府社会は平等なる万民の自由協調によって成立する。 ゆえに無政府社会の建設にはまず強権を…

安藤昌益 「万万心」の章

「統道真伝」禽獣巻・二 万万人は全く一穀精神の凝見にして、面貌全く同一ならず。 何が故にか。是れ五行自り(ひとり)然る(する)進退なり。 自り然る故に、五行は全く同一なり。進退する故に五行の自り然るにして全く同一ならず。 眼・耳・鼻・口・舌、…

雲井龍雄 「集議院の障壁に題す」

雲井龍雄 「集議院の障壁に題す」 天門之窄窄於甕 天門の窄(せま)きは甕よりも窄し 不容射鈎一管仲 容れず 射鈎の一管仲 蹭蹬無恙旧麟騏 蹭蹬 恙(つつが)なく 旧麟騏 生還江湖真一夢 生きて 江湖に還る まことに一夢 自笑豪気猶未摧 自笑 豪気 なおいま…

雲井龍雄 「辞世」

雲井龍雄 「辞世」 死不畏死 死して死を畏(おそ)れず 生不偸生 生きて生を偸(ぬす)まず 男兒大節 男児の大節は 光與日爭 光(かがやき)日と爭(あらそ)う 道之苟直 道 之(これ)苟(いやし)くも直(なお)くんば 不憚鼎烹 鼎烹(ていほう)を憚(は…