雲井龍雄 「集議院の障壁に題す」

雲井龍雄 「集議院の障壁に題す」

  
天門之窄窄於甕 天門の窄(せま)きは甕よりも窄し
不容射鈎一管仲 容れず 射鈎の一管仲
蹭蹬無恙旧麟騏 蹭蹬 恙(つつが)なく 旧麟騏
生還江湖真一夢 生きて 江湖に還る まことに一夢
自笑豪気猶未摧 自笑 豪気 なおいまだ摧けず
毎経一艱艱倍来 一艱を経るごとに 一倍して来る
睥睨蜻蜓州首尾 睥睨す 蜻蜓州の首尾
将向何処議我才 まさに 何処に向ってか わが才を試みん
溝壑平生決此志 溝壑(こうがく) 平生 この志を決す
道窮命乖何足異 道窮まり 命乖くも 何ぞ異しむに足りんや
唯須痛飲酔自寛 ただすべからく痛飲 酔うて自らを寛うすべし 
埋骨之山到処翠 骨を埋むるの山は いたる処(ところ)翠(みどり)なり


薩長藩閥政府の心の狭さは、びんや甕の口よりも狭い。
中国古代の斉の名君・桓公は、かつての敵の管仲を許し自分の部下として重く用いたが、薩長の政府はかつての敵・奥羽列藩同盟であった自分を、決して許容することはない。

だが、私の歩みはこれぐらいでは何ともない、
私はかつて麒麟のように天下を駆けめぐったのだから。

生きて再びこの娑婆に帰ってこれた、そのこと自体が本当に夢のようなことだ。

自分でも笑えてくる、私の豪気がいまだなお、決して挫けずにいることが。

一つの艱難が来るたびに、また一段と気概も増してくる。

日本のこれからを睥睨し、どこで自分の才気を試そうかと思っている。

志士である以上、私も、溝や谷や、いかなる場に骸をさらすことも、日ごろから覚悟している。

道が行き詰って運命がそむくとしても、べつにどうということはない。

ただ、思いっきり酒を飲んで、酔っ払って自分の心を広々と解き放とう。

私が骨を埋める山は、どこであろうとも、一面の緑なのだから。」