雲井龍雄

明治三年 十二月二十六日 「雲井党に対する判決」名簿

明治三年、雲井龍雄とその一党が、政府転覆を企てたということで逮捕され、十二月二十六日には判決が出された。 二日後の二十八日に、雲井龍雄は処刑されている。 今日、高島真さんの詳細な研究により、この事件は全くの無実の冤罪事件で、雲井たちにはなん…

雲井龍雄 「透谷寓居即事」

雲井龍雄は集議院を去った後、いまの有楽町のあたりにあった、透谷(すきや)の「稲屋」という水亭を好んで、よくそこで過ごしていたという。 その時の詩だが、良い詩だと思う。 雲井龍雄 「透谷寓居即事」 其の一 撲面紅塵豈浼予 面を撲(う)つの紅塵 豈(…

雲井龍雄の「俚謡」と「俗謡」

雲井龍雄の「俚謡」と「俗謡」をタイピングしてみた。 これは、折々に雲井がつくった、おそらくは当時の三味線などにあわせて歌ったもので、漢詩と比べてかなりくだけた感じがする。 これらを見ていると、意外とくだけた、しゃれた面もあった人だったのかも…

雲井龍雄 「源頼政論」(源三位与兵論)

雲井龍雄の「源頼政論」(源三位与兵論)をタイピングしてみた。 これは、おそらく、非常に早い時期に、たぶん雲井が十代の頃に書いた文章ではないかと思われる。 しかし、のちの雲井の生き方をそのまんま予見するようなテーマであり、内容でもある。 源頼政…

雲井龍雄追悼の詩 山吉盛義 「祭文」

今日は雲井龍雄の命日なので、山吉盛義という人が書いた、雲井龍雄の追悼の詩「祭文」をタイピングしてみた。 この山吉という人は、米沢藩出身の人なので、雲井とは同郷のよしみがあったのだろう。 どういう人なのか、情報がないのでよくわからないが、ネッ…

雲井龍雄 「述懐示佐藤某」(述懐 佐藤某に示す)

雲井龍雄の「述懐示佐藤某」(述懐 佐藤某に示す)をタイピングしてみた。訳しながら、まるで今の日本に対して言われているような言葉だという気がした。「和の一字」、日本国民はよくよくあらためて胸に刻むべきことなのかもしれない。 雲井龍雄 「述懐示佐…

雲井龍雄 「述懐」(慷慨…)

もう一つ、雲井詩をタイピングしてみた。 雲井には、いくつか「述懐」と題する詩があるが、この詩も良いと思う。 雲井龍雄 「述懐」(慷慨…) 慷慨如山見死軽 慷慨 山の如く 死を見るは軽(かろ)し 男児生世貴成名 男児 世に生れて 名を成すを貴ぶ 時平空瘞…

雲井龍雄 「遣悶」 

ひさしぶりに、雲井龍雄の詩をタイピングしてみた。 やっぱり、雲井詩は最高と思う。 「遣悶」 雲井龍雄 縦令不有抜山力 縦令(たとひ) 抜山の力あらざるも 男児寧無椎秦寔 男児 寧(いずくん)ぞ 椎秦の寔(まこと)無からんや 傷時憤俗非好事 時を傷み 俗…

藤沢周平 「雲奔る」

雲奔る 小説・雲井竜雄 (文春文庫)作者: 藤沢周平出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1982/11メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 5回この商品を含むブログ (4件) を見る雲井龍雄を主人公にした藤沢周平の小説です! 雲井龍雄は、実在した米沢藩出身の幕末の志…

夏堀正元 「もう一つの維新」

もう一つの維新 (文春文庫 (386‐2))作者: 夏堀正元出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1985/08メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 3回この商品を含むブログを見る 雲井龍雄について、丹念に描いたすばらしい小説です。 最後まで読むと、思わず目頭が熱くなり…

魂が潰されることを拒否するということ 

(二年ほど前に記す) これは、私の思いっきり主観なので、違う歴史観の人も多々いると思うし、ぜんぜん共鳴してくれない人も多いかもしれないけれど、ふとこんなことを思った。 前々から思っていることでもある。 「元和の大殉教図」に寄せて、人の受難をへ…

雲井龍雄 「討薩の檄」

雲井龍雄 「討薩の檄」 初め、薩賊の幕府と相軋るや、頻に外国と和親開市するを以て其罪とし、己は専ら尊王攘夷の説を主張し、遂に之を仮て天眷を僥倖す。天幕の間、之が為に紛紜内訌、列藩動揺、兵乱相踵(つ)ぐ。然るに己れ朝政を専断するを得るに及んで…

雲井龍雄 参考文献目録

【雲井龍雄関連図書】 藤沢周平『雲奔る―小説・雲井竜雄』1982 文芸春秋 安藤英男『雲井龍雄詩伝』(明治書院) 高島真『雲井龍雄 謀殺された志士 また蒼昊に訴えず』(歴史春秋社) 村上一郎「雲井竜雄の詩魂と反骨」(「ドキュメント日本人 第三巻 反逆者…

“My Will” by KUMOI Tatsuo

“My Will” by Tasuo Kumoi (a Japanese Patriot of the late Tkugawa periodo,1844-1871) Confronting with death, I have no fear to die. Or being to live, I have no intention of enduring to live in dishonor. The JUSTICE of MAN competes with the …

雲井龍雄 「相馬城に人見子勝に別る」

「相馬城に人見子勝に別る」 平潟湾 勿来関 平潟の湾 勿来(なこそ)の関 石路索廻巌洞間 石路 索(めぐ)り廻(めぐ)る 巌洞の間 怒涛如雷噴雪起 怒涛 雷の如く 噴雪起り 淘去淘来海噛山 淘(なが)れ去り 淘(なが)れ来つて 海 山を噛む 地形雄偉冠東奥 …

雲井龍雄 「逸題」

「逸題」 舌存何妨縦横 舌 存す 何ぞ 縦横を妨げん 志決任他死生 志 決し 他(か)の死生に任ず 臣豈汚臣素節 臣 豈(あ)に 臣が素節を汚さん 汝休壊汝長城 汝 壊(こぼ)つを休(や)めよ 汝が長城 (大意) 私の命があり、言葉を語ることができるこの口と…

雲井龍雄 「檻車東下、時に本田某に示す」

「檻車東下、時に本田某に示す」 侠骨至今猶未摧 侠骨 今に至るも なお未だ摧(くじ)けず 任他刀鋸迫肌来 さもあらばあれ 刀鋸 肌(はだえ)に迫り来る 漢廷従是知高枕 漢廷 是(これ)より知る 枕を高くするを 寂寞世間無郭隗 寂寞たる世間 郭隗なし (大…

雲井龍雄 「予、暇日 郭青山集を閲す、天地有りて衾と為し月を枕と為すの句、弄吟数回、意甚だ之を愛す、因りて自ら枕月居士と號す、之を賦して以って志を述ぶ」

「予、暇日 郭青山集を閲す、天地有りて衾と為し月を枕と為すの句、弄吟数回、意甚だ之を愛す、因りて自ら枕月居士と號す、之を賦して以って志を述ぶ」 沽酒休沽澹泊酒 酒を沽(あきな)はば沽(う)る休(なか)れ澹泊(たんぱく)の酒 擇友須擇澹泊友 友を…

雲井龍雄 「席上 綿織(にしきおり)翁に贈る」

「席上 綿織(にしきおり)翁に贈る」 博浪沙中曾撃秦 博浪沙中(ばくろうさちゅう) 曾(かつ)て秦を撃つ 零丁僅脱圮橋身 零丁 僅(わづか)に脱す 圮橋(いきょう)の身 武昌今日相逢処 武昌 今日 相逢ふの処(ところ) 我是子房君老人 我は是(こ)れ 子…

雲井龍雄 「北下途上」

「北下途上」 欲囘狂瀾済一世 狂瀾を囘(かへ)して 一世を済はんと欲し 道之窮通未肯計 道の窮通 未だ肯(あへ)て計らず 直氣吐来震九重 直氣 吐き来たりて 九重を震はし 満眼紳紱是芥蒂 満眼の紳紱(しんふつ) 是れ 芥蒂(かいたい) 天日不照孤臣心 天…

雲井龍雄 「釋大俊 時事に憤を発し、慨然として済度の志有り、将に其の親を尾州に帰つて省せんとす、之を賦して以て贈る」

「釋大俊 時事に憤を発し、慨然として済度の志有り、将に其の親を尾州に帰つて省せんとす、之を賦して以て贈る」 生當雄圖蓋四海 生きては当(まさ)に 雄図 四海を蓋(おお)ふべし 死當芳聲傳千祀 死しては当(まさ)に 芳声 千祀(し)に伝ふべし 非有功…

雲井龍雄 「鴨に、広沢・岡松・林・武市・伴の諸君と飲む、席上、広沢君に贈る」

「鴨に、広沢・岡松・林・武市・伴の諸君と飲む、席上、広沢君に贈る」 藺氏元全趙 藺氏(りんし) 元(もと) 趙を全うす 荊軻曾許燕 荊軻 曾(かつ)て 燕に許す 輸誠期貫日 誠を輸(いた)して 貫日を期し 決死誓回天 死を決して 回天を誓ふ 皇道與花落 …

雲井龍雄 「秋暁」

「秋暁」 夢魂乍被雁声驚 夢魂 乍(たちま)ち 雁声に驚かさる 起渉前園洗宿酲 起つて 前園を渉り 宿酲(しゅくてい)を洗ふ 時有秋蛩跳入草 時に 秋蛩(しゅうきょう)有り 跳んで草に入り 牽牛花動露晶々 牽牛花は動き 露 晶々 (大意) (昨日は深酒をし…

雲井龍雄 「青柳の駅にて感有り」

「青柳の駅にて感有り」 伊北伊南落葉多 これ北 これ南 落葉多し 游人弔古意如何 游人 古(いにしへ)を弔ふ 意(こころ) 如何(いかん) 嬴顚劉躓真耶夢 嬴(えい)は顚(てん)じ 劉は躓(しつ)す 真か夢か 依旧版図山又河 旧に依るの版図 山又(また)…

雲井龍雄 「息軒先生に呈す 其の二」

「息軒先生に呈す 其の二」 天数有消長 天数に 消長あり 人道有隆汚 人道に 隆汚あり 所以賢也聖 賢たり 聖たる所以 行蔵或相殊 行蔵 或ひは相殊(ことな)る 唯吾狷而急 唯(ただ) 吾(われ) 狷にして急 不能與化倶 化と倶(とも)に する能はず 自立多崖…

雲井龍雄 「息軒先生に呈す 其の一」

「息軒先生に呈す 其の一」 身世何瓢颻 身世 何ぞ瓢颻(ひょうよう)たる 浮沈未自保 浮沈 未だ自ら保せず 俯感又仰歎 俯感し 又 仰歎し 心労而形槁 心は労して 形は槁(か)る 微躯一致君 微躯は 一に君に致し 不能養我老 我が 老を 養ふこと能はず 揮涙辞…

雲井龍雄 「臥病八首の一」

「臥病八首の一」 昔為憤世人 昔は憤世の人と為り 今為傲世人 今は傲世の人と為る 仰與青山契 仰いで 青山と契り 俯與緑水親 俯して 緑水と親しむ 蠖也任其屈 蠖也(かくや) 其屈(そのくつ)に任せ 何必求我伸 何ぞ 必ずしも我が伸ぶるを求めんや 好與沮溺…

雲井龍雄 「朝を退き後藤参与の僑居を訪う 其の四」

「朝を退き後藤参与の僑居を訪う 其の四」 怒来口角沫津然 怒り来(きた)つて 口角 沫(あわ) 津然(しんぜん) 決死欲収虺蜮権 死を決して 収めんと欲す 虺蜮(きいき)の権 何日手排雲霧去 何(いづ)れの日にか 手に 雲霧を排し去り 扶桑枝上見青天 扶…

雲井龍雄 「朝を退き後藤参与の僑居を訪う 其の五」

「朝を退き後藤参与の僑居を訪う 其の五」 憂世非難救世難 世を憂ふるは難(かた)きに非ず 世を救ふは難し 誰令百姓免餓寒 誰か 百姓をして 餓寒を免れしむ 何年一炬焼秦尽 何(いずれ)の年か 一炬(いっきょ) 秦を焼き尽くし 更約三章漢法寛 更に約さん …

雲井龍雄 「長州邸に、毛利・林二公と会す、酔中筆を走らす」

「長州邸に、毛利・林二公と会す、酔中筆を走らす」 忍死多年膽幾嘗 死を忍びて 多年 膽(たん) 幾たびか嘗(な)む 義旗果自会稽揚 義旗 果たして 会稽より揚がる 不疑覇業往将就 疑はず 覇業 往々(ゆくゆく)将に就(な)らんとす 臣若范蠡君越王 臣 范…