雲井龍雄 「辞世」

雲井龍雄 「辞世」


死不畏死    死して死を畏(おそ)れず
生不偸生    生きて生を偸(ぬす)まず
男兒大節    男児の大節は
光與日爭    光(かがやき)日と爭(あらそ)う
道之苟直    道 之(これ)苟(いやし)くも直(なお)くんば
不憚鼎烹    鼎烹(ていほう)を憚(はばか)らず
眇然一身    眇然(びょうぜん)たる一身なれど
萬里長城    万里の長城たらん


(大意)

死にのぞんでも死は少しも怖くはない。
恥を忍んで生きることによって、いたずらに虚仮のいのちを生きて、寿命を貪ろうとは思わない。
男が命をかけて守るべき節義は、
太陽とすらもその輝きを競いあうほどの光を後世に投げかけるものだ。
自分の生きてきた人生の道がまっすぐなものならば、
処刑も恐れはばからない。
ちっぽけなこの身だけれども、
私の魂は万里の長城となって、この世の不条理や横暴から、この国の人々を守り続けたい。