孝明天皇 御製

孝明天皇 御製


「戈(ほこ)とりて 守れ宮人 九重の みはしの桜 風そよぐなり」

「国民の やすきをいのる 神垣に かけてぞなびく 雪のしらゆふ」

「うば玉の 夜すがら冬の さむきにも つれておもふは 国民のこと」

「異船(ことふね)の おさまることを さらにいま ふかくも頼む 鴨の御社」

「異船の 船も見わかず へだつるは 神の心の 霧の海原」

「こと国も なづめる人も のこりなく はらひつくさむ 神風もがな」

「こと人も ともどもはらへ 神風や 正しからずと 我が忌むものを」

「この春は 花うぐひすも すてにけり 我がなすわざぞ 国民のこと」

「あづさ弓 ま弓つき弓 としをへず 治まれる世に ひきかへさなむ」

「矢すぢをも つよくはなたむ 時はきぬ むべあやまたじ 武士(もののふ)の道」

もののふと 心あはして 巌をも つらぬきてまし 世々のおもひで」

「日々日々の 書(ふみ)につけても 国民の 安き文字こそ 見まくほしけれ」

「あさゆふに 民安かれと 思う身の こころにかかる 異国の船」

「澄ましえぬ 水にわが身は 沈むとも 濁しはせじな 四方の民草」

「神ごころ いかにあらむと 位山 おろかなる身の 居るも苦しき」

「わが命 あらむ限りは いのらめや 遂には神の しるしをもみん」