山崎弁栄 歌集 抜粋
「断えなくば 海水(わだつみ)さえも くみつくす なにごとかそも ならざらめやは」(不断光)
「野にさける 花さへ弥陀(おや)の子を思ふ 心づくしの 色にやあらん」
「浪ごとに みな我顔に立ちほこる 一つの海の水と知らねば」
「はかなしや 弥陀(みおや)のみ旨 わが身にも かかると知らで あだに暮らしつ」
「大ミオヤの 全てを今は わがものと 賜ることも 嬉しかりけり」
「わがものと 思へばあだに すごすらん 賜物なりし このいのちをば」
「世の中の ありとあらゆる ものとして 量りなき身の わかれわかれぞ」
「かずかぎり なきまで立てる 浪々も 一つ海原の 水にぞありける」
「いかばかり わかれわかれに 立浪も 一つの海を離れざりけり」
「後の世とこの世と へだてあればとて ただ大ミオヤのみひかりのなか」
「吹きわたる風のまにまに さからはぬ 柳にならふ こころ安けれ」
「よぞごとに 聞きやしつらん かの国を わが故郷と しらぬむかしは」
「みほとけの みむねを旨と する人は これみほとけの あとのみほとけ」(勢至観)
「言の葉に あらはしがたし みほとけの 光りにふれし 心の程は」(無称光)
「阿弥陀仏を 念ふ心に 我なくば ここもさながら 無為の都ぞ」
「迷ひより 娑婆とは見ゆれ さとりなば みなこのままの 浄土なりけり」
「いにしへの かしこき人の あとぞかし ふみ見てゆかん 経(ふみ)の道芝」
「南にしおはば 無かしひじりの 阿とこひし 弥ちを陀づねて 仏かくいらまし」