ヘッシェル 「人は独りではない」

人は独りではない―ユダヤ教宗教哲学の試み

人は独りではない―ユダヤ教宗教哲学の試み


これはすばらしい本だった。

ユダヤ教の神髄のすごさに舌を巻いた。

人生や宗教の根底には、「言葉では言いあらわせないもの」への「驚き」があること。

人は、神から必要とされていること。

人生は、神と人との共働(パートナーシップ)であること。

人間は自己目的ではなく、絶望を避ける唯一の道は、他から必要されること。
幸福とは、自分が他者から必要とされている確信。
生とは、奉仕するためにあるというのが、最も奥深い智慧であるということ。

内的統一性ということや、「受容器」となるためにあること、神を知ることではなく神に知られること、生命とは配慮と憂慮であること。

などなど、とてもインスパイアされた。

信仰と、信念・信条を区別していることも、とても興味深かった。

信仰の源泉の一つは記憶であり、信仰を持つとは想起すること、過去を思い起こすことによって現在を聖化すること、
記憶の河を飲み、耳を傾けること、経験の想起と、その瞬間への応答が信仰であるというのは、なるほどーっと思った。

信仰は保険ではない、不断の努力であり、永遠のみ声にたえず耳を澄ましていくこと。

信仰とは、神の召しに俊敏に反応する感覚を生き生きと保ちたいと切望すること。

信仰とは、惰性ではなく、行為、道を切り開く行為。

などなどの言葉は、とても心に響いた。

ユダヤ教というのは、本当にすごいものだとあらためて瞠目させられた。

信仰とは何か、宗教とはどういうことか、敬虔とは何か、生きる意味とは、など、そういったことに興味がある人には、ぜひご一読をおすすめしたい名著だった。