文殊菩薩 十種大心

文殊菩薩 十種大心】



「比丘たちよ、以下の十種の倦怠なき心(十種大心)の発起を体得して、大乗(の教え)に向かって出発したものは、男女を問わず、如来の位に踏み込むのである。まして菩薩の位はいうまでもない。


1、 あらゆる如来にまみえ奉仕し供養しお仕えすることにおける倦怠なき心の発起
2、 あらゆる善根の集積から退転することのない倦怠なき心の発起
3、 あらゆる法の探求における倦怠なき心の発起
4、 あらゆる菩薩の波羅蜜の実践における倦怠なき心の発起
5、 あらゆる菩薩の三昧の完成における倦怠なき心の発起
6、 あらゆる世(三世)に次から次に間断なく入ることにおける倦怠なき心の発起
7、 十方のあらゆる仏国土の海に遍満し浄化することにおける倦怠なき心の発起
8、 あらゆる衆生界を成熟させ教化することにおける倦怠なき心の発起
9、 あらゆる国土においてあらゆる劫に亘って菩薩行を完成することにおける倦怠なき心の発起
10、 あらゆる仏国土の微塵の数に等しい波羅蜜の実践によって一人の衆生を順次教化して、あらゆる衆生界を教化することによって一如来の力を成就することにおいて倦怠なき心の発起を(修得すること)である。


比丘たちよ、浄信深くこれら十種の倦怠なき心の発起を体得するならば、男女を問わず、あらゆる善根に近づき、あらゆる輪廻転生の海から退き、あらゆる世俗の系譜を超越し、そしてあらゆる声聞や独覚の位を踏み越える。さらにあらゆる如来の家系の系譜に生まれ、菩薩の誓願を成就し、あらゆる如来の功徳の修得において浄化され、あらゆる菩薩行において浄化され、あらゆる如来の力に通達し、あらゆる魔や異教の師たちを粉砕し、あらゆる菩薩の位に歩み入り、如来の位へと近づく」

(梶山雄一監修 『さとりへの遍歴 華厳経入法界品』上巻 (中央公論社) 92頁)