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衣装がとてもよくできていて、演出もなかなか奥行きがあって、面白かった。
シャイロックがかわいそうだった。
本当に残酷なのは、シャイロックではなく、「社会」の側なのではないか、どちらが残酷なのだろう、シャイロックを生み出したのはこの差別と社会の構造じゃないか、とも見てて考えさせられた。
信仰まで奪い、同化を強制するような「慈悲」というのは、なんだか恐ろしいものだ。
あと、昔戯曲を読んだときにも疑問に思い、映画を見ててもあらためて思ったのだけれど、あの最後の場面の、ポーシャが指輪を奪い取って責め立てるシーンは何の意味があるのだろう。
ヴェネチアの男性社会の「正義」や「友情」のあやふやさや不確かさを笑い飛ばしたものなのだろうか。
「ヴェニスの商人」についての、いろんな解釈や評論をあらためて研究してみたくなった。
にしても、中世のヨーロッパ社会におけるユダヤ人の地位ってのは、悲惨だなあと思う。
ユダヤ人問題や、社会の偏見や「正義」ってなんなのだろう。
そういうことを、あらためて考えさせるとは、シェイクスピアってのはやっぱり只者ではないすごい戯曲家だなあと思う。
世の中の正義や慈悲なんてのも、特にそれが多数者のものであれば、たいていはまやかしなのだろう。
一方、少数者の側も、その心が憎悪に満ちたとき、罰されなければならない危険な罪深いものになるのかもしれない。
人間というのは、いずれにしろ、そらごとたわごとばかりの、罪深い凡夫というものなのだろう。