戦争に関する特集についての備忘メモ 2

最近見た、いくつかのNHKの戦争に関する特集についての備忘メモ:

 

『新・ドキュメント太平洋戦争 1944 絶望の空の下で』では、さまざまなエゴドキュメントから、1944年当時の庶民の体験や思いが再構成されていた。

サイパンの玉砕と、本土空襲が始まった様子が描かれていた。

もうその時点であまりにも悲惨だった。

サイパンでは両親と山の中を逃げ惑い、両親が死んだあと助かった少女の手記が紹介されていた。

また、別の少女の日記が紹介され、その少女は学徒動員されて工場で働いていたが、空襲で亡くなったことが伝えられていた。日々の工場の勤務の合間に、ちょっとしたオシャレを工夫したり、ピアノの練習に励んでいた様子が日記から紹介されていた。

工場での勤務では、ヒロポンつまり麻薬が配布され、増産に努められていた様子も紹介されていた。

せめて1944年に終戦にできなかったのだろうかとあらためて思った。

 

『一億特攻への道』という番組では、特攻隊員の遺族のもとに残った書類などから、特攻隊員が戦死すると、生家の周辺の学校から何百と褒め称える文章や手紙が送られてきて、弔問客もたくさん訪れ、歌までつくられた様子が紹介されていた。

さらに、それが新たな志願者の募集につなげられていたことも指摘していた。

また、特攻を続けることで、戦争の継続が美化され、戦争を続けてもどこかでどうにかなるのではないかという期待が続いたことや、一撃講和論つまり米軍にどこかで大きな打撃を与えて有利な条件で講和を結ぶという考えと特攻作戦が連動していたことが紹介されていた。

特攻については、これをいたずらに美化せず、社会や教育がつくりだすメカニズムを批判することが大事とあらためて思われた。

 

『“最後の1人を殺すまで”〜サイパン戦 発掘・米軍録音記録』という番組では、80年間忘れられていた米軍の録音資料が紹介されていた。

それらは、生々しい砲声の轟きや、当時の人々の肉声が録音されていた。

それらをもとにいま存命中の人々にも取材が行われていた。

今も存命のある高齢の元米軍兵士が涙ぐみながら、当時のある思い出を語った様子も紹介されていた。

戦友の一人が物音がしたので日本兵と思い数発銃弾を撃ち込んだら、日本人の少女だった。その戦友は良心の呵責に苛まれて、帰国する船に乗る前日に自殺した、と。

どちらもあまりにもかわいそうで、思わず涙させられた。

戦争というのは、このように悲惨なもので、可能な限り避けねばならないものだとあらためて強く思った。

また、同番組では、最初のうちは民間人は殺さない方針だった米軍が、日本兵が民間人に紛れて攻撃したり騙し討ちにしてくることを繰り返したので、だんだんと民間人も平気で殺戮するようになっていったことを伝えていた。

日本軍は民間人にも玉砕を命じ、平気で戦闘に意図的に巻き込んでいたことが紹介されていた。

 

これらは80年前の出来事ではあるが、民間人を意図的に戦闘に巻き込むことや、民間人の玉砕を当然のように主張する勢力や、憎悪教育や自爆の礼賛などは、今もまさにガザ地区などで行われていることで、過去の問題ではないようにも思われた。

また、あまりにも命を粗末にしすぎていた当時の日本のあり方への痛切な反省から出発した戦後の日本が、労働環境等々ではたして本当に人間や命を大切にしているのかについても考えさせられた。人命軽視や人権無視は、程度の差こそあれ、今の日本も決して払拭できていない問題だと思われる。

 

また、いろんなニュースの中での戦争の特集で、今年は対馬丸事件から80年ということで、複数の対馬丸の特集があってたのを見た。

私は小学生の頃、小学校の図書館で『さよなら対馬丸』という絵本を読んだ強い印象が残っていたので、それらの特集も見たけれど、疎開のために対馬丸に乗っていた沖縄の多くの児童が亡くなり、事件後は箝口令が敷かれたことなど、あらためてなんとも言えぬ気がした。

「啓子ちゃん生きた」という対馬丸事件をうたった歌も紹介されていた。

また、別の船から対馬丸事件の様子を目撃していたおばあさんのインタビューもあり、戦争は絶対にしてはならないということを強くおっしゃっていた様子が印象的だった。

 

また、別の特集では、そういえば以前も別の番組で少し聞いた記憶があるが、宇部の近くの海底炭鉱の遺骨収集に努める方々の様子が紹介されていた。

1942年、宇部の近くの海底炭鉱で大規模な事故があり、多くの方が亡くなったが、その七割は朝鮮半島出身者だったそうである。

国がなかなか何もしないので、民間人の有志でずっと調査や探索をしている方々の様子に胸打たれた。

 

また、別の番組では、横須賀の近くの猿島というところの要塞あとが紹介されており、かなり大規模な遺構が残っているのに驚いたことと、砲兵たちが横須賀大空襲の時に悲惨な戦いを強いられたことが紹介されていた。

 

青森の空襲や、慰霊の観音像や、当時の方が青酸カリを入れていた毛糸の袋などの紹介の

番組もあった。

モノや場所から当時の思いや歴史を追体験することは、とても大事に思われた。

 

戦後80年ほど経つが、これらの一つ一つをできる限り忘れず、あまりにも命を粗末にしていた過去の時代への批判を忘れず、可能な限り命や人権を大切にする世の中にしていかなくてはなぁとあらためてこれらの番組を見て思った。

貴重な証言を集めたり良い番組の製作にあたってくださったNHK等の方々に感謝。