Youtubeで、BBCの歴史ドラマ「ダンケルク」(”Dunkirk”)を、今日見終わった。
この一週間、ちょっとずつ見たのだけれど、本当に迫真の、よくできたドラマだった。
ダンケルクは、もちろん、誰もが知っている第二次世界大戦でのダンケルク撤退作戦を描いたもの。
ナチス・ドイツの攻撃の前に、風前のともし火となったイギリス・フランスの軍隊が、フランス北岸のダンケルクの浜辺から、奇跡的にイギリスまでドーバー海峡を渡って撤退したことは有名な話である。
ただ、私は、このドラマを見るまで、ダンケルク撤退作戦がこれほど大変なものとはほとんど知らなかった。
撤退しようにも、船もなかなか揃わないし、浜辺で船が来るのを待っていると、ドイツの戦闘機が始終爆撃や機銃掃射をしてくる。
しかも、やっと船に乗っても、ドーバー海峡を渡り終えるまでの間に、またまたドイツの戦闘機が攻撃してくる。
友軍が撤退するまでの間、前線ではフランス軍やイギリス軍の一部が、ドイツとずっと闘い続けるが、これまた苦しい闘いを強いられた。
このドラマは、いろんな体験談を集めてつくってあったそうで、中にはドイツ軍によるイギリス軍捕虜の殺害の様子なども出てきて、国際法も何もあったものじゃないと、ドイツ軍の滅茶苦茶さには驚かされた。
下手をすれば、全軍が全滅される危険があったにもかかわらず、断固としてドイツと戦い、なんとしても全力を尽くして撤退作戦を行おうというチャーチルの不撓不屈の意志には、ドラマでもあらためてすごいなぁと感心させられた。
また、民間の漁船や遊覧船までダンケルク撤退作戦のために総動員されたそうだが、危険を顧みずにそのために馳せ参じたイギリスの普通の民間の漁師たちなども、すごいなぁと感心。
イギリスの底力はこういうところにあるのかもしれない。
ドラマの最後のところで、身動きがとれず、置き去りにされたイギリスの負傷兵が、進軍してきたドイツ兵に、水を頼むと、ドイツ兵が水とタバコをそのイギリスの負傷兵に与えてくれて、イギリスの負傷兵が君は何が欲しい?とドイツ兵に聞くと、「マーマレード」と答えて、イギリスの負傷兵が笑いながら涙をこぼすシーンも、とても印象に残った。
ちなみに、このダンケルク撤退作戦の時に活躍したイギリスの将校たちは、のちにノルマンディー作戦の中心となった人物や、エルアラメインの戦勝の立役者となったらしい。
このドラマを見ていて、撤退作戦にこれほど真剣であったところが、イギリスと日本の違いだったのかもしれないと思った。
日本も、キスカ撤退作戦など例外的な見事な撤退作戦も稀にはあったけれど、おおむね、あまり撤退には意を用いず、玉砕ばかりを行ったわけで、だいぶイギリスとそうした点で戦争に対する考え方が異なっていたのかもしれない。
また、このドラマを見ていて、イギリスが、始終非常に深刻ではあるが、決して悲壮にはならず、冷静に深刻に事態を受けとめて、適切に行動しようとするところは、とかく悲壮になりがちな日本との精神風土の違いを感じたような気もした。
にしても、結果として勝ち戦になったかもしれないが、イギリスも随分苦しい戦いを第二次世界大戦では戦ったことが、このドラマからも一端がよくわかった気がした。
いろいろと考えさせられる、とてもよくできたドラマだったと思う。