「秋の雨に寄せて」

「秋の雨に寄せて」



雨の降る日は、汝(な)がことを思い、


風の冷たい日は、汝がことを思い、


紅葉が色づけば、汝がことを思い、


過ぎ去って往く風に、汝がことを思う。


執着や固執は、蔦のように絡まり、


焼き捨てる術もなし。


枯れ葉を集めて燃やすように、


私の思いも、焼き尽くすことができたら。


雨の降る日に、汝がことを忘れ、


風の冷たい日に、汝がことを忘れ、


紅葉が色づけば、汝がことを忘れ、


過ぎ去って往く風に、汝がことを忘れむ。


日、一日、忘れ行かば、


やがてすべて忘れゆかむ。


秋風がもし、
私の胸に積もる落ち葉も、吹き去ってくれるのならば。