首相のTV演説、良い試みと思う

菅首相 米参考にTV演説を検討
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2011012501001


良い試みではなかろうか。

オバマさんや歴代の米大統領のように、直接国民に語りかける機会をきちんと日本もつくっていくことは、日本にとっても有意義と思う。

ぶら下がり会見などは、結局ワンフレーズ的になりがちだし、マスコミの編集による恣意が入りがちだと思う。

きちんとしたTV演説の機会をつくっていくことは、首相と国民のコミュニケーションのためにも、良いことではなかろうか。

ただ、そのためには、きちんとした説明責任や発信能力を首相が持つことが何よりも大事である。

最近、菅さんが書店で購入したと報道されていた筑紫哲也『国家を考える。自我作古』(日経新聞)という本の中に、かつてnews23の番組の中でクリントンが語ったことばとして、こんなことばが記されている。


(指導者として最も大切なことは)

(1)現状を明確に把握すること
(2)それに基づいて明確な将来のビジョンを持つこと
(3)そのビジョンを実現するための具体的な行動計画を持つこと
(4)それに加えて現代の指導者にとって必要なのは一般市民の支持をとりつけること


(前掲書、197頁)


実際にクリントンがこのとおりだったかは別にして、なかなか今日の指導者のありかたとして参考になることばだと思う。

試みに、この四つの条件に照らして菅さんを論じてみるならば、菅さんの現状認識や、将来へのビジョンは、一応、施政方針演説や、それ以前の新成長戦略などにおいて表明されてきたと思う。

かつての日本の公共事業中心の政策や供給サイドに偏った政策ではダメだという新成長戦略で示された現状認識は基本的に私も正しいと思う。

また、年頭所感や施政方針演説で示された「平成の開国」「最少不幸社会」「不条理を正す」という三つのビジョンも、基本的には今の日本にとって必要な課題であり正しいものだと思う。

したがって、(1)と(2)はそれなりにいままで示されてきたとは思うので、今後は(3)と(4)が課題となろう。

今回のTV演説は(4)のための努力ということだと思う。

首相がきちんとした政策への説明責任を果たし、熱心に国民に(3)を提示し説明し、説得力があれば、必ず心ある国民はなんらかの形で応えるものだと思う。
既得権益を離れた改革を行うには、世論の支持が不可欠だろう。

逆に、まともな説明責任を果たせず、国民への説得に不十分な熱心さしか発揮できないならば、TV演説はかえって不発に終わるかもしれないし、あまり強力な支持を集めるには至らないかもしれない。

国民も、せっかく今はネットなどがあるので、マスコミや質の低いブロガーなどの夾雑物を通すばかりでなく、自分で直接首相が発信するメッセージにいったん耳を傾けた上で、そのうえで自分自身で支持や不支持を理性でもって判断することが、場合によってはデモクラシーにとってきわめて重要なことだと思う。

今までも、いちおう菅さんはブログを通して情報発信をしたり、ネットの生中継の討論番組に歴代の首相ではじめて出演したり、いろんな動画もネットで配信したりと、情報発信を一応心がけてきたようではあるけれど、いまいち一般国民に多く浸透するには至っていないようである。

TV演説の試みは、私は大いにやって欲しいと思うし、うまくいっても、あるいは当初はあまりうまくいかなくても日本の政治文化にとってそうした先例をつくっていくという点で、とても意味のある「自我作古」(我より古をつくる。後世の模範となるものを今自分たちでつくる。)ということになるのではないかと思う。