ヨヘベッド・セガル 「ユダヤ賢者の教え 四巻」

ユダヤ賢者の教え (4) (ミルトス双書)

ユダヤ賢者の教え (4) (ミルトス双書)


ユダヤ聖典・タルムードの中のアガダーと呼ばれる説話集を、現代人にわかりやすくまとめたシリーズの最終巻の第四巻。


この巻もとても面白く、これでこのシリーズが終わってしまうのが、とても残念に思えるほどだった。


印象深かったのは、以下のいくつかの物語。


ツァディクのベンヤミンが、常に多くの人を助け、飢饉の時に自分に助けを求めてきた寡婦とその七人の子どもを、自分も貧乏なのになんとか養った。
そのことにより、人一人の命を救うだけでも全世界を救ったのと等しいと考える神により、八人もの命を救ったので、本来ならば死ぬべき時が来ても奇跡的に病気が治り、二十二年、さらに寿命が伸びた、という話。


また、ある町に、みんなから嫌われているゴロツキたちがいた。
しかし、ラビ・ゼラだけは、いつも彼らにあいさつし、彼らが良くなるように祈り、困ったときには助けたり、かばったりしてあげていた。
しかし、ゴロツキたちは、ラビ・ゼラを馬鹿にし、ラビ・ゼラは背が低くて足にやけどのあとがあったので、チビのやけど足と呼んでいた。
だが、ある時、ラビ・ゼラが高齢のためになくなると、はじめてゴロツキたちも寂しく思い、もう自分たちのことを心配してくれる人も愛してくれる人もいなくなったのだと思い、いかにどうしようもない自分たちもラビ・ゼラが変わらず慈しんでくれていたかを思って、行いを改めて更生していった、という話。


あと、マアセルという、財産の十分の一を神のためにささげることが律法に定められているが、それをしなかった人がだんだんと財産が減っていき、きちんとするようになったらだんだんとまた元のように栄えていった、という話。


などなど、とても面白かった。


他にも、お金より友人が大切なこと、身体の毛の一本一本にちゃんと栄養がいきわたるように神は人を必要な分は養ってくださること、貧しくとも誇りを失わず足るを知っていたいろんなラビの話、神は敬虔な人には高い水準を求めて自らの行いをその人が正すことを求めること、ほんのわずかな驕りの心も持たないように気を付けるべきこと、などがわかりやすい説話で説かれていて、とても面白かった。


四百回以上教えないと物事を覚えることができない弟子に、根気よくトーラーを教えた先生の話も感動的だった。


ユダヤの人々は、こうしたアガダー(説話)によって、おのずと、トーラー(律法)への愛や献身を身につけていくのだろうと、読んでいてあらためて思った。


また、最も恐ろしいことは、心がトーラーに対して閉じられることだというメッセージも、なるほどーっと考えさせられた。


この全四巻は、多くの人におすすめしたい、素晴らしい説話の数々だったと思う。
このシリーズでわかりやすくアガダーを読めて、本当に良かった。