石角完爾 「ユダヤ人の成功哲学 タルムード金言集」

ユダヤ人の成功哲学『タルムード』金言集

ユダヤ人の成功哲学『タルムード』金言集

とても面白かった。


ヨセフの牛の夢解きの話は、創世記でもちろん知っていた。
しかし、この本で、この物語から、ユダヤ人は幼い頃より、どんなに景気の良い時でも次の不況や不運の時にもやっていけるように、堅実な貯蓄や準備を怠らないように教えられる、ということを教えられた。
ユダヤ人は聖書の読み方や受けとめ方の深さが全然違うと感嘆させられた。
本当に眼光紙背に徹し、すべて自分のこととして血肉化して受けとめているのだろう。


また、土地は神のものであり、五十年間人は借りることができるだけ、という発想がユダヤにはあるというのも考えさせられた。


Wisdom(知恵)は、賢明な生き方のガイドラインのことであり、自分や家族に困ったことや不幸が生じないようにするための具体的な生き方の指針、という話も、なるほどーっと思った。


ノーペイン・ノーゲイン、つまり何かを得るためには何かを支払わねばならない、苦労や努力や犠牲を払わねばならない、という原則も、なるほどっと思った。


Eat poorly, Think richly. という言葉も、いろんな読み方ができると思うが、なるほどと思った。


また、ユダヤにおいては、「あきらめたら終わりだ」と教えるらしい。
日本では、人間あきらめが肝心などとわかったようなことが言われるが、そんなことはユダヤ的な発想ではとんでもなく、ともかくいかなる窮地においてもあきらめずに考え抜くことが大切とされるそうだ。


「舌の先に幸せがある」
というユダヤの格言も、なるほどと思った。


何でも疑問を持ち、考え続ける。
そして、言葉を大切にし、言葉を善く使う。
それがユダヤにおいて大切にされることなのだろう。


また、「レハレハ」というヘブライ語があるそうで、すべてを捨てて一からやり直す、という意味だそうだが、かえってその時に、成功や新しい可能性があると考えるそうである。


悪いことは、もっと悪いことを避けるために神さまが与えてくれている、とユダヤ人は考える、というのも、なるほどと思った。


人は塵から生れて塵に帰る、という聖書の言葉から、わりとどうにもならないことにも冷静に淡々としている、というのも、なるほどと思った。


不幸と不幸感、幸福と幸福感が違う、という話も、なるほどーっと思った。
これはすごい知恵と思う。


「神はこの物事をどう見るだろう?」と考え、違う視点から発想することをユダヤ人はいつも大切にするということも、とても大切なことだと思った。


必ず、財産の十分の一以上は、慈善や寄付に使うという文化もすごいと思った。
知的価値は物質価値に優る、という考えが根付いているところも、すごいものだと思った。


また、ユダヤ人が心がけていることとして、


・人をほめること。
・自分がなぜ生れてきたか、を考えること。
・「善いこと」を毎日習慣として行うこと。(特に具体的な善行とトーラーの学習)
・喋るよりも聞く。
・魂をあらゆる騒音から遮断する一日を持つこと。
・不運が襲ってきても、絶対にあきらめずにバトルし続けること。(ヤコブの天使との格闘)


といったことがあるという話は、非常に感心した。


モーゼの言葉に、「ウバハルタ・バ・ハイム」(生き抜くのだ、この生を、この命を)という言葉があるそうである。
この言葉も、とても心に響いた。


いろんな説話も盛り込まれていて、思っていたよりずっと良い本だった。


日本も良い国だし素晴らしい文化だと思うが、こと生き残りのための知恵や術という点では、より過酷な環境に何千年もさらされ続けてきたユダヤ人に学ぶことは多いのかもしれない。
この本や他の本によって、ユダヤの知恵に学ぶことが、日本の未来の鍵かもしれないと、この本を読んであらためて思った。