ハロルド・クシュナー 「天国に行くための8つの知恵」

天国に行くための8つの知恵

天国に行くための8つの知恵

著者はユダヤ教のラビ。
アメリカではとても有名な著述家だそうで、いろんな著作がベストセラーになっているそうである。


私は著者の本ではこの本をはじめて読んだのだけれど、とてもわかりやすく、味わい深く、すばらしい本だった。
ユダヤ教の知恵というのは、あらためてすごいものだと思った。


旧約聖書の創世記の中のヤコブの物語をとても詳しく味わい深く斬新に解説しているところが、とても面白かった。
ヤコブの天使との格闘を、ヤコブ自身の良心との葛藤だと説き明かしてあるところはなるほどと思った。
若い頃は、人をだましても勝利を得たいと思っていたヤコブが、ラケルという妻との愛情を知り、また自分自身が人からだまされるつらい経験を経てきたことで、心が成長し、良心がしっかり目覚めるようになり、かつてだました兄のエサウに素直に謝り、和解するようになったということがわかりやすく解説されてあり、あらためてこの物語の深さを思った。


また、ヤコブが天の梯子を若い時に見た夢は、希望をあらわしてあり、実際、その後のヤコブは自らの力で一歩一歩天へ向かう梯子をよじのぼる努力のような生涯だったということも、なるほどと思った。


愛とは相手の魂に潤いを与えることであること。
萎縮するよりも、生産的に、与えることを日々に選ぶこと。


などなどの話も、なるほどと思った。


また、あらゆる罪の根底にあるのは、「他人を思いのままにする」ということがあるということ。
また、復讐というのは、奪われた自分の人生を自分の力で管理する権利を取り戻そうとすることで、奪われた自分の権利と尊厳を回復したいということだという指摘は、なるほどと思った。
そうであればこそ、相手を許す強さを持つことが必要というのもなるほどと思う。


著者がわかりやすく解説していて、あらためてなるほどと感動したのは、旧約聖書申命記の中で、明確に、エジプト人を憎んではならない、と書かれていることである(第二十三章)。
エジプトで重労働が課され、何度も殺されそうな目にあいながらも、旧約聖書において、神はこのようにモーゼに語り、その教えをイスラエルの人々が大切にしていたというのは、とても胸を打つエピソードと思った。


また、旧約聖書ヨブ記のラストは、私も以前から不可解だったのだけれど、この本で、神が何を語るかというより、ヨブは自分の名前を神が呼びかけ、直接神と言葉を交わしたということで満足した、という解釈が示されていて、なるほどと思った。


とてもすばらしい本だった。