- 作者: 吹田隆道
- 出版社/メーカー: 春秋社
- 発売日: 2013/02/28
- メディア: 単行本
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文献学、つまり文献を精緻に考証することによって最も古い文献から釈尊の姿を描こうとしてあり、面白かった。
ビンビサーラ王が釈尊にはじめて会う時も、同盟締結を釈迦族で目指していたのではないか、また釈尊がスパイではないかと疑っていた、それでわざわざ王自ら会おうとした、という動機が推察してあり、たしかにそう考えるとリアルな感じがして面白かった。
また、ラーフラが釈尊の出家の六年後に生れたという伝承があるそうで、これも興味深かった。
個人的にとても興味深かったのは、ジル・ボルト・テイラーの『奇跡の脳』の話だった。
左脳の機能が停止した著者は、右脳だけになった時に、あらゆる生命と自分との垣根が消えたような、不思議な体験をしたそうで、あたかも「ニルヴァーナ」のようだったそうである。
ぜひその本も読んでみたいと思った。
あと、オープン・キャノンとクローズド・キャノンという言葉がとても興味深かった。
仏教は閉じられた経典でなく、開かれて後世も改変可能なオープン・キャノンだったから、膨大な大乗経典が生じた、というのはとても面白い視点と思う。
仏典の素晴らしいところは、オープン・キャノンなところかもしれない。
般舟三昧経を引用して、夜空の星空の星のように、無数のブッダがこの宇宙にはいる、ということが書かれている箇所は、読んでいて、本当に仏教の最も面白いところであり、オープン・キャノンであることの最大の理由はそこにあるのかも、とあらためて思った。
とてもシンプルにわかりやすく書かれているので、歴史や文献の問題として仏陀に興味がある人には、良い一冊と思う。