鳩山さんの問題

鳩山氏「尖閣は係争地である」…中国高官に
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130116-OYT1T01724.htm?from=popin


かわいそうなことを…南京大虐殺記念館で鳩山氏
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130117-OYT1T01055.htm?from=ylist



このニュースについての論点は、二つある。
その二点を、明確に分けるべきだろう。


1、首相経験者が海外で尖閣を係争地と発言することの是非。
2、当時の南京において日本軍が実際に多くの人を殺傷したことの有無について発言することの是非。


この二点である。


どうも、このニュースからのブログ等のコメントを見ていると、両方が混ぜこぜになっているようである。


また、2については、


2-a 国際法に違反した捕虜殺傷があったかどうか。
2-b 中国側が主張するような「三十万人」という犠牲があったかどうか。


という二点は、さらに別個に分けて論じられるべきである。


詳しく論じれば長くなるので、簡潔に私の意見を述べれば、


1については、現下の情勢で首相経験者が中国で尖閣の問題について係争地と述べることは、私は極めて疑問である。
特に、中国のように政権交代が存在せず、国家主席や閣僚に強い権威が存在する国においては、鳩山さんのこのような発言が中国のメディアにのれば、日本側にもこのような見解が有力ないし一般的だと多くの人々に受けとめられ、中国がより尖閣に対して野心と強硬姿勢を見せるきっかけになる可能性がある。
それに、今は議員も辞めたとはいえ、鳩山さんはつい先日まで民主党の一員だったわけであり、民主党政権では尖閣は日本の領土だと明確に述べてきた。
それにもかかわらず、いきなりこの発言は理解に苦しむ。


次に、2についてだが、2-aについては、投降した中国兵を二万人ぐらい殺傷したという当時の日本軍人の日記がある。
仮にこれが事実だとすれば、カチンの森の虐殺と同様、大問題である。


一方、2-bについては、多くの人が疑問を呈しているとおり、南京市街地で短期間にそれほどの人を殺すということは、まず物理的に不可能だろう。
当時の戦争の長いスパンに関して、南京の周辺地域での犠牲者を含めての意味ならば、三十万という数字もありえないわけではないが、南京戦で市街地でそれだけ殺されたというのであれば、明確に物的証拠がないし物理的に不可能であると思う。


問題は、以上の二点について、鳩山さんが十分な準備や認識を持って発言しているのかどうかということである。
ただ、中国側に案内されて、思いつきでコメントしているのであれば、一市民ならばともかく、首相経験者としてはあまりにも問題であろう。


もっとも、私がいささか気になるのは、鳩山さんはこのような発言をすれば、国内でどれほどの批判にさらされるかわかりそうなものなのに、あえてこういう発言をしているところである。
もし仮に、轟轟たる非難にされされようとも、それでもあえて自分の信念のためにこうした一連の行動や発言をしているのであれば、それはそれで、是非はともかく、たいしたものだろう。
しかし、国内でどれほどの非難にさらされるかすらも予測せず、適当にその時々の思いつきで行動し発言しているならば、本当につける薬がないとしか言いようがない。


鳩山さんの場合、今までの経緯を見ていると、どうも前者より後者の可能性が高いところが心配である。
結果は何の関係もなく、自分の心情としてその時々の思いで行動する、というのは、政治的にはあるまじきことである。


鳩山さんの問題は、心情倫理と責任倫理の問題であることをよくよく国民も理解すべきと思う。
責任倫理の欠如ということに関しては、何人も鳩山さんを擁護できないだろうし、擁護すべきでもない。