最近、「太祖王建」という韓国の時代劇があっていて、ずっと録画していて時々見ている。
朝鮮半島は十世紀に、新羅が衰退して、高麗と後百済という、かつての高句麗と百済の継承国を自任する国が独立し、「後三国時代」と呼ばれる乱世を迎えたのだけれど、その時代の話。
後三国時代の歴史は全然知らなかったので、なかなか面白い。
その中に、泰評(テビョン)という人物が出てくる。
高麗の王として後三国を統一した王建の軍師になる人物である。
泰評ははじめは、ごく普通の一介の兵士としてある豪族に仕えていたが、独学で孫子の兵法を暗記していた。
たまたま王建がその豪族のもとを訪れた時に、護衛の兵士の一人として背後におり、酒宴の席で王建たちがいろいろ話していた中で、泰評が孫子を暗唱して話の流れを助けると、王建が驚愕して、このような賢人が一介の兵士であって良いはずがないと、軍師に抜擢して重用することになった。
それから、泰評は縦横無尽の活躍をし、王建のために智謀の限りを尽くして貢献した。
特に、羅州の戦いでは、後百済の強力な水軍に対して、あらかじめ天文や気候から東南の風が吹くと予測し、三国志の諸葛孔明のような火攻めを考案し、後百済の水軍を全滅させる大きな功績をあげた。
もう一人、神童と呼ばれる若き天才の崔凝(チェウン)とともに、王建を支える二人の軍師として、高麗の基盤をつくるのに多大な貢献を泰評はした。
しかし、王建と後百済の王である甄萱が、それぞれ自ら大軍を率いてこれから決戦をしようという時に、「怪疾」という謎の疫病が大流行し、高麗の軍も後百済の軍も病に大打撃を受ける。
その中で、泰評もその原因不明の疫病にかかる。
王建が嘆き悲しみ、惜しむ中で、泰評は崔凝に後事を託し、病で志半ばで命を落とす。
歴史書にそう書かれているのか、ドラマの創作なのかはわからないけれど、ドラマの中では、泰評は、
「殿の天下統一を見届けることができずに病で命を落とすのは無念でなりません。無念過ぎて、眼を閉じて死ぬことができません。どうか必ず天下を統一してください。」
と言いながら、眼をあけたままで亡くなっていく。
韓国の時代劇はよくできているけれど、泰評の死もよく描かれてて、なんとも胸を打たれるものがあった。
後三国が高麗によって統一されたのは、泰評のような人がいたからできたのだろうなぁと思った。
いつの世も、後世からはほとんどその名が忘れらても、志を高く持ち、全身全霊を打ち込んで天下のために尽くした人物がいたのだろう。