シリーズ憲法9条〈第3巻〉世界の中の9条 (シリーズ憲法9条 第 3巻)
- 作者: 歴史教育者協議会
- 出版社/メーカー: 汐文社
- 発売日: 2005/12/01
- メディア: 単行本
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わかりやすく世界の中における日本国憲法九条の受けとめ方や、各国の平和に関する取り組みやデータ、戦争違法化の流れを子どもにもわかるようにまとめてあり、とても面白かった。
へえ〜っと驚いたのは、世界の中に軍隊を持たない国が二十九カ国もあるということ。
そのほとんどは、ヨーロッパや南太平洋やインド洋やカリブ海の、非常に小さな国々なのだけれど、世界のうちにおよそ三十カ国も軍隊を持たない国があるというのは、なんとなくほのぼのとした気持ちになるエピソードと思う。
また、戦争放棄を憲法で定めた国は別に日本だけではなく、イタリア憲法11条、ドイツ憲法26条、フィリピン憲法第二節、韓国憲法五条もそれぞれ定めていることや、インド憲法51条、ブラジル憲法前文も平和的解決や平和促進を定めていることなどがわかりやすく解説してあり、面白かった。
また、ミクロネシア連邦の憲法前文というのが、詩のようで、感銘深かった。
「海は我々を分かつのではなく、
一つにしてくれる。
海は我々を支えて、
大きくたくましくしてくれる。
いかだやカヌーで海に漕ぎ出した時、
ミクロネシアの歴史は始まる。
ミクロネシアの民族は、
星の中を航海した時代に生まれた。
世界はひとつの島なのだ、
我々はここよりほかに祖国を望まない。
戦争を知ったがゆえに、
我々は平和を望む。
分割させられたが故に、
我々は統一を望む。
支配されたが故に、
自由を望む。」
(ミクロネシア憲法前文)
外国にはけっこう日本の憲法九条に共鳴する人々がいるようで、アメリカのオーバービーさんという人が中心になって「第九条の会」という団体がアメリカにはあり、すべての国の憲法に九条の原則を採択させようと新聞広告を出したりしているそうである。
また、1999年にオランダにハーグで開かれた「平和のための市民会議」では、世界百カ国から790ものNGOが参加し、そこで、「公正な世界秩序のための基本10原則」というものが発表されたそうである。
その第一目標には、「各国議会は、日本国憲法第九条のように、自国政府が戦争をすることを禁止する決議を採択すべきである。」と掲げられているそうだ。
また、スペインのカナリア諸島にあるテルデ市には、ヒロシマ・ナガサキ広場という広場があり、そこに憲法九条の碑という碑文が建てられているそうである。
また、核兵器を持ちこませないことを決めている非核神戸方式が、ニュージーランドにもとても大きな影響を与え、ニュージーランド非核地帯法を制定させたというエピソードもとても興味深かった。
なお、日本の市区町村の77%は、非核平和都市宣言をしているそうである。
最近は、安倍首相や橋下さんなどの発言により、九条は何かとても色あせた古いもので、変えた方が良いという論調が強まりつつあるようだが、何事にも一長一短あるし、いろんな視点から物事は観察した方が良いのかもしれない。
世界の中における九条を、いろんなデータや事例に基づいてわかりやすくまとめてある本書は、その一つの参考として、とてもためになるのではないかと思った。
なお、この本の中で、私ははじめて知って興味深かったのは、ユネスコの「わたしの平和宣言」という試みである。
http://d.hatena.ne.jp/elkoravolo/20130529/1369791522
世の中、知らないことで、有意義なことが、いっぱいあるものだとあらためて思う。