俊芿律師の最後の説法というのが、たまたまぱらぱら読んでた本に載ってたので、メモ。白文だけ載ってたので、我流で書き下しと意訳もつくってみた。
(石田充之編『俊芿律師』(300頁)
俊芿律師はあんまり多くを語らず、ほとんど著作どころか文章も残っていないのだけれど、この簡潔な遺言の説法を見るだけで、とてつもない人だったことがよくわかる。
(原文)
諸悪莫作 諸善奉行 自浄其意 是諸仏教 此人皆所知也良久云々
法界一念謂之空 一念法界謂之仮
念界融絶謂之中 絶念了当超仏地
(書下し)
もろもろの悪をなすことなかれ。もろもろの善をなしたてまつれ。自らそのこころを浄(きよ)くせよ。これがもろもろの仏の教えなり。これは人皆知るところなり。良く久しくうんぬん。
法界一念 これを空という。
一念法界 これを仮という。
念界融絶す これを中という。
絶念しおわって まさに仏地を超ゆべし。
(意訳)
「一切の悪いことをしてはなりません。善いことをなしなさい。自らの心を清めなさい。これが諸仏の教えです。」
この七仏通戒偈は誰でも知っていることです。よくよく、ずっと行ってください等々。
この宇宙が、私の一瞬の心の中におさまる。これを「空」(物事が実体としては存在しない)と呼びます。
この私の一瞬の心は、宇宙の中のさまざまなものごとによって起こります。これを「仮」(現象)と呼びます。
心と宇宙は融けあっており、どちらだけでも存在しない、いのちとは絶妙なものであること。これを「中」と呼びます。
この心を禅定によって滅しきったところに、悟りの境地と呼ばれるものすら超えた境地があります。そこに到達しなさい。
(若き日の慨嘆)
「生死断ち難く輪転窮りなし。もし戒行専精ならずんば、いかにしてか菩提を証せん。」