- 作者: セネカ,兼利琢也
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/12/16
- メディア: 文庫
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今日、セネカの『怒りについて』を読み終わった。
とても考えさせられる、良い本だった。
セネカが言うには、怒りは何の役にも立たず、大切なのは理性と勇気とのこと。
怒らずに、叱る。
怒らずに、報復する。
怒らずに、正す。
セネカは、そうしたことを説く。
怒りは自らにも他にも害をもたらすだけで、賢者は怒らずに、理性でもってなすべきことをなすだけ。
「処罰は過去でなく未来を見据えたものでなければならない。それは怒りではなく予防である。」(180頁)
これらのメッセージには、とても感心させられた。
古代ローマ人の真骨頂だと思う。
その点、とかく日本人は、頭に血が上りやすい、未熟なものかもしれない。
これらのことは、未だに多くの日本人が全然できていないことで、欠けがちなことかもしれない。
また、同書の中には、ローマの名将ファビウスが、
「将軍にとって最も恥ずかしい弁解は「思っていなかった」だ」
と言ったというエピソードが紹介されている。(178頁)
つまり、「「想定外だった」と言うことは責任ある地位の者にとって最大の恥」いうことだろう。
責任ある地位の人間は、あらゆる想定をしておかなくてはならぬということ。
セネカは、「あらゆる事態を思い、予期しておきたまえ」と述べる。
ローマの賢人というのはそのような努力をいつもしていたのかもしれない。
それと比べて、日本の政治家・官僚・東電のお偉方は、そもそも想定外を恥という感覚はあるんだろうか。
311後、「想定外」がいかに日本に深刻な危機と被害をもたらし、またその後の責任の曖昧さやそもそも恥の感覚が長年原発行政を進めてきた人々にあるのかが疑問な状況を、セネカを読みながら、あらためて考えさせられた。
また、この文庫本には、セネカの『摂理について』と『賢者の恒心について』も収録されている。
この二篇も、これぞローマ人、と思わせる、本当に毅然とした、克己心と忍耐に満ちた、素晴らしい内容の文章だった。
特に前者は、古今の数多の書物の中でも、最も高みにある本のひとつだと思う。
多くの人にお勧めしたい、不朽の名著であり、古代ローマの賢人の精神の高みがいかなるものだったか、何よりも教えてくれる素晴らしい一冊だと思う。