「この上なきめでたさについて」(吉祥経 新訳)

自分で「吉祥経」(Maṅgala sutta)をパーリ語の原文から訳してみた。

今までの訳とは、違う解釈の方が良いと思われるところが何か所かあった。

それにしても、本当にすばらしいお経と思う。




「この上なきめでたさについて」(吉祥経 新訳)




このように私は聞きました。
ある時、世尊は舎衛城の祇園精舎で過ごしておられました。


時に、その夜、美しさで随一の神が麗しく、
祇園精舎全体をあまねく照らしながら世尊に近づき、
世尊に近づくと丁寧にあいさつし、一隅に立ちました。
一隅に立って、その神は世尊に詩句で話しかけました。


「多くの神や人が、祝福され安穏でありたいと思って「めでたきこと」とは何かを考えてきましたが、未だによくわかりません。
この上なきめでたさ(とは何か)についてお語りください。」


「愚か者には付き従わず、博学な賢い人に付き従い、
尊ぶべき人を尊ぶことは、この上なきめでたさです。


適切な場所に住み、今までに善いことをなし、
自分を正しい方向に向けることは、この上なきめでたさです。


多く学び、熟練し、自らを律し、よく稽古し、
言葉を善く用いることは、この上なきめでたさです。


母と父に敬い仕え、子や妻をよく守り、
支障なく行為することは、この上なきめでたさです。


与え、仏教を実践し、親戚をよく守り、
非の打ちどころなく行うことは、この上なきめでたさです。


悪いことを離れやめ、精神を酔わせるものの摂取を自制し、
仏教に不放逸であることは、この上なきめでたさです。


うやうやしく、しとやかで、満ち足りて、与えられているものに感謝の心を持ち、
時々仏法を聴聞することは、この上なきめでたさです。


忍耐し、善く語り、修行僧を見て、
時々仏の教えについて論じあうことは、この上なきめでたさです。


苦行し、梵行(八正道を実践)し、すばらしい真理(四聖諦)を見、
涅槃を現にさとることは、この上なきめでたさです。


世の中のさまざまなことに触れても心が揺れ動かず、
悲しむことなく、愛執を離れ、平和であることは、この上なきめでたさです。


今まで述べたことを行って、どんなところでも負けることなく、
どんなところでも安穏に歩みゆくことこそは、彼らのこの上なきめでたさです。」



"Maṅgala sutta"


Evaṃ me sutaṃ:
ekaṃ samayaṃ bhagavā sāvatthiyaṃ viharati jetavane anāthapiṇḍikassa ārāme.


Atha kho aññatarā devatā abhikkantāya rattiyā abhikkantavaṇṇā kevalakappaṃ jetavanaṃ obhāsetvā yena bhagavā tenupasaṅkami; upasaṅkamitvā bhagavantaṃ abhivādetvā ekamantaṃ aṭṭhāsi. ekamantaṃ ṭhitā kho sā devatā bhagavantaṃ gāthāya ajjhabhāsi


“Bahū devā manussā ca,
maṅgalāni acintayuṃ.
Ākaṅkhamānā sotthānaṃ,
brūhi maṅgalamuttamaṃ.”


“Asevanā ca bālānaṃ,
paṇḍitānañca sevanā.
pūjā ca pūjaneyyānaṃ,
etaṃ maṅgalamuttamaṃ.


Patirūpadesavāso ca,
pubbe ca katapuññatā;
Attasammāpaṇidhi ca,
etaṃ maṅgalamuttamaṃ.


Bāhusaccañca sippañca,
vinayo ca susikkhito;
Subhāsitā ca yā vācā,
etaṃ maṅgalamuttamaṃ.


Mātāpitu uPaccayuddesaṃ,
puttadārassa saṅgaho;
Anākulā ca kammantā,
etaṃ maṅgalamuttamaṃ.


Dānañca dhammacariyā ca,
ñātakānañca saṅgaho;
Anavajjāni kammāni,
etaṃ maṅgalamuttamaṃ.


Āratī viratī pāpā,
majjapānā ca saṃyamo;
Appamādo ca dhammesu,
etaṃ maṅgalamuttamaṃ.


Gāravo ca nivāto ca,
santuṭṭhi ca kataññutā;
lena dhammassavanaṃ,
etaṃ maṅgalamuttamaṃ'.


Khantī ca sovacassatā,
samaṇānañca dassanaṃ;
lena dhammasākacchā,
etaṃ maṅgalamuttamaṃ".


Tapo ca brahmacariyañca,
ariyasaccāna dassanaṃ;
Nibbānasacchikiriyā ca,
etaṃ maṅgalamuttamaṃ;.


Phuṭṭhassa lokadhammehi,
cittaṃ yassa na kampati;
Asokaṃ virajaṃ khemaṃ,
etaṃ maṅgalamuttamaṃ.


Etādisāni katvāna,
sabbatthamaparājitā;.
Sabbattha sotthiṃ gacchanti,
Taṃ tesaṃ maṅgalamuttamaṃ.”