「吉祥経」(私訳)

古いファイルをいろいろ整理していたら、すっかり忘れていた自分がパーリ語から訳した吉祥経の翻訳が出てきた。

そういえば、二年ぐらい前の夏に、クーラーを使わずに自分の部屋で汗をだらだら流しながら、雲井昭善のパーリ語辞書の借りてきたものと首っぴきで、集中して翻訳をしたことを思い出した。

すっかり忘れていたけど、いま読み直してみると、我ながらかなりわかりやすい訳ではないかと思う。

本当に吉祥経はすばらしいと思う。



「吉祥経」(私訳)


愚か者には付き従わず、博学な賢い人に付き従い、
尊ぶべき人を尊ぶことは、この上なきめでたさです。


適切な場所に住み、今までに善いことをなし、
自分を正しい方向に向けることは、この上なきめでたさです。


多く学び、熟練し、自らを律し、よく稽古し、
言葉を善く用いることは、この上なきめでたさです。


母と父に敬い仕え、子や妻をよく守り、
支障なく行為することは、この上なきめでたさです。


自ら進んで与え、仏教を実践し、親戚をよく守り、
非の打ちどころなく行うことは、この上なきめでたさです。


悪いことを離れやめ、精神を酔わせるものの摂取を自制し、
仏道に不放逸であることは、この上なきめでたさです。


うやうやしく、しとやかで、満ち足りて、与えられているものに感謝の心を持ち、
時々仏法を聴聞することは、この上なきめでたさです。


忍耐し、善く語り、修行僧を見て、
時々仏の教えについて論じあうことは、この上なきめでたさです。


熱心に努力し、梵行(八正道を実践)し、すばらしい真理(四聖諦)を見、
涅槃を現にさとることは、この上なきめでたさです。


世の中のさまざまなことに触れても心が揺れ動かず、
悲しむことなく、愛執を離れ、平和であることは、この上なきめでたさです。


今まで述べたことを行って、どんなところでも負けることなく、
どんなところでも安穏に歩みゆくことこそは、この上なきめでたさです。