ルパート・ブルック 「兵士」


ルパート・ブルックの「兵士」という詩を、試みに翻訳してみた。


ルパート・ブルックは、第一次大戦の戦争詩人のひとりで、戦病死している。


原文の詩では”England”となっている箇所を、本当ならばイギリスか英国と訳すべきなのだろうけれど、日本人の我々から見るといまいち感情移入を妨げるので、「わが国」と訳してみた。
ルパート・ブルックが言いたいことも、要はそういうことだと思う。


「わが国」として訳してみると、本当にこの詩は胸にくるというか、第二次大戦の日本人の、多くの兵士たちにもそのままあてはまる詩のような気がする。




ルパート・ブルック 「兵士」


もし私が死んだら、私について、
このことだけを思ってください。


異国の地のいくつかの片隅に、
ずっとわが国の土があるということを。
豊かな大地の中に、より豊かな土がそこには混じっているということを。


その土は、わが国に生まれ、わが国でかたちづくられ、わが国で心づき、
以前はわが国の花々を愛でて、わが国の道を歩き回っていました。


わが国の身体であり、わが国の空気を吸い込み、
わが国の川で身体を洗い、故郷を照らす太陽の恵みを受けていました。




そして、思ってください。
この心臓が、すべての悪から清められて、
永久(とわ)の御心の響きが確かに聞こえてきたならば、


わが国から与えられたこの思いを、どこかに戻してください。
わが国の景色や音色、わが国での日々の幸せな夢。
笑い声、友たちから学んだこと、優しい穏やかさ。
心の中の平和、わが国の空の下。




“The Soldier” (Rupert Brooke, 1914)


If I should die, think only this of me:
That there's some corner of a foreign field
That is for ever England. There shall be
In that rich earth a richer dust concealed;
A dust whom England bore, shaped, made aware,
Gave, once, her flowers to love, her ways to roam,
A body of England's, breathing English air,
Washed by the rivers, blest by suns of home.


And think, this heart, all evil shed away,
A pulse in the eternal mind, no less
Gives somewhere back the thoughts by England given;
Her sights and sounds; dreams happy as her day;
And laughter, learnt of friends; and gentleness,
In hearts at peace, under an English heaven.