オバマさんの演説 アメリカは世界の警察官ではないが、しかし行動すべきである

オバマさんの、シリアに関するこの前の演説は、化学兵器・毒ガスを断じて許さないことに的を絞った、とても優れた演説だったと思う。

日本のメディアは断片ばかり伝えているが、全部を見るべきと思う。

末尾の部分だけ、ちょっと訳してみた。


アメリカは世界の警察官ではありません。ひどい出来事はこの地球に起こるものであり、すべての誤りを正すのは私たちの手に余ることです。しかし、適切な努力とリスクを引き受ける時、私たちは子どもたちが毒ガスで殺されることを止めることができます。そして、そのことにより、私たちは自分自身の子どもたちを長い目で見た時により安全にしてあげることができます。なので、私は行動すべきであると信じています。そのことが、アメリカをすぐれたものに変えます。このことが、アメリカを一際すぐれたものに変えるのです。謙虚に、しかし決意を持って、決して重要な真理を見落とさぬようにしようではありませんか。」


America is not the world’s policeman. Terrible things happen across the globe, and it is beyond our means to right every wrong. But when, with modest effort and risk, we can stop children from being gassed to death, and thereby make our own children safer over the long run, I believe we should act. That’s what makes America different. That’s what makes us exceptional. With humility, but with resolve, let us never lose sight of that essential truth.




(追記)

全訳も少しずつ試みたい。(九月十九日訳完了)



アメリカ国民の皆さん、今夜はシリアについて皆さんに御話したいことがあります。
なぜそれが重要で、私たちはこれからどこへ行くのか、についてです。
過去二年に渡り、抑圧的なアサド体制に対する平和的な一連の抗議から始まり、残酷な内戦となったこの出来事により、十万人を超える人々がすでに殺されました。数百万人が国外に逃亡しました。
この間、アメリカは同盟国とともに人道的な援助を与えるため、また穏健な反政府勢力を助け、政治的な決着を形作るために働いてきました。
しかし、私は軍事行動を求める声には反対してきました。なぜならば、私たちは他国の内戦を軍事力を通して解決することはできないからです。特に、イラクアフガニスタンにおける戦争の十年の後において。
しかしながら、八月二十一日、アサド政権が数百人の子どもを含む、一千人以上の人々を毒ガス攻撃で死に至らしめた時に、この状況は根底から変わりました。
この虐殺から送られてくる映像は嘔吐を催すものです。大人の男女、子供たちが列をなして横たわり、毒ガスで殺されました。口から泡を吹き、息を切らして喘いでいる人々もいました。父親は死んだこどもにしがみつき、子供に起きて歩くように叫びながら呼びかけていました。このひどい夜に、世界は化学兵器の恐ろしい性質の身の毛のよだつ姿を詳細に見ました。そして、人類の圧倒的多数が化学兵器を踏みこんではならない領域と宣言してきた理由を目の当たりにしました。それは、人間に対する犯罪であり、戦争法規を侵害するものであることを。


このようなことがいつも行われてきたわけではありません。
第一次世界大戦において、ヨーロッパ戦線の塹壕の中で人を死に至らしめる毒ガスによって殺された何千という多くの人々の中に、アメリカの兵士たちもいました。
第二次世界大戦においては、ナチスが恐るべきホロコーストに毒ガスを用いました。
毒ガス兵器は、兵士と幼い子供たちの間に何の区別もつけず、大規模に殺害することができるので、文明社会は毒ガス兵器を禁止するために百年間を費やし働いてきました。
そして、1997年に、合衆国は圧倒的多数で化学兵器の使用を禁止する国際的合意に同意しました。いまや人類の98%を代表する189の政府がこの化学兵器禁止条約に加入しています。

八月二十一日、これらの基本的なルールが破られました。それとともに、私たちの人間性の共通の感覚も破られたのです。
誰もシリアにおいて化学兵器が使用されたことに異論はありません。
世界は数千の映像、携帯画像、ソーシャルメディアを通じて、この攻撃を目撃しました。そして、毒ガスの症状を持った人々で病院がすし詰めであることを、人道のために働いている諸機関の人々が物語る姿を目撃しました。
さらに、私たちはアサド体制にこの責任があることを知っています。
八月二十一日につながる日々において、私たちはアサドの化学兵器の要員が、サリンガスを調合し、その場所の近くに攻撃を準備していたことを知っています。
シリア政府軍は部隊にガスマスクを配備していました。
それから、シリア政府軍は、反政府勢力を一掃することを試みてきた11の近隣の場所に対して、政府の支配下にある地域からロケット弾を発射しました。
これらのロケット弾が落ちて間もなく、毒ガスが広がり、そして病院は瀕死の人々と負傷者でいっぱいになりました。
私たちはアサドの軍事機構における高位の人物が、この攻撃の結果を概説していることを知っています。
さらに、アサド体制がこの出来事に続く数日の間、同近隣地域への砲撃を増加させたことを知っています。
サリンの反応を検査している場所において、人々の血と毛髪のサンプルからも、私たちはすでに(サリンが使用されたことを)学んでいます。



人々を慄然とさせる写真の数々が人々の記憶から消え去るまで、世界は見て見ぬふりをするだろうことを前提として、独裁者は残虐行為を犯します。そして、それらのことが起きました。事実は否定できません。今の問題は、アメリカ合衆国と国際社会が、このことにどう対応する準備があるかということです。なぜならば、シリアの人々や子どもたちに起きたことは、国際法が侵害されたというだけではなく、私たち自身の安全が危険にさらされているということでもあるからです。

その理由を説明しましょう。もし私たちが行動し損なえば、アサド体制は化学兵器を使用することを止める理由をなんら持たないことでしょう。
化学兵器に対する禁止は蝕まれてしまい、他の国々の暴君たちが毒ガス兵器を獲得し、それらを用いることに関して、躊躇する理由をなんら持たなくなってしまうことでしょう。
時間が経てば、わが軍は、おそらく再び戦場で化学兵器による闘いの兆しに再び直面することになることでしょう。
そして、テロ組織が化学兵器を得て、それらを用いて民間人を攻撃することもたやすくなることもありえます。
もしシリアの国境を越えて戦いが広がれば、化学兵器はトルコやヨルダン、そしてイスラエルといった同盟国への脅威となることもありえます。

そして、化学兵器の使用に立ち向かうことに失敗することは、おそらく他の大量破壊兵器に対する禁止も弱めることになることでしょう。そして、アサドの同盟国であるイランを大胆にさせてしまうことになってしまうことでしょう。イランが、国際法を無視して核兵器を開発するか、より平和な道のりを歩むか、決めねばならないこの時に。



これは私たちが受け入れるべき世界ではありません。危機に瀕しているのです。
そして、このことが、注意深い討議の後に、アサド体制の化学兵器使用に対して、狙いを定めた軍事攻撃を行うことで対応することを、安全保障における合衆国の国益にかなうことだと決定した理由です。

この攻撃の目的は、アサドに化学兵器の使用をやめさせ、アサド体制の化学兵器を使用する能力を弱め、さらに私たちが化学兵器の使用を許さないことを明確にせんとすることにあります。
これが総司令官としての私の判断です。
しかし、私は、この世界で最も歴史あるデモクラシーの国制を持つ国の大統領でもあります。
たとえ私が軍事攻撃を命令する権威を持っているとしても、私たちの安全に直接的で窮迫した脅威がない場合は、議会にこのことを議論させることは正しいことだと信じています。
私は信じています。我々のデモクラシーは、大統領が議会の支持を受けて行動する時に、より強くなることを。そして、私は信じています。私たちが団結する時に、アメリカは外に対してより効果的に行動することを。

このことは、この十年の後に、特に真実となっています。この十年、大統領の手に次から次へと戦争を生み出す権力が置かれ、次から次へと我々の兵士たちの方に負担は増え、一方、私たちが力を用いる時についての極めて重要な決定から、人民の代表は蚊帳の外に置かれてきました。

イラクアフガニスタンのひどい代価を支払った後の今、いかなる軍事行動に対する考えも、それがどんなに限定されたものであろうと、人気を持たないであろうことを私は知っています。
何よりも、私は四年半の月日を戦争をやめさせ、新たな戦争を始めないために費やしてきました。
私たちの兵士たちは今やイラクの外にいます。私たちの兵士たちはアフガニスタンから家に帰って来つつあります。そして、わが国をこの国内において建てなおす仕事に、つまり、人々が仕事に戻り、子どもたちを教育し、中産階級を成長させることに専念することを、アメリカ国民が、ワシントンの我々一同、特に私に望んでいることを、私は知っています。
ですから、みなさんが難しい質問をすることは無理もないことです。なので、私に最も重要な質問のいくつかに答えさせてください。私はそれらの質問を、議会のメンバーから聞いたり、またあなたがたが私に送った手紙を読んで知っています。


まず最初に、皆さんの質問の中の多くのものである、このこと(シリアへの介入)は私たちを他の戦争にひきずりこむことにならないか?という質問について。

私たちは「まだイラクにおいて巻き込まれたことから回復中」という手紙を、ある男性は私に手紙を書いて述べました。ある古参兵はもっとぶっきらぼうにこう述べました。「この国は戦争で病み、疲れ切っている」と。

私の答えはシンプルなものです。「シリアの地をアメリカ軍に踏ませることはしない。イラクアフガニスタンのような際限のない行動を追求しない。リビアコソボのような長期に渡る空爆作戦を追求しない。化学兵器の使用をやめさせ、アサド政権の化学兵器使用の能力を弱めるという、明確な目的を達成するための攻撃をする。」と。

別の方々は、私たちがアサドをやっつける行動をとる価値がないのではないかということを尋ねていました。議会のメンバーの一部は、シリアに単に「チクリと刺す」攻撃をすることは意味がないと言っています。

物事を明確にしましょう。合衆国の軍隊は針でチクリと刺すようなことはしません。限定攻撃でさえ、他の国が言い渡すことができないメッセージをアサドに送ることになることでしょう。私は力で独裁者を除き去るべきとは思いません。私たちはすでにイラクで学びました。独裁者を除くことはその次に起こる全ての責任を私たちにとらせることになると。しかし、狙いを定めた軍事行動を起こすことは、アサドおよび他の独裁者に、化学兵器の使用を今後事前にためらわせることになるでしょう。

別の質問は、報復の危険に関することです。
私たちは脅威を消し去るのではありません。というのは、アサド体制が私たちの軍隊を深刻に脅かす能力を持っているわけではないからです。

彼らが求めるかもしれない何らかの報復の仕方は、私たちが日々に直面している脅威と同じものです。アサドも、アサドの同盟国も、過度に報復を増大させることは、自らを破滅に導くことになり、彼ら自身に何の得もありません。そして、私たちの同盟国であるイスラエルは、アメリカ合衆国の揺るぎない支援があるだけでなく、自分自身を圧倒的な力で守ることができています。

多くの皆様からは、より大きな以下の質問をいただきました。
なぜ私たちはかくも複雑なところに関わらないといけないのか?
ある方はこう私に手紙に書いています。「アサドの後に現れる者もまた人権の敵になるのではないか」と。そういうかくも複雑な場所に。

アサドに対する反政府勢力の一部が過激派であることは本当です。
しかし、毒ガスで殺されている無垢な市民たちを守るためには何の行動もしない世界を、もしシリアの人々が見るならば、アルカイダはより混沌となったシリアにおいて唯一の力となることでしょう。
シリアの人々の大半は、そして私たちが協力しているシリアの反政府勢力の大半は、ただ平和に生きたい、ただ尊厳と自由を持って生きたい、そう思っているだけです。
そして、軍事行動の後にはかえって、独裁者と過激派の両方を拒否する人々の力を強める政治的解決を達成するための努力を強めねばならないことになるでしょう。

最後に、皆様の多くが、こう質問しています。なぜ、このこと(シリアへの軍事制裁)を他の国々に任せないのか?あるいは、なぜ軍事力以外と解決を求めないのか?と。
何人かの人々が私に手紙にこう書いています。「私たちは世界の警察官であるべきではない」と。

私は同意します。そして、私は心から平和的解決を望んできました。この二年間以上、わが政府は、外交と経済制裁、警告と交渉を試みてきました。しかし、化学兵器はアサド政権によってそれでも使用されました。



しかしながら、ここ数日に渡って、私たちはいくつかの勇気づけられる兆しを見ました。
一つには、米軍の行動が確かな脅威となってきたことから、プーチン大統領と建設的な対話ができたのみならず、アサドに化学兵器を放棄させることを推し進める国際社会(の枠組)にロシア政府が進んで参加することを表明したことがあります。
アサド体制は今や科学兵器を持っていることを認め、さらに化学兵器禁止条約に参加するつもりだとまで述べました。

この申し入れが成功するかどうかは、まだ早すぎて言えません。アサド体制がこの受諾を守ることを、取り決めによって真実にしなければなりません。
しかし、この発議は、武力の行使なしに化学兵器の脅威を取り去る可能性があります。なぜなら、ロシアはアサドの最も強力な同盟国の一つだからです。




ゆえに、私は議会のリーダーたちに、この外交による道のりを求める間、武力行使を認める票決をすることを延期するように求めました。
私はジョン・ケリー国務長官を木曜日に、ロシアの外相の会談に送っていますし、プーチン大統領と私自身の討議を続ける予定です。
私は我々の最も緊密な同盟国、フランスとイギリスのリーダーたちと語り合ってきました。そして、アサドが化学兵器を放棄することを求める国連安保理の決議を進めるために、私たち(米英仏)は協力してロシア・中国と協議していくつもりです。
私たちはまた、国連調査団が、八月二十一に起こった出来事について発見したことを報告する機会を提供するつもりです。
さらに、私たちは、行動する必要に同意してくれる、ヨーロッパ、アジア、中東のアメリカに対する同盟国の支持を求め続けるつもりです。

その一方、私は、わが軍にアサドに圧力をかけ続ける現在の態勢、さらにはもし外交努力が失敗した場合即応できる位置にある現在の態勢を維持するよう、命令を下してきました。
そして今夜、わが軍とその家族の方々の、本当に有難い自己犠牲と気丈さに、再度感謝します。
アメリカ国民の皆さん、ほぼ七十年近くの間、合衆国は世界の安全保障の頼みの綱となってきました。そのことは、国際的な合意を結ぶということよりも、その国際的合意を実行すること、行動するという意味においてです。
世界の指導者であることの負担は時に重いものです。しかし、私たちがその重荷に耐えてきたから、この世界は私たちが負担から逃れるよりは良い場所となっているのです。


ゆえに、右派のわが友人たちには、大義がかくも明白に正当である時に、アメリカの軍事力を行使させないことを容認することを私は求めます。
左派のわが友人たちには、子供たちが冷たい病院の床に痛みでのた打ち回っている映像、そして今現にそうし続けていることを、あなたがたの自由に対する信念とすべての人間の尊厳に対する信念と折り合わせることを私は求めます。
数回に渡る非難の決議や取り決めだけでは不十分なのです。

実際、私は議会のすべてのメンバーに頼んできました。そして、今夜家でこの演説を視聴してくださっている皆様に頼んできました。(化学兵器による)この攻撃のビデオを見てください、と。そして、こう質問します。
もしアメリカ合衆国が毒ガスを用いて国際法を厚かましく破った独裁者を見てみぬふりをするならば、私たちはどんな世界に生きることになるだろうか?と。
フランクリン・ルーズベルトはかつてこう言いました。
「私たちが大切にしてきた理想と原則が試練に見舞われている時に、外国で起こっている戦争とよじれた問題から逃れ続けることをわが国が選んで決めたとしても、私たちが感じている深刻な不安を払拭することはできない。」
私たちの安全保障のみならず、私たちの理想と原理が、シリアで危機に瀕しています。それとともに、この最悪の兵器の使用禁止を求める、世界の指導者としての私たちの立場が、危機に瀕しています。


アメリカは世界の警察官ではありません。
ひどい出来事はこの地球に起こるものであり、すべての誤りを正すのは私たちの手に余ることです。
しかし、適切な努力とリスクを引き受ける時、私たちは子どもたちが毒ガスで殺されることを止めることができます。
そして、そのことにより、私たちは自分自身の子どもたちを長い目で見た時により安全にしてあげることができます。
なので、私は行動すべきであると信じています。
そのことが、アメリカをすぐれたものに変えます。
このことが、アメリカを一際すぐれたものに変えるのです。
謙虚に、しかし決意を持って、決して重要な真理を見落とさぬようにしようではありませんか。

ありがとう。神の祝福が皆様にありますように。そして、神がアメリカ合衆国を祝福してくださいますように。

(了)




全文(少し整理したもの)

http://d.hatena.ne.jp/elkoravolo/20130919/1379558943