真鍋 繁樹 「義なくば立たず―幕末の行財政改革者・村田清風」

義なくば立たず―幕末の行財政改革者・村田清風

義なくば立たず―幕末の行財政改革者・村田清風


村田清風の生涯を描いた歴史小説
すばらしい小説だった。
読みながら、胸が熱くなることしばしば。
ぜひ多くの人に読んで欲しい名著である。


村田清風は、江戸後期の長州藩の改革者。
当時、長州は年間収入の二十二倍の借財を抱え、財政は破綻寸前。
そのうえ、相次ぐ藩主の夭折や、天災、そして天保の大一揆と、絶体絶命だった。


その時に、藩政を担い、多大な辛苦の末に見事に財政を立て直したのが村田清風だった。


この小説では、藩政を改革するまでの村田清風の生い立ちや人間としての成長や、幾多の困難にもめげずに立ち向かう、清風の本気の取り組みを、とてもわかりやすく読みやすい筆致で綴っており、清風についてよく知らない人が読んでもきっと感動させられることと思う。


幕末の長州藩の活躍は、ひとえに村田清風がすでに立て直した強い財政と改革の成果があったればこそだった。


清風が、徹底的な倹約や無駄な歳出の削減を行うのと同時に、教育には反対意見を抑えて多大な出費もいとわぬ充実のための施策を行い明倫館を身分を問わぬ施設として拡充したことや、外国の脅威を予見して軍制改革や軍備充実に努めたことなど、その先見の明にはただただ驚嘆する。


また、今日の山口の特産品となっている品々のほとんどは、村田清風が行った殖産興業でつくられたものだそうで、積極的に産業を興し、それによって財政を立て直したところなどは、単に増税や倹約だけではない、非常にすぐれた先見の明と能力を感じる。

さらに、修補制度という、今でいう「新しい公共」のような民間の相互扶助組織を藩主導でつくっていたことなども興味深い。
特に「育嬰修補」という、今でいう子ども手当のような仕組みをつくり、当時多かった間引きや人口減を防いだというのもすごいことだ。


日本の奇跡は明治維新であり、明治維新の奇跡は長州によったとも言えるが、長州の奇跡の淵源はひとえに村田清風によったとも言えるかもしれない。


今の日本も未曾有の国難を抱え、そのうえ深刻な財政状況であり、本気本腰の改革を断行しなければどうにもならないが、その際に最も思い出されるべきこと村田清風の生涯かもしれない。


長州が瀕死のどん底から村田清風の改革によって立ち直り、日本を牽引し明治維新の奇跡を成し遂げたように、


今の日本も、もし村田清風のような改革を本気になって実行できれば。
その有無よって、日本の将来は左右されるのではなかろうか。