雲井龍雄 「述懐」(慷慨…)

もう一つ、雲井詩をタイピングしてみた。

雲井には、いくつか「述懐」と題する詩があるが、この詩も良いと思う。




雲井龍雄 「述懐」(慷慨…)


慷慨如山見死軽   慷慨 山の如く 死を見るは軽(かろ)し
男児生世貴成名   男児 世に生れて 名を成すを貴ぶ
時平空瘞英雄骨   時 平らかにして 空しく瘞(うず)む 英雄の骨
匣裡宝刀鳴有声   匣裡(こうり)の宝刀 鳴って声あり



(大意)


時勢を悲憤慷慨する気持ちは山のように大きく、義のためならば死ぬこともいとわない気持ちだ。
男ならば、この世に生れて、なにがしかこの名を轟かせることを名誉と心得るべきである。
時勢は(本当はそうではないのに)静かに収まってしまい、英雄的な奮闘をする機会もなくむなしくくすぶっている。
箱の中にしまった刀は、本当はカタカタと鳴って声をあげている。
(そのように、私も決しておとなしく飼いならされたりはせず、再び本当の義のため、この腕を振るう機会を待っているし、そのための気概は満ち満ちている。)