- 作者: 大橋昭夫
- 出版社/メーカー: 三一書房
- 発売日: 1993/06
- メディア: 単行本
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面白かった。
幕末・明治史の随所に登場しながら、いまいち詳しく知らなかった後藤象二郎の生涯をまとめた好著。
当たり前の話だけれど、後藤象二郎にも後藤象二郎の人生があったのだなあとしみじみ感じさせられた。
雲井龍雄や馬場辰猪など、後藤象二郎から煮え湯を飲まされた人物は多い。
後藤の、あまりにも愚かな、肝心の部分で周囲の期待を裏切る行為は、読んでいて今更ながら後世の私も切歯扼腕させられる気すらする。
とはいえ、幕末・明治の難局において、後藤にもさまざまな功績や栄光があり、決して悪意ではなくて一生懸命、後藤なりの夢や理想を持って生きてたんだなあと、この本を読んでて感じさせられた。
叔父の吉田東洋や盟友の坂本龍馬を暗殺で失ったり、最初の奥さんを早くに病気でなくしたり、明治に入ってからは事業に失敗して巨額の借金に苦しんだことなど、なかなか気の毒な点も多い。
とはいえ、自由党結党直後の板垣との外遊や、大同団結運動のリーダーになりながら同志たちを裏切って自分だけ伊藤博文らの誘いに乗って閣僚入りしたことや、その他もろもろの失敗失策には、なんと言ったらいいのか・・・。
決して英雄ではない、しかし英雄に限りなく近かった、豪放磊落な凡夫の、悲喜劇の生涯。
失敗の生涯。
しかしながら、その人生は、なまじな成功者にはない、深いペーソスを感じさせられる、どこかしら憎めない大物だった。
そんな感じだろうか。
幕末・明治史をより理解するためにも、良い一冊なのではないかと思われる。