菅総理献金問題について 事実関係での疑問

菅首相 拉致絡みの献金で陳謝
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2011072100614


この件に関するブログやネットの書き込みの圧倒的多数が、菅総理への批判や罵倒のようである。


たしかに、「北朝鮮に関連した団体」に献金をしていたとすれば、大きな問題である。
その場合、拉致被害者の家族の方が憤慨するのもよくわかるし、もし我が国の対北朝鮮政策がなんらかのバイアスをこうした関係によって受けていたとすれば、大問題である。


真相の解明を進めるべきと私も思う。


ただ、事実関係として、どうにも私には腑に落ちないことがある。


菅総理資金管理団体である草志会が、「政権交代をめざす市民の会」に資金を提供したとされるのは、平成19〜21年、つまり四年前から二年前だ。


一方、「市民の党」がよど号ハイジャック事件の田宮高麿の息子の森大志氏を選挙に擁立し、そのことがその団体と北朝鮮が関係しているとして問題になっているが、その森大志氏擁立は今年の四月のことである。


つまり、今年の四月の前の、二〜四年前に、どうしてよど号事件の犯人の息子を関連団体が選挙に擁立することが予見できただろうかと疑問なのである。


さらに言えば、「政権交代をめざす市民の会」は、「市民の党」から派生した団体ではあっても、あくまで別の団体である。
政権交代をめざす市民の会」は、選挙のプロの団体のようである。
そうであれば、選挙活動における協力のために献金を与えていたようにも思われる。


森氏を擁立したことにより、「市民の党」が北朝鮮系の団体であると言われている。
もし本当に「市民の党」が北朝鮮と深い関わりがあり、北朝鮮を利するために動いている団体であれば、たしかに私も問題のある団体と思う。


しかしながら、森氏は田宮高麿の息子ではあるが、あくまでただ単に息子である。
犯罪者の息子だからといって本人まで犯罪者とみなすべきでないことは、今の日本ではごく当たり前のことではないか。
たとえば、右翼と左翼を入れ替えて、三島由紀夫の親族が選挙に出たからといって、出馬させた団体まで凶悪視するのは決して私は妥当ではないと思うが、どうだろうか。
北一輝の弟の北署吉は、戦後自民党から国会議員をやっていたが、これが何か不適当なことはあっただろうか。


また、「市民の党」の代表の酒井剛氏が菅総理と三十年来の知人であるということも指摘されている。
酒井剛氏は、社民連の議員だった田英夫さんの娘婿。
同じく社民連の議員出身の菅総理が知っているのは、ごく当然に思われる。


田英夫さんは、穏健なリベラル派であり、極左革命路線とは大きな距離があった人物。
田英夫さんの父親は台湾総督の男爵・田健治郎であり、田英夫さん自身も自民党の政治家にも交友関係があった。
社民連は、むしろ極左革命の幻想から離れて、相も変らぬ革命幻想を持つ社会党左派を見限って、社会党から飛び出した人たちの政党である。
酒井氏は、若い時には極左団体に関係があったかもしれないが、むしろそうしたことから足を洗って、穏健なリベラル派として市民運動をしていたとみる方が、田氏との関係から見ても妥当ではないか。


もちろん、真相の解明は、引き続き行われるべきだろう。


その場合は、


・「政権交代をめざす市民の会」そのものが、実際に北朝鮮となんらかの関係があったのか。
・「市民の党」は、実際に北朝鮮となんらかの関係があり、北朝鮮を利するような活動を行っていたのか。
・上記のことがもしあったとして、そのことによって民主党の対北朝鮮政策がゆがめられたり、北朝鮮を利する方向に実際に変更されたことが何か存在したのか。


について、きちんと事実関係を明らかにして欲しい。


もしあれば大問題であり、即刻首相は退陣すべきである。


しかしながら、上記のことが何も事実関係としてわからない中で、今年の四月に北朝鮮関連の人物の立候補を擁立した団体、しかもその団体そのものでなく、その団体から派生した団体に、さかのぼって二年前から四年前に献金をしていたからといって、献金を受けていたわけではないのだし、そのことをもって首相を責めたてることは、現時点では私は大いに疑問である。
いったい何の法律と道徳に抵触しているのだろうか。


さらに言えば、その立候補した森氏は、自分自身がなんらかの犯罪に関わったわけでなく、あくまで父親が犯人であるというだけのことである。
教育を北朝鮮で受けてきたこと自体が問題であるというのであれば、他の拉致被害者の方々の子息で北朝鮮で育った方たちへの差別を煽ることにもなるのではないかと疑問を持たずにはいられない。