今日、夕方の四時から、菅さんの記者会見があった。
【7月31日(火)菅直人衆議院議員(前内閣総理大臣)記者会見】
http://fpaj.jp/?p=4195
記者会見の模様は、生中継でネットで配信された。
菅さんは非常に率直に、311当時の様子やその後のこと、エネルギー政策について語っていた。
また、記者たちの質問にも、率直に真摯に答えていた。
菅さんは総理在任中も、日本の首相としてはじめてネットの生中継の対談番組に登場したり、エネルギー政策をめぐって有識者との対談を生放送でネットで中継した。
首相を辞めた後も、今日こうやって、生中継の記者会見を行った。
本当にオープンで、勇気あり、自らの言葉を率直に語る政治家と思う。
これは日本の政治風土では本当に稀有なことだ。
菅さんは、まず、冒頭、
「地震が発生して以来、公邸に戻らず、仮眠だけの毎日だった。
たまに一人になれた時は、考えることは、ただひとつ、この事故がどこまで拡大するか、どこで拡大が止まり収束するのか常に頭をかけめぐっていた。」
ということを語っていた。
そして、
「最悪の場合、首都圏三千万人移住の事態も認識。紙一重でそれを避けることができた。」
ということを、率直に語っていた。
「死を賭して、命がけで、ほぼ出かけていけば、死ぬことが確実というところに、誰かに命じていってくれと、ぎりぎりの場面に、そのことが言えるか、ずっと考えていた。」
という言葉を聞いて、総理の重責は、本当に重いと、あらためて感じさせられた。
本当にあの時は日本の命運を肩に担い、余人には想像もつかない重責の中でぎりぎりの判断を常にしていたのだろう。
また、昨年の八月、菅政権で固定価格買い取り制度実現ことに言及し、これも従来からできたはずのことで、今まで経団連や電自連や東電がおさえこんできた、
この実現は、わが国の第三次産業革命とも言える、ということを述べていた。
さらに、
「再生可能エネルギーが持つキャパシティは、技術革新という意味で大きいだけでなく、地域分散型という意味で、風や太陽で、相対的に田舎と言われる地域に、投資がいく、地域分散型社会を再建していくことにつながる。」
と、エネルギーの転換が社会のありかたの転換にもつながることを述べていた。
そして、
「紙一重で首都圏三千万移住が避けられた、そのリスクを考えず、311がなかったかのように言う経団連等の人々の感覚が理解できない。
せめて、311についてどう見ているか発言した上で言うべきだ。」
ということを述べていて、全くそのとおりと思った。
さらに、脱原発基本法案を、超党派で目指し、呼びかけ、議論中であることを述べ、
「高木仁三郎さんが、チェルノブイリ後、脱原発法を目指していた。
当時、あまり関心を持たなかったのは申し訳なかった。
その法案の精神を引き継いだ脱原発基本法を、いまこそ、多くの、大江健三郎さんたちの運動とも連携して、実現を目指したい。」
「311が、新たな日本の、エネルギー政策の選択につながる、そうした道を広げて、実現をはかっていきたい。」
ということを述べていた。
とても共感させられる内容だった。
最初に上記の菅さんの話があったあと、記者からの質問があったのだが、上杉隆さんらの最初の二、三人は、三つの事故調の報告書に載っていることばかり聞いていた。
きちんと三つの事故調の報告者読んで踏まえて質問しているのか、甚だ疑問で、ろくに読まずに、悪意に満ちた質問をしようとしているだけではないかと思えた。
上杉隆さんは、311の頃、ほとんど誹謗中傷とも言える根拠のない批判を非常に感情的な口調で菅さんに対して浴びせかけ、菅降ろしの機運を助長していたが、今はそのことについてどう考えているのだろう。
どうせ、何の反省もないのだろう。
中には良質なまともな質問をする記者もいて、特に女性の記者は、東電の記録の一部が非公開であることについて菅さんに尋ねていて、良い質問だと思った。
菅さんも、
「東電と第一サイトの間の通信の記録は、飛行機事故における管制塔とコックピットの間の通信記録のようなもので、最も重要な資料。当初から全面的に公開すべきだと言ってきました。」
「(当時の映像・音声の記録の)今でも全面情報公開に反対している東電が全く理解できません。今からでも遅くないと思います。国会事故調も、こうしたところの記録の公開を求めて調査して欲しい。」
と率直に述べていて、全くそのとおりと思った。
また、今後のエネルギーのありかたについての質問には、
「ドイツは長期的に、再エネで8割を目指している。
長期的に、日本も可能。
長期的に見れば、最終的にはすべてのエネルギーを再エネで賄うことは十分可能。」
ということを答えていた。
他にも、
「原発については、自分たちの社会の選択、生き方。
どの党と手を組むかではなく、どの党であっても、国民の声とどう向き合い、国会の中でどう声を反映した法案を実現させるか、それが大事。」
ということを述べていて、全くそのとおりと思った。
また、311から一週間、二週間ほどの間の思いについて、
「どうすればいいか、首都圏三千万人移住の事態になっても、そうなった時に、逃げるわけにはいかない、逃げるなんて選択は政治にはない、この事故に関わった人にはない、見えない敵から逃げるわけにはいかない。」
ということをずっと思っていたことを述べていた。
あの時の首相が、たとえばいきなり普天間を放棄して首相を辞めた鳩山さんのような無責任な人間でなく、いかに苦しくても重責を担って耐える菅さんであって本当に良かったと思った。
民主党についてどう思うかという質問については、
「民主党政権を、脱原発の舵を切る、そのことのためにやれることをやろうと思い、いま活動している。
民主党は、長い日本の歴史の中で、はじめて野党の中から生れて第一党になって、政権交代をした政党。
二大政党の一方の柱として、継続させていくべきと思う。」
という内容のことを答えていた。
長い間、社民連やさきがけなど、小さな政党に身を置いて野党活動の長かった苦労人の菅さんだからこそ、こうした冷静な状況認識や歴史を踏まえての意見もあるのだろうと思う。
それを、まあ、岩上安身さんとかいう、日ごろ小沢支持のつぶやきばかりしている記者が、番組が終った後も、非常に偏った菅さんへの批判を、得々と延々とひとりで一方的に視聴者に向かって語っていた。
結局、何を聞いても、狂信的な小沢派というのは色眼鏡でしか菅さんのメッセージを見ないし、ゆがめた形でしか認知しないのだろう。
脱原発を首相としてはじめて明言し、浜岡原発を止め、玄海原発にストレステストを課して安易な再稼働にストップをかけ、ロードマップ作成や脱原発基本法案を首相退任後にも努力をしても、菅さんの場合は本気の脱原発ではなく、何の実績もなくても小沢さんは本気の脱原発ということになるのだろう。
ただ、まあ、岩上さんや上杉さんら、そうした客観性ゼロの三文ジャーナリストのおかげで、こうした記者会見の場も設置されて、心ある国民も菅さんの言葉を直接中継で見れるわけだから、彼等も親鸞風な表現で言えば「権化の仁」ではあるのだろう。
今日の記者会見を見ていて、あらためて菅さんが311時の首相であって良かった、
今も続投していれば大飯再稼働のありかたも全然違ったし、
もんじゅ廃炉やエネルギー政策転換、脱原発基本法もずっと速やかに実現したであろう、
ということが思われた。
菅降ろしの連中の大罪は万死に値すると、あらためて思われた。
菅さん降ろしをしてきた連中、菅さんに対して悪口雑言や中傷ばかりしてきた連中には、この記者会見を必ず見て欲しかったし、はかりしれない重責を、あの国難の時に担った人の、率直・真摯な肉声をきちんと聞いて欲しかった。
聞きもしないで誹謗は恥ずべきと思う。
菅さんが、悪口雑言に耐えて、自分の責任ではないことまで糾弾されても耐える姿は、「沈まぬ太陽」の主人公を髣髴とさせられてきたけれど、今日もあらためてそう思った。
ただ、数は少なくても、心ある人たちが、支え応援している様子が、今日もツイッターを見ていてもよくわかった。
菅さんが人間や国民を信じて率直にオープンに語りかけ、質問に答えているように、私たちも、その声に耳を傾け、なんとか脱原発基本法案、実現したいと、今日の記者会見をリアルタイムでネットで視聴して、思った。