B型肝炎の基本合意 菅総理の決断を高く評価すべき

B型肝炎 首相「心からおわび」
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/250825


B型肝炎は、その危険性がかねてより指摘されていたにもかかわらず、注射器の使いまわしを昭和63年まで集団予防接種で厚生省が放置し、消毒の励行を怠ってきたため、かくも広く蔓延してしまった。


この記事によれば、45万人もの人がそのためにB型肝炎ウイルスに感染したということである。


平成十八年六月に、最高裁判決があって、すでに


B型肝炎においては、免疫機能が不十分な乳幼児期(6歳まで)に感染しない限り慢性化しないという医学的知見を前提とし、その有力な感染原因としては、


①キャリアの母親からの分娩の際の母子感染
②集団予防接種による回し打ち
③輸血


しかないことから、①と③が否定できれば、国の責任を問うことができると判断しているそうである。


http://bkanenosaka.web.infoseek.co.jp/Bkatakanensosyoutoha.html


にもかかわらず、厚労省はその判決後も、その判決は原告の五人についてのみ述べたものであり、他の被害者については別であると述べて、なかなか被害救済に乗り出そうとしなかった。


私は今回、菅総理がきちんとB型肝炎について国の責任を認めて謝罪し、救済に乗り出したことは、高く評価されるべきと思う。

最高裁判決が出ているのに、いつまでも国の責任をきちんと認めず、被害者の救済に乗り出さないのであれば、その方がよほど不誠実であり、無責任な政治だろう。


今までの歴史を振り返れば、いくつかの国の責任によって被害者が生じた事件において、国がきちんと自らの誤りを認め、被害者の救済に乗り出すには、しばしばあまりにも遅い場合が多く、被害者がすでに多く亡くなっていたり高齢化してからのことが多い。
B型肝炎への謝罪も基本合意の成立も、決して早い解決ではなく、むしろ遅すぎるものである。
これ以上遅くなって良いものではない。
被害者当事者の立場に立つならば、明らかにそう思えるのではなかろうか。


菅総理がしっかりとこの問題に真っ向から向き合い、基本合意を決断したことは、私はこの国の正義にとって、極めて重要なことであり、高く評価されるべきだと思う。


増税については、もちろん慎重に詳しく検討されるべきだし、国民に詳しい説明も必要だとは思う。


ただ、大事なことは、何が社会にとって正義なのか、義は何であるかということだ。
言いかえれば、自分が被害者と同じ立場だったら、自分の身内が被害者だったら、どう思うかということである。


厚生省の官僚の怠慢やミスのツケを国民が払わねばならないのは、たしかに釈然としない気持ちもある。
しかし、国家というのは、ある種の責任の共有、共同体である。


官僚の怠慢やミスのつけをのちのち支払いたくないのであれば、あとで後悔しないように、常日頃から行政のありかたを国民がよく見つめ、チェックし、誤っているときは迅速に声をあげて修正していかねばならない。


それができなかった場合は、国民にも大きな負担が来るということが、今回の教訓のひとつなのだろう。


とはいえ、当時の厚生省の責任者の責任はどうなるのだろうというのはかなり疑問ではある。
政治、あるいはジャーナリズムには、その点についても明確にして欲しいし、事後法の遡及ができないのであれば、これから将来、あまりにもひどい職務上の怠慢や過失は、さかのぼって責任を追及し、一定の刑事罰や財産没収などをその責務にあった官僚に対して行えるようにした方が良いのではないかという気がする。




B型肝炎訴訟についての内閣総理大臣の談話』
(平成23年6月28日)
http://www.kantei.go.jp/jp/kan/statement/201106/28danwa.html