「文殊師利菩薩無相十礼」


文殊師利菩薩無相十礼」の書下し文をつくってみた。

国訳一切経にも書下し文がないみたいなので、大正新修大蔵経の漢文をもとに自分で訓読をつくってみた。
なので、ひょっとしたらいろいろ間違っているところもあるかもしれないが、もしそうした気付いた方がいれば訂正をお願いします。

たぶん、善導大師以後の時代の、五台山の僧侶がつくったものだと思われるけれど、なかなか良い内容と思う。




文殊師利菩薩無相十礼」



清涼山中の大聖文殊師利菩薩。
端坐して心を政看(正しく観)すれば、心はまた得べからざるなり。


至心に真如法身仏に帰命し敬礼す。


色無く形像無く、根無く住処無し。生じず滅さざるが故に。
無数の観に敬礼す。


来らずまた去らず、取らずまた捨てず。
六入を遠離する故に。


三界において出過し、等しきこと虚空の如し。
諸もろの欲に染まらざる故に。


諸の威儀の中、去り来ること及び睡り悟(さ)めることにおいて、常に三昧に在(お)る故に、去る来たるも悉く平等にして、已に平等に住す。
平等の壊れざるが故に。


諸もろの無相の定に入り、諸法の寂浄を見る。
諸もろの寂浄を離れるが故に。


諸仏は虚空の相なり。虚空にして亦た無相なり。
諸もろの因果を離れるが故に。


虚空は中と辺と無し。諸仏の身また然り。
心、虚空に同(ひと)しきが故に。


仏は常に世間に在りて、しかも勢(さかん)なる法に染まらず。
世間を分別せざるが故に。


諸法の由(ゆえん)は幻の如し、幻の如く得べからず。
諸もろの幻の法を離れるが故に、一切平等に礼す。
礼無きも不礼無きも、一礼遍ねく識を含み、同じく実相の体に帰す。

普ねく四恩・三有及び法界衆生・同如如(などなど)の為に、帰命し懺悔し至心に懺悔す。我れ三時において罪性を求むれば、内と外と中間において心は実に無し。
已に心無きが故に諸法は寂なり。
三毒四倒悉く皆如(し)かり。


懺悔し已って法身如来に帰命し礼し至心に勧請す。
一切諸法は本より生れざるなり。
已に無生なる故に何れのところにか滅有るや。
生じず滅せざるの性は常住なり。
唯だ願わくば諸仏は涅槃することなく、諸もろの衆生をして本性を照らさしめ、涅槃の城に自然に遊戯せしめんことを。
行者但だ能く五蘊を照らせば、我無く人無く両辺は空なり。


勧請し已って法身如来に帰命し礼し、至心に随喜す。


法は本より貪らずまた畏れず、我勿(な)く、一ならず異ならず、同(ひと)しく一を観ずれば実に生なきを証す。
縁無く等しく観ぜば隨喜を尽くす。
空を観れば有の如如の性を照らす。
唯だ願わくば、衆生の勤めて心を照らし、心の体の由って来る性は清浄にして、妄色・虚空も同(ひと)しく智は真ならんことを。


随喜し已って法身如来に帰命し礼し至心に迴向す。
一室において迷い、明かりに随って想う。
明かりを執りて想う故に我が塵の生ず。
今我が塵を照らせば塵は自性無し、無住の涅槃の城に迴向す。
五法は政智(正智)・八識の清淨淨心王に包含せらるなり。
この蔭身を迴(めぐ)らせば仏道を成ず。
四儀は一向現前の行なり。


迴向し已って法身如来に帰命し礼し至心に発願す。
諸もろの衆生をして六賊を妨(ふせ)がせ、悲と智との二つに現前の行を照さしめ、断えず無量を常に離れず、空に非ず有に非ず惶(おそ)れは行じ了らせ、四智三身は彼の体に縁(よ)り、五眼は常に浪を照らし、三明・三衆の意は障礙無きを生ぜしめ、菩提樹下に群萠を度させんことを。
発願し已って法身如来に帰命し礼し、一切に恭敬す。
仏の徳と菩提に帰す。
道心恒に退かず。
願わくば共に諸もろの衆生、同じく真如の体に入り、法薩般若に帰し、大総持門を得んことを。
願わくば共に諸もろの衆生、同じく真如の海に入り、僧に帰し諍論を息(や)め、同じく和合海に入らんことを。
願わばく諸もろの衆生等、悉く菩提心を発し、三業恒に清浄にして、衆と法身仏に和南せんことを。


諸もろの衆等、聴説せよ、寅朝清淨の偈を。
寂滅の楽を欲求(よくぐ)し、まさに沙門の法を学ぶべし。衣食の身命の精麁は衆等に随え。
諸もろの衆等、今日寅朝、清淨に上・中・下の坐、各おの六念を記せ。
諸もろの衆等、午時は無常偈を聴説せよ。
人、生けるとき精進ならざれば、たとえば樹(うえき)の根なきがごとし。
葉や花の日の終りに至れば、能く新たなる時を得已んぬ。
花もまた久(とこしなえ)に鮮やかならず。
色もまた常に好ましきにあらず。
人の命も刹那の如し。
須臾にして報(こた)ふること難かるべし。
今諸もろの衆等に勧む。
無上道に懃修せよ。
諸もろの衆等、黄昏に無常偈を聴説せよ。
この日すでに過ぎぬ、いのち即ち減ずるに随い少なきが如し。






文殊師利菩薩無相十礼」(原文)

清涼山中大聖文殊師利菩薩。端坐政看心。心亦不可得。至心歸命敬禮。眞如法身佛。無色無形像。無根無住處。不生不滅故。敬禮無數觀。不來亦不去。不取亦不捨。遠離六入故。出過於三界。等如虚空。諸慾不染故。於諸威儀中。去來及睡悟。常在三昧故。去來悉平等。已住於平等。不壞平等故。入諸無相定。見諸法寂淨。離諸寂淨故。諸佛虚空相。虚空亦無相。離諸因果故。虚空無中邊。諸佛身亦然。心同虚空故。佛常在世間。而不染勢法。不分別世間故。諸法由如幻。如幻不可得。離諸幻法故。一切平等禮。無禮無不禮。一禮遍含識。同歸實相體。普爲四恩三有及法界衆生同如如。歸命懺悔至心懺悔。我於三時求罪性。内外中間心實無。已無心故諸法寂。三毒四倒悉皆如。懺悔已歸命禮法身如來至心勸請。一切諸法本不生。已無生故何有滅。不生不滅性常住。唯願諸佛莫涅槃。令諸衆生照本性。自然遊戲涅槃城。行者但能照五蘊。無我無人兩邊空。勸請已歸命禮法身如來。至心隨喜。法本不貪亦不畏。勿我不一亦不異。同觀一實證無生。無縁等觀盡隨喜。觀空照有如如性。唯願衆生勤照心。心體由來性清淨。妄色虚空同智眞。隨喜已歸命禮法身如來至心迴向。迷於一室隨明想。執明想故我塵生。今照我塵無自性。迴向無住涅槃城。五法包含於政智。八識清淨淨心王。迴此蔭身成佛道。四儀一向現前行。迴向已歸命禮法身如來至心發願。令諸衆生妨六賊。悲智二照現前行。不斷不常離無量。非空非有惶了行。四智三身縁彼體。五眼常照浪三明。三衆意生無障礙。菩提樹下度群萠。發願已歸命禮法身如來一切恭敬。歸佛徳菩提。道心恒不退。願共諸衆生。同入眞如體。歸法薩般若。得大總持門。願共諸衆生。同入眞如海。歸僧息諍論。同入和合海。願諸衆生等。悉發菩提心。三業恒清淨。和南衆法身佛。諸衆等聽説寅朝清淨偈。欲求寂滅樂。當學沙門法。衣食之身命。精麁隨衆等。諸衆等今日寅朝清淨上中下坐各記六念。諸衆等聽説午時無常偈。人生不精進。□若樹無根。葉花至日終。能得已時新。花亦不久鮮。色亦非常好。人命如刹那。須臾難可報。今勸諸衆等。懃修無上道。諸衆等聽説黄昏無常偈。此日已過命。即隨減如少


現代語訳
http://d.hatena.ne.jp/elkoravolo/20111201/1322737692