金光明最勝王経 大弁才天女品第十五の二    (弁財天のお経)

『金光明最勝王経』 巻第八 (義浄訳)
弁才天女品第十五の二




その時に憍陳如婆羅門、上の讃歎及び呪讃の法を説き、弁才天女を讃じ已り、諸の大衆に告ぐ、
「仁等、もし弁才天女の哀愍加護を請いて、現世の中において、無礙の弁と聡明大智巧妙の言辞、博綜の奇才、論議の文飾を得て、意に随いて成就し、凝滯なからんと欲する者は、まさにかくの如く至誠殷重に請召して曰(とな)ふべし、
「南謨(なも(南無))仏陀也。南謨達摩也。南謨僧伽也。南謨諸菩薩衆・独覚・声聞・一切賢聖。」
「過去現在十方の諸仏、悉く皆すでに真実の語を習い、よく隨順して機に当たるの実語を説く、虚誑の語なし。すでに無量倶胝大劫において、常に実語を説き、実語ある者は悉く皆随喜せり。不妄語を以ての故に、広長舌を出だし、よく面を覆い、贍部洲及び四天下を覆い、よく一千二千三千世界を覆い、普く十方世界を覆い、円満周遍にして不可思議なり、よく一切煩悩の炎熱を除く。
敬礼し敬礼す、一切諸仏、かくの如き舌相。願わくば我某甲、皆微妙弁才を成就するを得ん。至心に帰命敬礼す。
諸仏の妙弁才、諸大菩薩の妙弁才、独覚聖者の妙弁才、四向四果の妙弁才、四聖諦語の妙弁才、正行正見の妙弁才、梵衆諸仙の妙弁才、大天烏摩の妙弁才、
塞建陀天の妙弁才、摩那斯王の妙弁才、聡明夜天の妙弁才、四大天王の妙弁才、
善住天子の妙弁才、金剛密主の妙弁才、吠率怒天の妙弁才、毘摩天女の妙弁才、
侍数天神の妙弁才、室唎天女の妙弁才、室唎末多の妙弁才、醯哩言詞の妙弁才。
諸母大母の妙弁才、訶哩底母の妙弁才、諸薬叉神の妙弁才、十方諸王の妙弁才、
所有の勝業我を資助し、無窮の妙弁才を行ぜしめよ。
欺誑無きを敬礼す、解脱者を敬礼す、離欲人を敬礼す、纏蓋を捨てたるを敬礼す。
心清浄を敬礼す、光明者を敬礼す、真実語を敬礼す、塵習無きを敬礼す。
勝義に住するを敬礼す、大衆王を敬礼す、弁才天を敬礼す、我が辞(ことば)をして無礙ならしめよ。
願わくは我が所求の事、皆悉く速やかに成就せん。病なく常に安隠に、寿命延長を得ん。
善く諸の明呪を解し、菩提の道を勤修せん。広く群生を饒益し、心に求むるの願早く遂げん。
我真実の語を説く、我無誑の語を説く。天女の妙弁才、我をして成就を得しめよ。
惟(ただ)願わくは天女来り、我語滞りなく、速やかに身口の内に入りて、聡明弁才を足らしめよ。
願わくは我が舌根をして、如来の弁を得しめよ。彼の語の威力に依りて、諸の衆生を調伏せん。
我が語を出だす時、事に随い皆成就し、聞く者恭敬を生じ、所作唐捐ならじ。
もし我弁才を求め、事成就せずば、天女の実話、皆悉く虚妄と成らん。
無間の罪を作るあるも、仏語もて調伏せしめん。及び阿羅漢、あらゆる報恩の語、舍利子と目犍連、世尊衆の第一、これら真実の語、願わくは我皆成就せん。
我今みな仏の声聞大衆を召請す。皆願わくは速やかに来至し、我が求むる心を成就し給え。
求むる所の真実語、皆願わくは虚誑なからん。上は色究竟より、及び浄居天、大梵及び梵輔、一切の梵王衆、乃至三千に遍き、索訶世界の衆、ならびに及び諸の眷属、我今皆請召す。惟(ただ)願わくは慈悲を降し、哀憐し同じく摂受せよ。
他化自在天、及び以楽変化、慈氏の成仏すべき、覩史多天の衆、夜摩の諸天衆、及び三十三天、四大王衆の天、一切の諸天衆、地水火風の神、妙高山に依りて住せるもの、七海山に住する神、あらゆる諸の眷属、
満財及び五頂、日月と諸の星辰、かくの如き諸天衆、世間をして安隠ならしめむ。
これらの諸天神は、罪業を作(な)すを楽(ねが)わず。鬼子母及び最小の愛兒を敬礼す。
諸天薬叉衆、乾闥と阿蘇羅、及び緊那羅、莫呼洛伽等、我世尊の力を以て、悉く皆請召を申(の)ぶ。願わくは慈悲心を降し、我に無礙弁を与えよ。一切人天の衆、よく他心を了ずる者、皆願わくは神力を加え、我に妙弁才を与えよ。乃至虚空を尽し、法界に周遍せる、あらゆる含生の類、我に妙弁才を与えよ。」
その時に弁才天女、この請を聞きおわりて、婆羅門に告げて曰く、
『善哉大士、もし男子女人ありて、よくかくの如きの呪及び呪讃に依り、前に説く所の受持の法式の如く、三宝に帰仰し、虔心正念ならば、求むる所の事において、皆唐捐ならじ。兼ねて復(また)この金光明微妙の経典を読誦せば、願求する所のもの、果遂せざるなく、速やかに成就することを得ん。不至心をば除く。』
時に婆羅門、深心に歓喜し合掌頂受しぬ。
その時、仏、弁才天女に告げたまわく、『善哉善哉、善女天、汝よくこの妙経王を流布し、あらゆる経を受持する者を擁護し、及びよく一切の衆生を利益し、安楽を得しめ、かくの如き法を説きて、弁才の不可思議を施与し、福を獲ること量(かぎり)無く、諸(もろもろ)の発心の者は速やかに菩提に趣かしめん。』


(以上)