これからの課題は若年層の雇用や福祉

■自殺者、13年連続で3万人超…政府白書
(読売新聞 - 06月10日 09:01)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110610-OYT1T00202.htm



13年連続で三万人超の自殺者数。


作家の五木寛之さんが、以前、「心の内戦の時代」、と毎年日清戦争をはるかに上回る人数が自殺する今の時代を形容していたけれど、本当にそうかもしれない。


一方で、このニュースの記事にはなっていないけれど、平成二十二年は前年比で千人以上自殺者数が減り、九年ぶりに自殺者数が三万二千人を下回った。
このように、政府や民間の努力が功を奏して、徐々に自殺者数が減っているという明るい傾向もきちんと見るべきだろう。

ただ、70歳以上の自殺死亡率が減少する一方で、20歳〜40歳代前半の、社会で活躍する若年〜中堅層の自殺死亡率が近年上昇する傾向にあるそうである。


参照 平成23年版 自殺対策白書 
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/whitepaper/w-2011/pdf/gaiyou/index.html


終身雇用制度が崩れて雇用の流動化が進む中、非正規雇用が増加するなど、若い世代を支えるセーフティネットが脆弱になっている可能性があることなどが背景として考えられる、とこの自殺対策白書で分析しているが、この見方は妥当だろう。


菅政権は、湯浅誠さんらを起用して、「一人ひとりを包摂する社会」特命チームを立ち上げ、自殺や社会的孤立の問題に取り組んできた。


「一人ひとりを包摂する社会」特命チーム
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/housetusyakai/index.html


こうした努力が、今回九年ぶりに三万二千人を自殺者数が下回ったことの理由の一つとして考えられるが、さらに自殺者数を減らすためには、この白書が指摘しているように、若年層の雇用や社会保障のありかたに踏み込んだ改革が求められていると思う。
菅政権は、まさにそれを今しようとしていた。


菅政権は、年金改革の方向性において、非正規雇用への厚生年金下級要件の緩和や、高額所得者への負担増と中間層への配慮の方向性を打ち出してきた。


http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyu/
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/syutyukento/dai10/siryou1.pdf


この方向性がきちんと実現すれば、上記で指摘される若年層の自殺者数増大の課題を解決し、さらに自殺者数を減らすことに効果があるだろう。


菅政権は、マスコミの大変な菅降ろしと大連立の合唱の中、急速に引きずりおろされて、もはや早期退陣が既定事実となっているが、「一人ひとりを包摂する社会」特命チームや税・年金の改革などは、これから先どうなるのだろう。


自殺者数が再び上昇傾向にならないように願うばかりである。
しかし、そのためには、国民も、実際の自殺者数の増減傾向はどうあるのか、また何がいまの課題なのか、そして政府の政策は具体的にはどうなのか、単なるネガティブ・キャンペーンやマスコミのつくりだす悲観的な雰囲気に安易に乗せられないことや、せっかくの良い芽や方向性はきちんと守っていく姿勢が大事なのではないかと思う。