事実にもとづく冷静な議論をこそ

■政治「悪くなっている」76%…政権に不満如実
(読売新聞 - 11月24日 22:21)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20111124-OYT1T01205.htm




「そう感じていること」と「事実」はかなりずれることも多い。


たとえば、日本における犯罪件数は、増えているだろうか、減っているだろうか?


本当は、犯罪件数は敗戦直後や昭和中期に比べると、かなり減ってきている。


しかし、多くの国民は、なんとなく、治安が悪くなったり、変な犯罪が増えたという実感を持っていることが多く、アンケートにはそのような結果も出ている。


要するに、マスコミの影響や、各人の主観などにより、「実感」と「事実」はかなりずれることがよくある。


日本の政治が良くなっているのか、悪くなっているのかも、かなり難しい問題と思う。


悪くなっていると感じるには、それなりの印象や根拠もあるのだろう。


ただ、物事には何事も、良い面と悪い面が必ずある。


したがって、良い面を見ることも、バランスをとるためには大事である。


試みに、民主党に政権が交代してから達成されたことをざっと見てみよう。


諫早開門の決断。
硫黄島遺骨収集。
・シベリア抑留者への補償
・社会的孤立の問題に取り組む社会的包摂のための特命チームの立ち上げ。
・インドとのEPA 締結
B型肝炎訴訟での和解
・高校授業料の無償化
母子加算(一人親世帯に対する生活保護の加算)の復活
・父子家庭に対する児童扶養手当の創設
・診療報酬の改定率引き上げ(この十年間ではじめて実現)
・公共事業費を削減し、文教費の方が公共事業費よりも上回る予算配分を実現
・無保険で病院に行けない子どもために短期保険証を発行
・求職者支援制度の創設
・地方への補助金の一括交付金


昨日は、在日米軍の軍人・軍属の権利を定めた日米地位協定の運用を見直し、公務中に重大な事件・事故を起こした米軍属について訴追可能となったことが報道されていた。


東日本大震災についても、批判は多かったが、何事もどの側面を見るかである。


たとえば、菅総理は、震災発生後、わずか四分後には危機管理センターを立ち上げて矢継ぎ早に対策を指示し、さらに極めて早い段階で十万人の自衛隊の展開を指示して人命救助に当たらせた。
その結果、被災地では、二万六千人以上の人命が救出された。
迅速な決断や自衛隊の早期の大規模投入がなければ、二万六千人という救出された人の数は、ずっと少なくなっていたかもしれない。


また、東電は、当初は福島原発の事故から撤退をしようと考えて、五回も撤退を具申したという。
しかし、菅総理が叱咤激励して、撤退させず、断固として原発事故に立ち向かい、事態の収拾に政府と東電をあげて立ち向かい続けた。
もしそれがなければ、首都圏三千万人が移住という歴史上かつてない最悪の事態も現実になっていたかもしれない。


脱原発を明確に示し、日本のエネルギー政策の転換の舵を大きく切ったこと。
浜岡原発の停止。柳田邦男さんや吉岡斉先生らを起用した原発事故調査委員会の立ち上げ。これらも、他の政権でできたか、私は非常に疑問である。


しかし、マスコミからは多くのデマが、震災の期間は流された。


菅総理の現場視察がベントの遅れをもたらした、あるいは菅総理が海水注入を停止させてそれが炉心融解を招いた、などということがまことしやかに言われたことがあったが、どちらものちに虚偽であることが判明した。


しかし、人はなんとなく、一度ネガティブな印象がそそぎこまれると、特に根拠もなくそうした印象に漠然と流されることもある。


残念ながら、今の日本においては、正当に業績を評価することよりも、あら探しと悪罵と中傷が何よりも好まれ、虚偽やデマが流布されることが多いようでもある。


何事も良い面と悪い面がある。
本当はどちらもよく見た上で、さらに良くなる方法を考える事が大事である。


もっとも、民主党にも、問題はあると思う。
鳩山政権の自爆はあまりにも痛いものだった。
また、小沢派による党内のごたごたも、国民はうんざりしている。
民主党には、二度とこのようなことがないようにして欲しい。


国民もまた、悪い面を見る場合は、必ずバランスをとって良い面も冷静に観察し、マスコミのムードに容易にはのせられないようにすることも大切と思う。


要するに、政権交代の一番の成果は、何もかも一朝一夕に良くなるなんてことはありえず、地道に解決していくしかないということを、国民も与野党も学習したということではなかろうか。
その学習成果を生かすためには、単なる「そう感じている」ではない、根拠に基づいた地道な議論が必要と思う。