原発事故調査委員会の人選は、本当に素晴らしいもので、日本の良心のような人々が選ばれた。
そしてさまざまな立場の人がきちんと選ばれている。
ただ、この原発事故調査委員会は八条委員会だから権限が弱く、権限の強い三条委員会にすべきだという批判があるようだ。
自民党などがそうしたことを言いだし、よくわからずにその意見に付和雷同している人々もいるようである。
しかし、三条委員会とは、国の行政機関そのものであり、審議会のような諮問機関ではなく、それ自体に独自に規則や告示と制定する権限が付与されており、自らの名で国家意思の決定を行い、外部に表示することができる機関のことである。
つまり、国の行政機関として設置するならばともかく、今回のような事故調査委員会を三条委員会にする必要やメリットがよくわからない。
そもそも、自民党は過去の国会答弁で、以下のような意見を述べ、八条機関を擁護している。(自民党の片山さんの発言に注目)
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○武正委員 今回の政策評価は各省にとっても注目をされておりますし、また行政改革会議の一つの目玉としてこの政策評価が打ち出され、そして一月六日の省庁再編でも各省に政策評価の担当が置かれるということで、一連の流れの中でこの委員会を政令で定めるというのを法的なもの、テクニックの問題だというようなお話でしたが、私は、やはりここに書き込んであるべきだろうと思います。
次の質問になりますが、私は、八条機関というこの委員会の性格でありますけれども、やはり三条機関あるいはもっともっと独立性を担保すべきではないかなというふうに思っておるんです。特に、これによって総務省の権限が巨大化するのではないかという危惧をする声がございます。また、この法案を読んでいきますと、では一体総務省に対して政策評価のチェックをするのはだれなのか、あるいは総務大臣に対して物を言うのはだれなんだろうといったことを考えていくと、私は同委員会は三条機関にして独立性を高めるべしというふうに考えるんですが、総務大臣、御所見をお願いいたします。
○片山国務大臣 よく三条機関と八条機関のお話があるんですが、今回の政策評価・独立行政法人評価委員会は八条機関にさせていただきました。
三条機関というのは、独立して準省的な機能を営んだり、準省的な調整をやったりするようなものが三条機関なんですね。自分で権限を持っている、行政処分ができる。だから、現在三条機関というのは、代表的なものは公正取引委員会、私どもの方の公害等調整委員会、あとは中労委や何かがそうですね、権限を持って仲裁する。それから、公安審査委員会だとか司法試験の委員会なんですね。
それで、日本の国は議院内閣制ですね。議院内閣制というのは内閣が一体となって、だから内閣の意思決定は総理じゃなくて閣議ですよね。閣議で全員一致の意思決定ですよね。議員内閣制というものは内閣が一体となって国会に対して責任を負うという仕組みでございまして、その中でこういう独立して権限がある機関というのがたくさんあることは、私は議院内閣制にはなじまないと、ちょっと今の質問と違いますけれども、かねがね考えております。アメリカは大統領制ですから、そこで千ぐらいどっとこういう三条機関的なものの設置を言ってきたんですね。だから、今日本にできています教育委員会だとか公平委員会、公安委員会、あるいは人事委員会、地方の場合には、こういうものはアメリカ的な制度なんですよ、もう今日本に定着しましたから私は結構ですけれども。
ただ、議院内閣制からいうと、三条機関がいっぱいあるのはいかがかなと。あくまでも各閣僚が一体として国会に責任を持って、しかし、内閣としては意思の一致が要るんですよ。そういうところが責任を持っていくというのがいいので、行政評価についても、やはり八条機関としてそれぞれの責任を持つ大臣に注文をつけて勧告する、こういうことの方がベターではないか、こう私は考えておりますので、ちょっと話を大きく発展させて恐縮なんですが、そういうことから今回も八条機関にさせていただいたわけであります。
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つまり、内閣が国会に責任を負う議院内閣制では、八条機関で十分に機能できるし、望ましいと述べている。
他にも、そうした事例は枚挙にいとまがない。
(紛争処理委員会について)、
「だから、形は八条ですけれども、機能としては三条的にそれはいろいろな機能を果たしてもらえればいい、私はこう思います。」
「この八条委員会における処理において、独立性は十分に担保し得るものと考えているところでございます。」
与党時代はこんなことを言いながら、急にさしたる根拠もなく八条委員会ではだめで三条委員会でなくてはならぬと自民党が言いだしているのは、どう考えてもおかしいのではないか。
きちんと八条委員会と三条委員会のメリットとデメリットを提示し、どうして八条委員会ではだめで三条委員会でなければならないのかを過去の自分たちの発言と照らし合わせながら説明できないと、ただ単に、なんでも文句をつけ、足を引っ張りたいだけと受けとめられても仕方ないのではないか。
もっと言えば、あまりにも柳田邦男さんや吉岡斉先生らの人選が素晴らしく、人選について文句をつけられないので、形式的な部分でなんらかの文句を付けようと考えたのであろうか。
一般国民は、きちんと何が本当に必要なことで、何が真実で、何が単なる不平不満か、よく刮目し、法律の条文や過去の国会での発言に照らし合わせながら、了々分明に見極めるべきだろう。
さらに言えば、自民党は原発事故調査委員会によって自分たちの長かった政権時代における原発行政のありかたや原発利権に徹底したメスが入れられることを恐れているのかもしれない。
菅政権倒閣の動きとあわせて、この事故調査委員会をなんらかの方法で葬りさりたい思惑でいっぱいのようだ。
心ある国民は、強く原発事故調査委員会を支持し、原発行政や原発利権への公正なメス入れと徹底解明を支えバックアップしていくべきと思う。