児玉さん遺稿「われらは何をなすべきか」
http://www.asahi.com/showbiz/nikkan/NIK201105210052.html
この朝日のニュース配信の記事にはなぜか題名が省かれているけれど、児玉さんの寄稿のタイトルは、
「大人のリーダーを求む」
だった。
http://www.excite.co.jp/News/magazine/MAG36/20110409/454/
たしかに、書き出しは、「この国の危機管理のお粗末さに日々唖然としている。」だが、
続く一文は、
「予測不能な自然災害は当然起り得る事だ。確かに今回は国内史上最高のマグニチュードであった。
未曾有の地震である事は分かるが、問題はその後の対応だ。
政府並びに関係各省庁の対応の至らなさは歯痒いばかりだ。
総理大臣も決死で"頑張る"とか精神論を披瀝するだけ。
丸で昔の旧軍人総理となんら変わらない幼稚さだ。
そんな事は当たり前の事で、それは当人が、そう決心して事に当る事で、具体的にどのような手段で、今、そこにあるこの国家的な危機を乗り越えるために何をするか、また出来るかが急務なのだ。
TVの現地報告で時々刻々訴えて来る窮状に対して何故即刻手を打てないのか。
灯油、ガソリン、食糧に水。
ピンポイントで一刻の猶予を許さぬ地域へヘリコプターで落下傘投下するとか、方法は幾らでもある筈だ。
世界を震撼させた原発問題も同じ。
東電のエリート集団の後手後手に廻った慌てぶりを含め、将に日本は完全に幼稚化した人間達がリーダーシップを握っている事を露呈した。
その命令下で働く人間達こそ最悪だ。
そして国民も。
智恵と想像力と決断力のある大人のリーダーを今こそ日本は求めている。」
というものだ。
児玉さんの、震災直後の様子に怒りよりも心を痛めていた様子がこの一文からはきちんと読めばうかがわれる。
そして、何よりも、
「具体的にどのような手段で、今、そこにあるこの国家的な危機を乗り越えるために何をするか、また出来るか」
を考え実行することを主張し、それができるリーダーを「大人のリーダー」として、そのようなリーダーを求めている言葉であることはこの児玉さんの文章をきちんと読めば明白である。
決して、単なる政府批判や怒りに任せた文章ではない。
深い国家国民を思う心と愛情あればこその衷心からのメッセージだと思う。
しかるに、この文章をきちんと読みもせず、マスコミがこの文章のタイトルすら載せていない片言隻句を載せた文章から菅政権を叩き、無責任な怒りを発散してそれで良しとしている人々がどうもこのニュースからの日記を見ると多いのが気にかかる。
児玉さんがこの文章を書いてから二か月近く経つ。
その間、菅首相は、決して単なる精神論ではない、独立した事故調査委の立ち上げを確約し、新エネルギー政策の推進を明言し、電力自由化の提起を行ってきた。
浜岡原発停止の決断も下した。
復興構想会議も発足し、将来の日本のための想像力を働かせ、構想とビジョンを練り打ち出してきている。
これらは、「智恵と想像力と決断力」と言えるものだ。
もし児玉さんが今も御存命であれば、菅政権についても厳しい意見を言うとともに、いたずらに菅おろしに狂奔する与党内部の不平不満派や野党のありさまについても、同様に、あるいはそれ以上に、「幼稚」だと批判し、大人のリーダーシップからは程遠いと述べられたのではなかろうか。
児玉さんの文章を、単なる菅政権に対する怒りの文章に矮小化することほど故人にとって失礼なことはないと思う。
きちんとその文章を読み、求められているのは、具体的な方策をきちんと着実に示し実行する「智恵と想像力と決断力」を備えた「大人のリーダーシップ」であることを汲み取り、単なる菅叩きではない、与野党ともにそのような態度を身に付けていくことであることを理解すべきと思う。
(追記)
文藝春秋に最近載った文章としては、児玉さんの文章とともに、同じ五月号に載った、
柳田邦男「「想定外」か?−問われる日本人の想像力」
http://www.excite.co.jp/News/magazine/MAG36/20110409/416/
がとても興味深くためになった。
柳田さんは、その文章の中で、従来の原子力行政のありかたを見直すために独立した第三者委員会を立ち上げて徹底した検証を行うべきだと主張していた。
その後、すぐに菅首相が独立性・公開性・包括性の三原則のもとでの第三者委員会として事故調査委員会を立ち上げることを明言し、実現のために努力していることは高く評価されて良いことだと思う。
また、その前の月の四月号に載った、
湯浅誠 「守るべきは政党政治だ」
http://www.excite.co.jp/News/magazine/MAG36/20110310/274/
もとても考えさせられる文章だった。
全文はここで読めるので、児玉さんの文章と合わせて、多くの人に読んでもらいたい。
http://www.ncn-t.net/kunistok/4-26-uasa-.htm