「野田政権について若干のつぶやき」

「野田政権について若干のつぶやき」


よくわからないことがある。


野田政権の政策は、今のところ、それほど菅政権と違うわけではない。


むしろ、菅政権の脱原発や中間層重視の政策がきちんと継承されるかどうか国民は目を光らせる必要がある段階だ。


しかし、野田政権は高い内閣支持率を持ち、低支持率だった菅政権と支持率の差は極めて大きい。


何によって菅政権の支持率は低く、野田政権はかくも高くなったのか。


単なるムードだろうか。


野田政権の支持率が高いこと自体は良いことだと思う。
低支持率でろくに政治的指導力が発揮できず、短命政権で終るよりは、求心力のある高支持率の政権の方が基本的には望ましい。


ただ、支持の高さがムードだけによるならば、そのような支持率は政権にとってあまりあてになるまい。
風向きによっては、簡単に支持率が変わってしまうであろうから。


国民は政策を見てきちんと判断する知性を持つべきだと思う。
逆に言えば、野田さんは菅政権の政策の良かった部分をきちんと説明し、継承する意志をはっきり示さないと、あてになるしっかりした支持がつくれるとは必ずしも言えないと思う。


今の日本の本当の課題は「産業構造の転換を進めること」と「持続可能な社会保障制度の構築」の二つだ。


菅さんと与謝野さんはそれをやろうとした。
が、あまりうまく国民に伝わらなかった。


野田さんがこれをやろうとするならば、発信力をさらに磨くことと、この敵と妥協なく闘う必要がある。


それともう一つ。
震災後の日本には「産業構造の転換を進めること」と「持続可能な社会保障制度の構築」の二つに加えて「エネルギー政策の転換」という課題がある。


「エネルギー政策の転換」は、菅政権がかなり先鞭をつけ、原発利権に一太刀入れた。
画期的なことだった。
しかし、後継者がしっかり継いでいく必要がまだまだある。


単純に言えば、以上述べた路線を目指す場合、敵は大きく二つ。
製造業大企業や原発村という既得権益と結びつく自民党や大手メディア。
そして、古い40年体制の感覚しか持たない、グローバル経済についての認識を持たない小沢派や社民党などの「無知左派」。
この二つと同時に闘わねばならぬという点で、菅政権は悲劇的だった。


しかも、菅政権は、既得権益と無知左派の二つに対して闘うための十分な理念や哲学の発信ができていなかったと思う。
既得権益はあやしげな過激なナショナリズムによって、無知左派はセンセーショナルな正義感によって、「ごっこ」で大衆を手なずけている。
それに対し、菅政権は地味で発信力が弱かった。
それでも、理性や穏健を目指す国民の最良の部分は菅政権を支持していたと思うが、本来はさらに潜在的にもっと多くいるそれらの層を掘り起こし、過激で俗悪なナショナリズムや40年体制へのノスタルジーと断固として闘うだけの、逞しいリベラリズムの勢力をもっと自覚的に構築していく発信力や理念を持つべきだったと思う。


菅政権は国民の支持率が高ければ、もう少し長く政権を維持して、求心力を発揮し、さらに今の日本にとって本当に必要な課題である「エネルギー政策の転換」「持続可能な社会保障の構築」「産業構造の転換」に取り組むことができたはずである。
菅政権が短命に終わったことは、野田政権が順調にその方向性を継承してくれるならばまた別だが、もしそうでないならば今の日本にとって致命的な悲劇となることだろう。


野田政権が今後、長期政権を目指すならば、理念や哲学の面での発信力を重視して、既得権益や無知左派と闘う言葉を持つことが大事だと思う。
だが、いまのところ、そのような布陣や努力はまだ見えてこない。野田さん自身というより、周囲にそういう意識を持った人材がいることが重要と思う。


野田政権が菅政権の重要な政策の方向性をきちんと継承するならば、菅政権を支持していた、およそ国民全体の中の二割の人々、つまりあらゆるマスコミのネガキャンに惑わされず、穏健と礼節と理性を保ち続けた国民最良の部分の人々は、野田政権をきちんと応援していくべきだろう。
しかし、もし野田政権がきちんとこれらの方針を引き継げず、あるいは引き継がず、既得権益や無知左派との妥協に走るならば、適宜具体的に根拠や理性を持って提案や是々非々の対案を行っていくことが大事だと思う。