公約は長い目で見るべきでは

民主の公約修正次々 難航必至
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110204k0000m010088000c.html


たしかに、高速道路無料化などについては、今後も本当に実現するつもりがあるのか、ないとすればどうして撤回するに至ったかについて、丁寧に説明する責任があるとは思う。

しかし、自民党谷垣禎一さんが「『国民との契約』がうまくいかないならリセットすべきだ」と言ったり、公明党の山口さんが「財源論も破綻しており、欺瞞を国民におわびすべきだ」と批判していると聴くと、ちょっと首をかしげる部分もある。

というのは、つい六、七年前、小泉自公政権の頃、小泉さんが「この程度の公約は守られなくても大したことはない」と言った時に、彼らは何を言っていたのだろう。

結果として、小泉さんは長期政権の最後にはそれなりに公約を守ったとも言える。
しかし、途中の過程では、税収の落ち込みにより必ずしも国債発行額を三十兆円以下に抑え込むことはできなかった。

今、菅民主党政権が直面しているのも、税収の激減という事態である。


この財務省の資料を見ればわかるけれど、

http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/011.htm

平成19年からの税収の激減はちょっとすごい。
特に法人税収の落ち込み方はすさまじく、もはや金額が昭和52年頃にまで戻ってしまっている。

このような税収の状況においては、たとえ自民党が政権を担当していても、政策に大きな制約が課されたことは間違いない。

民主党は政権発足からまだ一年半ぐらい、菅政権にいたっては八か月ぐらいなのだから、いま公約に違反しているとわめきたてるよりは、もう少し長い目で見ることが国民世論も野党も大事ではなかろうか。

特に、予算案について党利党略から足を引っ張ってむやみに成立を阻止しようというのはどうかと思う。
今年度予算案は、もちろんさらに無駄の削減など工夫する余地はあると思うが、文教費が公共事業費をはじめて上回るなど、それはそれでなかなかかつては考えられなかった良い部分もある。
求職者支援制度の充実なども、積極的雇用政策への第一歩として評価して良いと思う。
さまざまな特命チームに予算をつけていることも良いと思う。

http://www.kantei.go.jp/jp/yosan23/

公約は、任期の四〜五年のスパンで達成されればいいことだし、すべての公約ではなく力点を置いた重要課題が達成されれば良いことだと思う。
説明責任は大事だが、修正や状況に即した姿勢を、必ずしもそれほど責めたてて予算成立の足を引っ張ることは、政党政治の機能という点において、いかがなものだろうか。

そもそも、参院の権限がイギリスの上院と違ってかなり強く、純粋な小選挙区でもなくて比例代表により多党的状況となりやすい日本で、イギリス並みにマニフェストについて原理的執着が強要されること自体がかなりおかしいと思う。

世論も野党も、イギリスとの制度的違いや、税収の激減という状況を踏まえて、長い目で政党政治を考えることが大事ではなかろうか。