小泉純一郎 「コイズム」

コイズム

コイズム

平成七年から九年にかけて、青年漫画雑誌に掲載されたという、厚生大臣時代の小泉さんのインタビュー記事をまとめた本。

ざっくばらんにいろんな問題を明快にわかりやすく語る小泉さんは、なかなか気さくで魅力的であり、その後にあれほど多くの国民の人気を集めたというのも、確かにいくばくかわからないわけでもない気がした。

議員勤続25年の表彰を辞退したことや、厚生省の官僚がカタカナばかり使うことを禁止したこと、ジンバブエムガベの無礼な態度に怒って面会をせずに帰ったことなど、そういえばそんなこともあったかなぁとなかなか面白いエピソードが書いてあった。
住専問題を、オール無責任体制の露呈と痛烈に批判している様子も、なかなかに当時の人には痛快に感じられたのだろう。

また、この時点から「備えあれば憂いなし」を強調し、備えをしない政治家の追放の主張をすらこの時点から言っていたというのは、けっこう面白かった。
郵政民営化を突破口に、財政投融資特殊法人にメスを入れる行政改革の必要もこの本の中でも熱っぽく主張している。
そう考えると、のちの首相になってからの行動と、それ以前と、持続していた部分もあったのかもしれない。

ただし、いくつか、今読むと唖然とすることもある。

たとえば、自衛隊の海外派遣は憲法を改正しない限り進めるべきではなく、自衛隊海外派遣以外の平和主義的手段での国際貢献を模索すべきだ、

と言った発言や、

自民党内部でもいろんな意見の相違や対立があるが、それこそ民主主義の原点であり、党の公約などによって縛るべきではない、

といった発言は、

首相になったのちのイラク戦争郵政選挙での抵抗勢力排除を思うとき、いったい整合性はどうなっているのかと思わせられるものがある。
この本の中で社会党の二枚舌を痛烈に批判していたのだが…。

また、国債の増大に強い危機感を持ち、日本はカード地獄にはまったのと同じだと指摘し、税収の三分の一が国債償還に使われることを税金が金融機関や金持ちに三分の一必ず使われることと同じだ、と批判しているのだが、結局首相になってもあまり国の借金を小泉さんが減らすことができたとも思えない。

また、この本の中で、遷都を強く主張しているが、どうなったのだろう。

あれやこれやといろんなことを考えさせられる。

この本の中で、最もなるほど〜っと思ったことは、国民ひとりひとりが「理想の日本」や「望ましい政治」をはっきりと思い描き主張し、二枚舌の政治家やどうしようもない政治家を選挙で叩き落すべきで、投票に行かないのは「政治不信」ではなく「政治安心」のせいであり、本当に不信ならばしっかり調べて「コケの一念」で日本を良く変えるべきだ、という主張だろう。

その主張を実際に適用するならば、もちろん、小泉さんの首相時代の実際の改革の是非や、息子や後輩たちのあり方も、もちろん厳しく検討されるべきなのだろうけれど。