ネット上で、ある方と、TPP参加の是非でちょっと議論中。
その方の主張は、TPP参加に慎重・反対。
私は賛成。
その方の主張は、農業は食糧安全保障や治水にも役立つし、一度壊滅したらもとには戻らない。
農業はGDP全体で小さなパーセンテージしかないということが言われるが、他の産業もそれだけをとりあげれば実は小さなパーセンテージしかない。
さらに、TPPをめぐってのアメリカの本当の狙いは生命保険関連の自由化など、日本の金融が狙いであり、日本を長期不況にさらしてきた小泉政治の二の舞、さらなる失敗の上塗りになるのではないか。
とのことだった。
それに対して、以下のようなコメントを書き込んでみた。
日本の長期不況や格差社会の進展の原因をどう分析するかによって処方箋が変わってくると思うんです。
私が思うに、たしかに小泉改革も社会保障の圧縮によってその原因のひとつではあったと思います。
ただ、他にもいくつかの要因があったと思います。
私見では、
1、中国の経済発展により要素価格均等化原理が働いて、日本の企業収益が上がっても賃金は低いままの状態が続いた。
2、90年代に不良債権の処理が進まなかったために、バブルの後遺症が続いた。
3、自民党政権のもとで土建国家化が進み、貴重な予算を無駄な公共事業に重点的に配分した結果、成長分野や社会保障に十分な配分ができず、しかも野放図な財政赤字が発生した。
4、上記三つの条件が存在するところに、小泉改革が社会保障の圧縮削減を進めたために社会全体に不安感が増し、消費が委縮して貯蓄に所得が振り向けられたため、経済全体が停滞した。
という四つの条件があると思います。
そして、それぞれの処方箋および今までの達成度は、私見では、
1、産業構造の転換(製造業で中国とぶつかるのではなく中国にできない分野にシフトする)
2、一応、不良債権処理は小泉政権下でかなり進んだ。
3、一応、小泉政権と民主党政権のもとで脱公共事業化が進み、文教費が公共事業費を上回る予算が菅政権下で実現した。
4、強い社会保障の実現
ということだと思います。
つまり、1と4はこれからの課題、2と3は一応それなりに進んできたことで、さらに3は進める必要があるということだと思います。
ちなみに、かつては土建が地方の擬似社会保障的役割を担っていたので、4を進めることは3を進めることと相補的と思います。
1の課題について言えば、TPPと成長産業の育成を同時に進めることが、産業構造の転換に最もつながる道ではないかと私は思います。
イタリアのブランドが馬鹿高くても阿呆な金持ちがいっぱい買っているように、日本の米もブランドになれば高くても必ず買い手はいると思います。
また、地方の治水や景観に棚田が必要ということであれば、NPOやナショナルトラストのような組織をつくり、多少高くても優先的にそこからコメを買うような組織を自治体主導や民間主導でつくることである程度対処できるのではないかと思います。
また、棚田などはたしかに地形的理由で集約化は無理ですが、今のようにあまりにも集約化が進まない状況は、法制上の問題もあると思います。
跡継ぎもいない高齢者の零細農家ばかりであっても、どの道農業の将来はないのではないでしょうか。
安全保障ということであれば、供給先を多元化すればいいことで、アウタルキーにこだわることは戦争を前提にしないのであれば私は必要ないと思いますし、逆にアウタルキーではなく国際分業と自由貿易を進めることは国際協調や平和の促進にもつながるのではないかと思います。
言葉足らずのところも、さらに詳しく書かねばならないところもあるけれど、今のところの私の考えは、ざっと上記のようなもの。
戦後の日本の農業は、市場経済とは全く別個の論理で運営されてきた。
それができあがったのは、先の大戦中、いわゆる戦時経済体制「40年体制」であり、それ以前の日本の農業は必ずしもこのようなシステムではなかった。
消費者の利益や、他の分野の利益、国際分業の進展ということを考えれば、農業部門での制度上の改革はやはり必要なことではないだろうか。
戦時体制以来の制度的惰性を維持する必要は、いったいどれだけあるのだろう。