ニッポン経済の「ここ」が危ない!―最新版・わかりやすい経済学教室

なかなか面白かった。

特に興味深かったのは、安倍内閣が発足した頃、竹中さんが安倍さんに、国論を二分するような大きなテーマに取り組むべきで、そうすると反対する人も多いが支持する人も現われて長期政権となりうる、という意見を述べていたというエピソード。

結局、安倍さんはその意見は採用せず、そのためかどうかは別にして、短い政権で終ってしまった。

竹中さんが何を特に提起すべきだったと言っているかというと、日本版オランダ革命、つまり、非正規雇用の人にも社会保障や待遇や職業訓練を保障し、正社員との不平等をなくす、とのこと。
たしかに、もともと社会保障を重視するということを言っていた安倍さんが、「オランダの奇跡」の日本版を目指した政策を打ち出していれば、だいぶ違っていたかもなぁとこの本を読んで思った。

他にも、国民に理解してもらい施行への流れをつくる「政策マーケティング」の重要性や、今の政治は指導者民主主義である以上「旗を立てる」ことが重要だという話は、なるほどっと思った。

緩やかな衰退から日本が抜け出すために、いろんな提言がなされていることも興味深かった。
文化観光産業への戦略や、金融立国への戦略取り組みなどは、たしかにこれからとても重要なことだろう。
日本はモノづくり立国といわれるけれど、モノづくりの比率は経済全体の25%で、サービス業が75%を占めており、サービス業の中でこれから伸びるのは文化観光産業と金融というのは、そのとおりと思う。

また、グローバリゼーションに反対するのは気候変動に反対するようなもので、グローバル化・技術の変化・人口の変化という三つの変化にこれからの日本は対応していかなければならないというのも、そのとおりと思う。

ただ、グローバリゼーションにどのように対応するかには、単に競争力を高めることだけを重視していては国民の不安感を払拭することはできないのではないかと私は思う。

竹中さんが、いま現在起こっている地方の疲弊は改革の影ではなくて、グローバル化の影であると主張しているのも、一面の真理とは思うが、それだけでは今現在の国民の閉塞感や格差感は説明がつかないのではないかと思う。

たしかに、小泉・竹中改革において、不良債権処理やプライマリーバランスの回復に努力し公共事業を八兆円減らしたことは間違いではなかったと私も思うが、そのほかの点で社会保障の整備などがやはり手薄だった感は否めないと思う。
あまり竹中さんにはそうした認識はないようだった。

たぶん、竹中さんの主張しているいろんなアイディアの良い面を生かしながら、盲点になっている部分や反面の部分を補足していけたら、日本がグローバル化の中で生き残ってもいけるし、国民の不安感も払拭できる良い国家社会が構築できるのではないかと個人的には思う。

幸田真音さんの小説も、いつか読んでみたいと思った。