ドラマ「歸國」を見て

(2010年8月記す)


ドラマ「歸國」を見た。

http://www.tbs.co.jp/kikoku2010/

65年ぶりに南洋の海で死んだ日本軍兵士たちの英霊が、短時間だけ今の日本に帰国するという設定。

いろんな兵隊たちのそれぞれの背景や心境が何筋か並行して描かれていて、いくつか印象深いものがあったけれど、

私は特に、ビートたけしが演じる兵隊が、自分の甥が年老いた母(兵隊からすれば妹)をほったらかしにしている様子に憤って時空を超えて制裁を加えることと、

長淵剛演じる部隊長が、今の日本は便利と豊かさを履き違えている、「貧倖」という言葉を忘れてしまった、と述べていた言葉が印象深かった。

「貧倖」(ひんこう)とは、貧しくても心は幸せである、という意味らしい。
たしかに、本当は貧富と心の豊かさや幸せは、また別の問題なのかもしれない。
今、おそらくはスリランカブータンは貧倖な国のような気がするが、日本はそうした大事な心や智慧を忘れてしまったような気がする。

ビートたけし演じる兵隊に殺された石坂浩二が演じる甥(といってもかなりいい年の大学の先生)は、

小さい時に母と一緒に食べたラーメンが本当においしくて、母にラーメンをおごってあげることができるようになりたいと思ってがんばっているうちに、いつの間にか母のことを忘れ、疎んじてかえりみないようになってしまった、

と死んだあとに霊になって嘆き、たけしに殴られておじさんありがとうと泣いていたのに、なんだかいろいろ考えさせられた。

そんなこんなで、今日は母を連れて、この前彼女と一緒にはじめて行ってとてもおいしかった「来来亭」というラーメン屋に行ってきた。
母もおいしいと喜んでくれた。
立身出世をはたしても忙しすぎて心を忘れ失っていくよりは、多少遠回りしても貧しくても心が幸せで豊かな方が、貧倖の方が、たしかに良いのかもなぁ。