絵本 「かかし」

かかし

かかし


なぜだかわからないのだけれど、深い感銘を与える絵本だった。

しかし、それがなぜなのかは、うまく論理的には説明がつかない。

たぶん、かかしの存在が、主人公の老人の心に眠っていた優しさを引きだし、その優しさが、新しくやってきた若者を受けいれることを可能にさせた、ということなのだろうか。

かかしにも思いやりを持つことができる人の心の優しさや豊かさの尊さ、

ということよりも、

その優しさや豊かさを引き出す、かかしの存在の大きさを考えさせられる。

思うに、仏像や神社や教会というのも、こう言っては語弊があるかもしれないけれど、いわばこの「かかし」のようなものではないだろうか。

そして、それは決して、人の心の偉大さを意味することではなく、それと同時に、いやそれ以上に、「かかし」の偉大さを意味するのだと思う。

一人でいるだけでは、かかしがいなければ、この老人は、持っている心の優しさや豊かさを、忘れたままだったかもしれない。

いろんなことを考えさせられる、良い絵本だった。