Nスペ  兵士はどう戦わされてきたか

二年半ほど前、Nスペで「戦場 心の傷(1) 兵士はどう戦わされてきたか」という番組があっていた。

http://www.nhk.or.jp/special/onair/080914.html

(以下はその番組を見た時の感想)


見ていて、暗澹たる気持ちになった。

アメリカの、兵隊への訓練や、イラク戦争でのPTSDについて主に番組ではとりあげてあったのだけれど、

“Kill! Kill!”

と、ひたすら「殺せ、殺せ」と連呼させながら、銃撃や白兵戦の訓練をさせる米海兵隊の訓練の様子は、正直、正気の沙汰ではない、訓練自体が地獄の沙汰だった。

人間というのは、人を殺すのに心理的抵抗があるらしく、それを外さないと効率的に戦場で戦ってくれないそうで、戦時中にマーシャルという心理学者が研究して、人間の殺人への心理的抵抗を外すための訓練が米軍では工夫され、朝鮮戦争ベトナム戦争で飛躍的に敵兵への発砲や殺人の効率が上がったそうだ。

そのマーシャルという人は、軍から表彰されたらしいけれど、後生はどんなものだろう。

ベトナム戦争でもそうだったが、アフガンやイラク戦争でも、おびただしいPTSDの患者が出ているらしい。

番組では、アフガン・イラクの帰還兵のうち二割、三十万人がPTSDとも言っていた。

多くの若者が、戦場から帰還したあとも、アルコールやドラッグに溺れ、悪夢にうなされ、社会復帰できず、戦場の恐怖におびえて、突発的な殺人を犯したり、あるいは自殺している様子を見ると、なんとも暗澹たる気持ちになる。

多くの兵士が、戦場で民間人を殺傷したことに、強い罪悪感を覚え、救われない身を抱えているようだ。

正直、アメリカにもっと歎異抄親鸞聖人のみ教えが伝われば、あるいはこれらのPTSDの帰還兵の中にもずいぶん救われる人がいるのではないかと思った。

アメリカっていうのは、本当に罪深い国だと思う。
19、20歳ぐらいの若者を殺人鬼に仕立て上げて、戦争から帰還したあとは放置して、その若者たちの人生をダメにする。
そんな戦争を次から次へと起こす。
狂気の国だと思う。

日本に生まれてよかった。
戦後の日本に生まれてよかったと、本当に思う。
不義の戦争に加担して、殺人鬼の訓練を受けなくて済むだけで、よほどアメリカよりはマシだ。

本当は、そうした米軍に「守られている」という面もなきにしもあらずなので、本当は自立自衛を目指し、民間防衛に努力して、米軍がいなくなってこそ本当に胸を張ってそう言えるのだろうけれど。

日本も、日中戦争で、ずいぶん「戦争神経症」と当時呼ばれた、今でいうPTSDに多くの兵士が苦しんだ資料がのこっているらしい。

戦争というのは、本当に悲惨なものだと思う。
被害国の一般市民がもちろん一番哀れだが、加害者の兵士たちも魂に深い痛手を負う。

避けられない自衛のための戦争や大義のある戦争ならばともかく、不要な不義の戦争などは絶対に起こすべきではないし、そんな戦争で被害者にも加害者にも取り返しのつかない痛手を負わせた指導者なんてのは万死に値して地獄の底で呻吟すること必定の人間なのだと思う。

やっぱり、アメリカは、今のあり方はよほど考え直した方がいいのではないだろうか。
また、こんな文化や心理的な闇を抱えた国とは、日本もよほどその距離のとり方を考え直した方がいいのではないかと、あらためて感じた。